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蝉しぐれ ( 藤沢周平 )

藤沢周平著「蝉しぐれ」を読んだ。
友情と純愛と政争と剣の道、幾本もの物語が交差する長編小説。

蝉しぐれ (文春文庫)
蝉しぐれ (文春文庫)
著者:藤沢 周平
出版社:文芸春秋
出版日:1991-07
おすすめ度:
Amazon.co.jp で詳細を見る

お気に入り度:★★★★★

本書を読む前に、映画版[蝉しぐれ]を観ていたこともあり、読み始めはその映像が頭に浮かんできて、読み易くもあり、邪魔でもあったが、すぐに小説の世界へ入り込んでいくことができた。

物語は一つ一つ丁寧に書き連ねており、文四郎に寄り添いながら話が進んでいくようで、文四郎の悔い、憤り、喜びなどが手に取るように伝わってくる。

映画を見て、原作も友情と純愛の物語だけかと思っていたが、果たしてそうではなかった。
友情と純愛の物語にもう二本、文四郎の剣士としての物語と深い政争の陰謀が、平行したり交わったりし、文四郎を取り巻く世界を深いものにしている。
映画でも政争は絡んでくるが、『友情と純愛の物語』を引き出すためのサブストーリー的なものなので、物語に引き込まれるほどのものではないように思える。

映画版[蝉しぐれ]の感想では、おふくへの思いが足りないと書いた。
しかし、原作ではしっかり描かれており、十分に感情移入させるものだった。
『おふくに藩主の手がついた』と聞いた文四郎が、手の届かないところへ行ってしまったおふくへの思いに気づき、悔恨する場面は哀惜を誘う。
また、おふくが文四郎の長屋へ一人でやってきた場面、その理由が分かる場面では、おふくの苦しくせっぱ詰まった思いが切なく伝わってくる。

しかしこれだけで終わらないのが、原作のいいところ。
文四郎自身の境遇も含め、長屋で起こった事件などで私欲のために下のものを省みない家老たちへの憤りが、一波乱ありそうなことを予感させ、
於福への思いや不遇に対する気持を沈めるために打ち込んだ剣の世界によって、剣士として力をつけていく文四郎の成長と剣闘が、物語に張りつめた空気感を持たせている。

原作を読んでしまうと、映画版が原作の一分しか再現できていないように思え、先に映画版を見ていて良かったと感じた。
映画版[蝉しぐれ]を観た人は、ぜひ原作の「蝉しぐれ」を読んでみてほしい。
ちなみにラストシーンは、原作より映画の方が好み。
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