4月某日、ハイブリット総合書店hontoが主催する「新書サミット」のキックオフイベントとして、『面白い本』『もっと面白い本』(岩波新書)の成毛眞氏と、『武器としての決断思考』『武器としての交渉思考』(星海社新書)の瀧本哲史氏という新書の著者2人が、大学生100人に向けて特別講演を行った。モデレーターを元星海社新書編集長の柿内芳文氏が務めた。
柿内: 本日お招きしたお二人は、新書の著者ということで、新書の話を中心にお伺いできたらと思います。
成毛さんは著書のなかで、「原体験として『水滸伝』や『百科事典』を娯楽として貪り読んだ」「とにかく本は面白くあるべきだ」「読書とは道楽である」とおっしゃっています。一方、瀧本さんは、主に大学生や若いビジネスマンに向けて「教養を武器として使おう」というメッセージを発しておられます。まずは、読書に対するお2人のスタンスから、自己紹介も兼ねてお聞かせください。
1ページをめくるときさえ面白ければ読書は成立する
成毛: 今の僕の肩書きから申しあげておきますと、書評サイトHONZの代表を務めております。HONZも100万PVを超え始めましたから、ノンフィクションに限って言えば日本最大の書評サイトだと思います。その前は、インスパイアというベンチャーキャピタルをやっていて、さらにその前はマイクロソフトの社長を10年やっていました。10年刻みくらいで仕事が業種ごと変わっていて、今は本を扱っているというところです。
僕は、子供の頃から「読書は趣味です」と言っています。「趣味」とはどういうことかというと、野球観戦や音楽鑑賞と同じレベルだということです。音楽を聴いたり映画を見たりすることと本を読むことにレベルの差はなく、読書は教養だとは思っていません。
映画を見るとき「私は教養のために映画を見ています」という人はあんまりいないでしょう? 音楽も「私は情操の涵養のために聴いています」とか、「人格を陶冶するために聴いています」なんてカルトっぽいじゃないですか(笑)。そうじゃなくて、音楽は楽しいから聴いているわけですよね。サッカーや野球のようなスポーツも、楽しいから見に行くわけで、何もそれで成功しようとか、教養を身につけようという話にはならないじゃないですか。それと同じレベルで読書も楽しんでいるということです。
だから、著書やその他のコンテンツを通じて、「読書なんてただ単に面白ければいいじゃないか。読んだことを全部忘れちゃってもいいじゃないか」と言っているんですね。
読んだあとに何にも残らなくてもいいし、「昨年はどんな本を読みましたか?」と聞かれたときに、100冊も読んだのに1冊も思い出せなくてもかまわない。その一瞬一瞬、1ページをめくるときさえ面白ければ読書は成立する。それは野球やサッカーを見ているときとまったく同じですね。その一瞬さえ楽しければいいわけで、そういう姿勢で読書をするのがいいんじゃないか、というのが僕の立場だということです。
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