Updated: Tokyo  2014/05/23 13:11  |  New York  2014/05/23 00:11  |  London  2014/05/23 05:11
 

【コラム】ヘッジファンドはあなたを金持ちにしない-スミス

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  5月22日(ブルームバーグ):インスティチューショナル・インベスター・アルファ誌(IIA)が最近発表したヘッジファンド業界調査結果を見て誰もが、ヘッジファンド運用者らがなぜあれほど巨額の収入を得られるのか不思議に思った。学者もジャーナリストも、手数料支払い後のへッジファンド投資リターンが市場平均並み以上ではないことをかねてから指摘している。不思議なのは、なぜ年金基金やその他の投資家がそれでもヘッジファンドに資金を投じ続けるのかということだ。

そもそも、人々はなぜヘッジファンドのリターンが他の投資商品より高いと考えるのだろうか。「ヘッジファンド」という言葉からは「異例のスキルを持つ運用者」が連想される傾向があるようだ。昨年のスカイブリッジ・オルタナティブズ・コンファレンス(SALT)で主催者のアンソニー・スカラムッチ氏は出席者らに「投資信託はプロペラ機、ヘッジファンドはジェット戦闘機だ」と語った。もちろん、われわれは皆、ジョン・ポールソン氏、ケン・グリフィン氏、クリフ・アスネス氏といった世界に冠たる億万長者運用者の名前を知っている。

しかし、ヘッジファンドを「ジェット戦闘機」にするような、全てまたは大半のファンドに共通する特徴というものがあるのだろうか。「ヘッジファンド」とは結局、どのような資産に投資でき、どの投資家を顧客にできるのかを規定する法律上の区分にすぎない。ヘッジファンドが勧誘できるのは金持ちと大手機関投資家に加え、いわゆる洗練された投資家だ。顧客が限られる代償として、ヘッジファンドは投資する資産の種類とレバレッジの度合いについてほとんど制限を受けない。

この制限免除は理論上は、ヘッジファンドに分散投資の大きな可能性が秘められていることを意味する。他のファンドが投資できないものに投資できるのだから、そのヘッジファンドを通じて投資家はより幅広い資産にアクセスできるはずだ。

自由参入

しかし、ヘッジファンド全体を特別なグループと見なす理由はそれ以外にはない。事業免許さえ得れば、運用経験など全くない人でもヘッジファンドを設立することができる。経済学では、こうした「自由参入」の業界の平均利益は競争によって限りなくゼロに近づくとされる。「ヘッジファンド」の冠がついているからという理由だけで投資家がそこに資金を投じれば、それは洗練された選択とは言えない。だから、資金がどんどん流入しても、過去何十年かのヘッジファンドの成績がさえなかった事実は驚くに当たらない。自由参入によって、市場を上回るリターンを挙げる能力がヘッジファンド業界から奪われたのだ。

この業界の初期の華々しい成績は、客寄せに用意された目玉商品のようなものだったのかもしれない。人々は最初、怖がってこの資産クラスに手を出さなかった。そこで、手数料支払い後でも素晴らしいリターンが残ると納得してもらうことが必要だった。しかし高リターンと「ジェット戦闘機」の評判がいったん定着すると、ヘッジファンドは思いのままに高い料金を課すことができ、平凡な運用者たちが山のように業界に参入してきた。こうして、業界全体の手数料後のリターンは地に落ちた。

これは、市場平均を上回る成績を残せるヘッジファンド運用者がいないということではない。毎年毎年、素晴らしい成績を挙げられるスーパースターが何人かはいるようだ。彼らの名前をわれわれは知っている。しかし残念なことに、このスーパースターたちは恐らく、われわれのお金を必要としていない。われわれが彼らに気付いたころにはもう十分な資金を集めていて、それ以上運用資産を増やせば平均並み以上の成績を維持することが難しくなる。つまり、必ず市場以上の成績を挙げてくれるヘッジファンドに投資する方法は一つだけ。まだスターではないが将来スターになるような運用者を選ぶことだ。

そこで質問だ。年金基金の管理者または富裕な個人投資家であるあなたは、まだスーパースターではないが将来そうなるファンドを選べる平均並み以上の能力が自分にあると思いますか?答えがノーなら、ヘッジファンドの平均リターンに連動する指数(例えばHFRXグローバル・ヘッジファンド指数)に投資することを考えた方がいい。そうすれば、高い手数料と報酬をヘッジファンドに支払わずに分散投資の利点を享受することができる。

原題:No Surprise That Hedge Funds Won’t Make You Rich: NoahSmith (抜粋)

記事に関する記者への問い合わせ先:Noah Smith at nquixote@gmail.com

記事についてのエディターへの問い合わせ先:James Greiff jgreiff@bloomberg.net

更新日時: 2014/05/23 07:00 JST

 
 
 
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