富岡製糸場:スパイシー 工女カレーも人気、世界遺産級?

毎日新聞 2014年05月23日 11時00分(最終更新 05月23日 12時44分)

富岡製糸場の女子工員らも食べたカレー=群馬県富岡市富岡の高田食堂で、角田直哉撮影
富岡製糸場の女子工員らも食べたカレー=群馬県富岡市富岡の高田食堂で、角田直哉撮影

 世界文化遺産に登録される見通しとなった富岡製糸場(群馬県富岡市)の女子工員たちが食べていたカレーが、今も近くの食堂で受け継がれている。製糸場の操業中は従業員の夜食として注文を受けることも多く、眠気が覚めるスパイシーな味付け。レトルト化した「工女さんも愛したカレー」が土産用として観光客から人気を集めるなど、世界遺産登録を前に脚光を浴びている。

 製糸場近くの狭い路地にある「高田食堂」は1953年開店。看板メニューのカレーライス(650円)やカツ丼(750円)は、87年の操業停止まで製糸場従業員に愛されてきた。

 「子どもだった頃、出前の注文が来ると父と一緒に配達に行き、工女さんたちに遊んでもらったのが印象に残っているね」。そう話すのは3代目店主の高田仁志さん(49)。富岡で「工女」と呼ばれていた女子工員たちのため、一度に50食前後を出前することもあった。工女たちは休日、映画帰りに食堂へ立ち寄ることも多かったという。日ごろ厳しい労働をしていた工女たちにとって、工場敷地外の食堂はつかの間の安息を得られる場所だった。

 60年にわたって味を守り続けてきたカレーは、創業当初のコックがスパイスの配合を独自考案し、辛口で強い粘りが特徴だ。具は豚肉とタマネギだけ。ルーは小麦粉とスパイスを混ぜ、2時間かけてじっくり炒める。

 世界遺産登録勧告後は製糸場見学者が激増し、来店客は5倍ほどに増えた。高田さんは「自分にとっては、製糸場も工女さんとのふれあいも日常のものだった。観光に来る方々は彼女たちと同じカレーを食べ、暮らしぶりに思いを巡らせてほしい」と話す。

 レトルトカレーは180グラム2食入り、750円(税込み)。製糸場のレンガと同じ大きさの箱に入れられ、製糸場内の売店や市内の観光物産館などで売られている。【角田直哉】

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