東京電力福島第1原発を訪問した主人公が鼻血を出すなどの描写が、議論を呼んだ人気漫画「美味(おい)しんぼ・福島の真実編」(小学館「週刊ビッグコミックスピリッツ」連載)が19日発売号で完結した。福島県をはじめとする自治体や閣僚から批判が相次ぐなど、大きな波紋を広げた今回の問題。その背景と漫画表現のあり方に関して、専門家の見解を聞いた。(戸谷真美)
同作は4月28日発売号で、原発を見学した主人公が鼻血や疲労感を訴え、「福島では同じ症状の人が大勢いますよ」と井戸川克隆前福島県双葉町長が語る場面を描いた。続く5月12日発売号では、鼻血などの原因を「被ばくしたから」とする同氏の言葉や、福島大准教授の「福島を広域に除染して人が住めるようにするなんて、できない」という言葉が掲載された。
これに対し、「風評被害を助長する」として同町や福島県が抗議文を公表したほか、石原伸晃環境相をはじめ閣僚が次々に批判。一方で井戸川氏も会見を開き、ネットで自身の鼻血を写した写真を公表するなどして反論した。
今回の騒動について、『風評被害』などの著書があり、福島県の現地調査も行う関谷直也・東京大大学院情報学環総合防災情報研究センター特任准教授は「誤解を招く表現はあるが、騒ぎすぎという印象だ。報道なら相反する意見のバランスを取る必要があるが『美味しんぼ』は漫画。極端な表現も技法であり、許されないわけではない」と指摘する。
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