クロマグロ 陸上研究施設で初の産卵成功5月23日 16時44分
高級食材として知られる天然のクロマグロが減少するなか、クロマグロの稚魚を安定的に供給しようと、産卵技術の開発に取り組んでいる長崎市の研究施設で、陸上の研究施設としては世界で初めて、クロマグロの産卵に成功しました。
クロマグロの産卵に成功したのは、独立行政法人、水産総合研究センターの長崎市にある施設です。
クロマグロに卵を産ませるために設けられた陸上の水槽で、今月16日、初めて産卵が確認され、翌朝までにおよそ9600粒の受精卵が採取されました。
これまで海上の研究施設やクロマグロを飼育する水族館で産卵が確認されたことはありましたが、陸上の研究施設としては世界で初めてです。
この研究施設は天然のクロマグロが減少するなか、クロマグロの稚魚を安定的に供給するのに必要な産卵技術を開発しようと、国が予算を投じて去年、完成しました。クロマグロの産卵は自然環境に大きく左右され、卵の安定的な確保が難しいため、この施設では、陸上の水槽で水温や日照時間を制御して産卵に適した環境を作ることで、受精卵を安定的に確保することを目指してきました。
水産総合研究センターでは人工的に卵から育てた稚魚を平成28年度には年間10万匹、安定供給できる技術の確立を目指していて、今回の産卵の成功は第一歩となります。
“陸上”が功を奏した理由は
人工的に育てたクロマグロの稚魚を安定供給するには、稚魚の生産に欠かせない卵も安定して確保することが必要となります。
独立行政法人の水産総合研究センターでは、これまで、鹿児島県の加計呂麻島にある施設の海上の生けすでクロマグロを飼育し、卵から稚魚を育成する研究に取り組んできました。
しかし、クロマグロの産卵は、水温や日照時間などの自然環境に大きく左右されることから、採取できる卵の量は年ごとに大きく変動し、5億粒近く採れる年もあればほとんど採れない年もありました。このため、水産総合研究センターでは、去年、長崎市に陸上の研究施設を新たに完成させて、水温や日照時間を制御して産卵に適した環境を人工的に作り出すことができる陸上水槽を使って、産卵技術の開発を進めていました。
クロマグロ資源回復が大きな課題
クロマグロを巡っては、資源が減少するなかで、漁獲規制などの資源管理と水産業の振興をどう両立させるかが大きな課題となっています。
日本が最大の漁業国となっている太平洋クロマグロは、資源量が乱獲などで過去最低の水準近くにまで落ち込んでいるうえ、漁獲されるマグロの数のおよそ98%が親になる前の未成魚というデータもあります。
さらに近年、天然のクロマグロの未成魚を生けすで育てる養殖が拡大して、資源の減少に拍車をかける要因の一つに指摘されており、クロマグロの資源回復に向けて新たな措置を打ち出す必要に迫られています。
こうした事態を受けて、水産庁はおととし、養殖場の新たな設置や規模の拡大を認めないよう都道府県に指示したほか、ことしになって10年以内に資源量を回復させるため、来年から当面の間、0歳から3歳のクロマグロの未成魚の漁獲量を、基準となる2002年から3年間の平均に比べて、半分に削減することを決めています。こうしたなか、天然の資源に頼らず人工的に産卵・ふ化させてクロマグロを育てる技術の確立が急がれています。
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