福島をどう描くか:第2回 漫画「そばもん」 山本おさむさん

2014年05月23日

山本おさむ「そばもん」(小学館)
山本おさむ「そばもん」(小学館)

 漫画家はどう福島を描いたか。第2回は山本おさむさん(60)のインタビューをお届けする。

 山本さんは妻の両親の実家があった縁で福島県天栄村に約10年前に家を買い、職場のさいたま市との往復生活を始めたが、3年前の東日本大震災と東京電力福島第1原発事故で、天栄村に住んでいた家族を埼玉県内に避難させた。自主避難生活を約2年間続け、現在は往復生活を再開している。この間の揺れ動く気持ちや自宅の除染、天栄村の米農家の様子などを「今日もいい天気 原発事故編」(双葉社)にまとめた。

 その後も福島県の食について継続的に取材を重ね、「ビッグコミック」(小学館)で連載中の「そばもん」では福島県産食材と放射性物質の問題を正面から取り上げ、話題となっている。山本さんは「福島県や福島産が危険か危険じゃないかといった議論は数値、データをベースにすべきだ」と話す。なぜ、福島での生活を再開したのか。福島と食を巡る問題などを山本さんに聞いた。【石戸諭/デジタル報道センター】

◇「原発事故後、気持ちは常に揺れ動いていました」

 −−「今日もいい天気」では揺れ動く気持ちをリアルに描いていますね。

山本おさむ「今日もいい天気 原発事故編」(双葉社)
山本おさむ「今日もいい天気 原発事故編」(双葉社)

 ◆震災前から「しんぶん赤旗」(「今日もいい天気」を連載)から何か描かないかと打診があったので、「いい天気」の続編にするか、それともまったく別の作品を描くかを考えていた時、東日本大震災と原発事故がありました。2011年5月には天栄村の生活をあきらめ、家族と自主避難を決めました。その後、僕の方から原発のことも含めた「いい天気」の続編をやりたいと提案しました。当時は原発を描くのは自粛ムードがありましたが、自分が当事者になった以上、記録として残しておきたかった。先方からOKが出たので、11年9月には原稿を描き始めていました。

 −−視点としては記録がメインだったのですね。

 ◆そうです。現在進行形の話になるので、通常のストーリー漫画と違って構成を決めて、ラストをどうするということは決められません。いわば行き当たりばったりで展開していく。まずは自分の自主避難の体験を描きましたが、それだけでは一面的になります。連載では福島に残った人の話、強制的に避難させられた人たちの話にも触れようと決めていました。しかし、自分のことは材料がありますが、残った人や強制避難の人たちをどう取り上げるかは着手した時点では決まっていなかったのです。

 −−慌てふためく様子や気持ちの揺れも率直に記されています。

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