Scene.4丑三つ時

 

大きく息を吸い、吐く。

肺の膨張と収縮に従って、胸が上下に動いた。

左を見れば、意識を失ったシノが居る。

いつの間にか蝋燭も底をつき、ランプの灯りは消え、外の喧騒も無い。

怠い体を動かして右手で軽く頬を抓れば、どうやら妄想が生んだ夢ではないらしい。

目に、耳に、指に、舌に、鼻に、肌に覚えている生々しい記憶も本物だ。

――――――まるで別人だったな…。

今もどこか幼く見える情人を見ながら、シカマルは思った。

鑞のように白くて、表情が変わらなくて、大人びていて、動じなくて、態度がでかい。

それが全てではないが、油女シノを表現するには十分な特徴が、この一夜で全て崩れた。

人間の身体というのは面白い物で、愛撫すると本人の意思に関わらず反応を示す。

鑞のようだと思っていた白い肌は紅潮し、鉄面皮が綿のように柔らかくなる。

性感帯に触れればビクビクと跳ね、特に噂に聞いていた前立腺は効果覿面で、

最初にイッたのはそこを擦った時だった。

トロトロと垂れる体液は、知った頃は汚いと思ったはずが、こうなると精液ならぬ聖液に思えるから不思議だ。

それに伴う粘着音も、ヌチャヌチャとした感触も、嫌悪感は一切なかった。

身体の反応もさることながら、それよりずっと興奮したのは、シノの変化だった。

普段あれ程大人びているシノが、子供のように泣いたりしがみついたり仰け反ったりと忙しなく、

どんなことにも冷静で動じないのに、僅かな所作一つで狼狽え、尊大な態度も萎縮して甘えるような仕草をする。

低い声が裏返り、つい厭がってしまう程の快感に悶えて、意味を成さない声を発するので精一杯。

唯一意味を持った言葉は、聞き慣れた自分の名前だけ。

聞き飽きているはずなのに、絶え絶えに紡がれるその名前がひどく新鮮で、もっと聞きたいと思った。

小さく開かれ呼吸を繰り返す口と上下する唇を見て、シカマルは思わずドキッとして目を逸らす。

大人達が女体になぜああも弱いのかずっと謎だったが、その謎が少し解けたような気がする。

本人にその気がなくとも、見る側によってはエロいのだ。

シカマルにとっては女体ではなくシノ限定だが、同じこと。

要はそこから脳が呼び出す記憶が、性行為に結びついてとんでもなく興奮する。

知識のない子供や、関心のなかった自分の様な人間にはわからないわけだ。

 性についての知識は持っていたが、それは漠然と教科書の中の話であって、

ナルトのおいろけの術なんて見てもエロい想像などしなかったし、例えしたとしても、興奮などしなかっただろう。

 生殖は種が繁栄するための自然の摂理。

 シノではないが、理屈っぽくそう思っていた。

 だからそういうことに対してはかなりドライだった。

しかし、一つ、大事な要素を見逃していたのだ。

 それは、人間には心があるということ。

 性欲に当てはめれば、独占欲、嫉妬心、執着心、羞恥心、征服欲、支配欲、快楽…。

 暴力と紙一重な、相手を想い、欲する心。

 簡潔に言えば、煩悩は面倒臭いということだ。

「メンドクセーな…」

 つい、口癖が零れたが、面倒臭がりも本能には敵わない。

 

愛おしいと、思う。

 

誰よりも、何よりも。

愛おしいと思う。

 

人生普通に生きたいと考えていたが、忍になって、人を好きになって、それがどれだけ難しいかを思い知った。

一筋縄ではいかない事ばかりだ。

「可愛い寝顔しやがって…」

 再び目を向ければ、しどけなく眠る姿に思わず笑みが零れる。

 愛してる…なんて臭い古ぼけた台詞だと思っていたが、どんなに頭を回転させても、

これ以上この気持ちを表現できる言葉が浮かばない。

「愛してるぜ…シノ…」

 そう囁いて、愛しい人をぎゅうっと抱き締めた。

 

 

 

 

 ふと意識を取り戻して、シノは数度瞬きを繰り返す。

 此処は何処で、自分は何をしていたのか…?

 一瞬思い出せなかったが、ぱっと甦り、見開いた目はその相手の目とばったり合った。

「…………」

「…………」

「………おはようございます」

「………おはよーございます」

 不意に出たのは御丁寧な目覚めの挨拶。

 少し掠れたシノの声に、シカマルも馬鹿丁寧に挨拶を返す。

 そんな情人に抱き竦められて、目と鼻の先にある顔を見つめながら、

シノは顔が熱くなるのを感じて慌てて目を伏せた。

 ぴったりくっついた身体から伝わる体温は本物で、抱かれた感覚はなぜかとても心地良く、安心する。

 少ししてシカマルが上体を起こして離れてしまうと、危うく引き留めそうになった。

「シノ。身体、痛いところねーか?」

 起き上がったシカマルが問うので、問題ないと首を振り、シノも身体を起こす。

 と。

 至る所の関節が軋み悲鳴を上げ、シノは息を詰めた。

「おい」

「……………何……でも、ない…」

 噛み締めるように声を絞り出し、俯いたまま首を振った。

 たった数時間の行為で、まるで老人のように身体の節々が痛むなど、言いたくはない。

 だが、痛いのはもろバレで、シカマルに頭を叩かれた。

「……多分、風呂の方が楽なはずだから、用意してくる」

 そう言って立ち上がり風呂場へ向かうシカマルの姿に目を向けながら、シノは眉間に皺を寄せる。

 

 ―――――――――――情けない…。

 

 その思いでいっぱいだった。

 結局考える余裕などなく、服を脱がせられる場面から既に何も出来なくなっていた。

 何も出来ず、されるがまま全てシカマルに任せてしまい、その上あんな……。

 行為の最中の恥態を思い出して、顔から湯気が出そうな程熱くなる。

 シカマルの手で自分のモノを扱われた事。

乳首を吸われて、有り得ない声を出した事。

シカマルの指に自分の秘部を弄られて何度も達した事。

 自分からキスを強請った事。

 シカマルに脚を全開した姿を見られた事。

 挿入されて、堪えきれずしがみついた事。

シカマルが自分の中で達した時、身体の芯から温まるように、すごく気持ちが良かった事…。

 自分がこんなに淫乱だとは思いもしなかった。

 シカマルの倍以上吐精したし、途中までは我慢したが、途中からはバカかと思う程喘ぎ声を上げた。

 涙も唾液もぼろぼろ零れて、頼りなく縋って、何度も彼の名を口にした。

 自分ばかり快楽に溺れて、シカマルを満足させられたとは到底思えない。

好きかどうかの概念的な部分ばかりに気を取られて、性交渉に対して覚悟してこなかった結果だ。

 そして身体は痛い。

情けない……。 

 

呆れられただろうか…?

後悔させただろうか…?

もういいと思われただろうか…?

それとも、嫌われただろうか…?

  

「――――――――っ――」

 そう思った途端、熱い滴がぽたぽたと手の甲と腹部に落ち、唇が震えた。

 熱い顔が、耳が更に熱くなり、涙腺がどうかしたらしく涙が溢れ出る。

「シノ。風呂入る前に水分補給………シノ?」

 冷蔵庫にあったらしいミネラルウォーターのペットボトルを手に戻ってきたシカマルは、

肩を震わせ腕で顔を拭う仕草を繰り返すシノを見て、何事かと慌てて駆け寄った。

「シノ。どうした?」

「………」

 しかし、シノはぶんぶんと頭を振るだけで何も応えない。

ポタポタと布団に染み込む水玉は明らかに涙で、腕はびしょ濡れ。

「おい、シノ」

 どうするべきか一瞬困ったシカマルだったが、他に思いつかずに、そっとシノを抱いた。

「………大丈夫」

 何が大丈夫なのかわからないが、とにかく大丈夫だと、胸元に埋まったシノに語りかける。

「大丈夫。大丈夫」

 そう唱える内に、シノの呼吸が段々おさまり、整ってきた。

「………………大丈夫か?」

「………大…丈夫……だ…」

 数度鼻をすすってから、なんとか落ち着いたのか、途切れ途切れだが返事が返る。

「………どうした……?」

 抱き竦めたままシノの頭を優しく撫で、問う。

 シノは暫し動きを止め沈黙したが、辛抱強く待っていると、ぼそりと言った。

「…………不安に…なった……。あまりの醜態に、嫌われたのではないかと…」

「しゅうたい…?」

 シカマルは、何の事だと眉を潜め、肩に手を置き体を離して項垂れるシノの頭を眺めた。

「何の事だよ…?」

問えば再び暫しの沈黙の後、「行為の最中に…」とぽつんと返る。

そこから、行為の最中の態度を、醜態と思っているらしいことがわかった。

なるほど受ける側は自分の姿をそう捉えるのかと、新たな視点に気付いたシカマルだったが、

感心してる場合ではないと思い至りもう一度シノの頭に手を置いた。

「何言ってんだよ。お前、ずっげー可愛かったぜ?」

「……………………カワイイ……?」

 シカマルの言葉に、涙目ながら訝しげな表情のシノが面を上げる。

自分とカワイイという言葉がどうも合致しないらしい。

こうなると、上手い事説明しなければシノは納得しないと経験上わかっている。

さて何て言えばいいかと巡らせた頭に、一つの言葉が浮かんだ。

こんな恥ずかしい台詞はできれば言いたくないが。

「つまり…だな」

じっと窺ってくる潤んだ瞳を見つめ返しながら、シカマルは言い難そうに少し躊躇った後、意を決して言った。

 

「…………愛おしいって思ったってことだよ」

 

 シノの眉間に刻まれていた皺が、瞬きと共に消えた。

 

 

 

Scene5.確認

 

「シカマル……おろせ」

漸く納得したらしいシノに、水を飲ませて、風呂に入ることになった。

だがシノは動ける状態ではないため、必然的にあの抱き方で連れて行くしかない。

「んだって、これが一番持ちやすいだろ」

「俺は、お前より重いんだぞ」

「身長差あっからな」

 重いから下ろせと言うシノにかまわず、シカマルはお姫様抱っこでシノを抱え上げたまま風呂場へと向かう。

「シカマル…」

「あ〜、メンドクセェ。重いってんならしっかりつかまっとけ。落ちるぞ」

 少しむっとしたように眉を寄せたシノだったが、仕方がないので言われた通りしっかりとシカマルにつかまった。

 しかし、いくら重いと言っても、いくらシカマルがパワー不足と言えど、これでも忍である。

 身長約10cm、体重約5kgの違いなど、大した事ではない。

 と言いたいところだが、正直に言えば確かに少し重い。

しかしそれはシノの所為ではなく、己の筋力不足の所為だ。

ここで重いだの言って持てない、最悪落とすなんてことになったら、それこそ醜態を晒す事になる。

それだけは避けなければと、シカマルはシノを抱える腕に力を込めた。

 

湯殿に運び入れ、浸かる前に一度湯を浴びるか否かくだらないことで問答した後、

結局シカマルが折れてシノを桶椅子に座らせた。

「べつにいいじゃねーか。そのまま入っちまえば」

「湯の中に汚れたまま入ってしまっては、くつろげないだろう」

 頑固に言い張ってシャワーの蛇口を撚るシノに、シカマルは溜め息を吐いた。

 キュッ、と蛇口の回る音の後に、シャワーの出る音が続く。

 一つしかないので、シカマルはシャワーを浴びるシノの姿を斜め後ろに立って何となしに眺めていた。

 なんとも気持ちよさそうだ。

 薄暗い橙色の電気だが、蝋燭の灯よりはずっと明るい。

 水も滴るいい男と言うべきなのか。

 僅かに湯気で曇る中目を閉じて上を向きシャワーを浴びる姿は、ひどく綺麗だ。

「シカマル」

「ん…?っ、うお?!」

 不意に振り向いたシノにはっとすれば、シャワーを顔に浴びせられる。

「っ、っ…なんだよ…!」

「わざわざ座る事もないだろう?」

 顔から首下に移った水責めに顔を拭き拭き声を上げれば、悪意の感じられない声が返される。

 どうやら、善意でやったらしい。

 漸く目の開けられる状態になってシノを見れば、平素の顔でこちらにシャワーを向けている。  

 キュッ、キュッ、と蛇口の締まる音に従って、勢いを無くした水がぼたぼたとシャワーの口から落ちて止まった。

「風呂に入ろう。肩を貸せ」

シャワーを掛けてから、ちょいちょいとシノが手招きするような仕草をする。

立ち上がれないから、お前の肩を貸せ。

シャワーを浴びて汗も体液も洗い流したためか、すっきりとした様子で、すっかり元に戻った尊大な態度。

シカマルは、もう少しあのまま可愛くしていてくれたらと思いながらも、矢張りシノはこうでなくちゃなと苦笑を浮かべた。

肩を貸して、二人は漸く湯に浸かる。

ふぅぅ…なんてオヤジ臭い溜め息が、二人揃って零れた。

「気持ち良いな」

「ああ」

 檜風呂の中で勿体ない程身を寄せ合ったまま、シカマルもシノも呟く。

 じんわりと染み入るお湯の温かさ。

 静かにゆったりとうねる水面。

 ピチョン、ピチョンとどこかで水滴が落ちる音が一定のリズムで繰り返される。

 二人は沈黙し、それらにとっぷりと身を浸した。

シノの好きな、落ち着く平穏な一時。

シカマルが居てはじめて感じる、心穏やかな時。

 

「………なあ、シノ」

 シカマルが、沈黙を破って口を開いた。

 シカマルがシノの方へ顔を向けただけで、水面の波紋が大きく揺れる。

「俺、まだお前に訊いてなかったけど」

「……?」

「俺のこと、好きなんだよな…?」

好きだから、今夜来たんだよな?と少々不安そうに尋ねるシカマルに、シノはきょとんとする。

そう言えば、すっかり忘れていた。

「………そうだな…」

「……そうだな…って…」

即答して欲しいシカマルを余所に、シノはふむと考える。

恋愛感情のようなトキメキやらドキドキやらは感じないが、トクントクンと静かに脈打つ心臓の音が耳に届く。

それが自分のものか、シカマルのものか、はたまた二人の音が同調しているのかわからないが。

 

愛おしい―――――。

 

シカマルの言葉を借りれば、そう表現すべき心持ちだ。

大切で、特別で、愛おしい。

もともとそういう思いはあったが、身体を重ねて、より深まった気がする。

それを総じて好きと言うならば、自分はシカマルが好きなのだろう。

キバの答えもあながち間違いではなかったのかもしれない。

「好きなら受ける」ということは、「受けるということは好き」と取る事もできる。

「好きの定義はよくわからないが―――」

 不安そうなシカマルを見つめながら、シノは淡々と言葉を紡ぐ。

ちょっと情けない表情のシカマルに、ふと、ある言葉が浮かんできた。

そして、ああと納得する。

なぜ自分は、今まで好きだと言い切ることができなかったのか。

それは、微妙なニュアンスの相違。

好きという言葉では表しきれない気持ちの所為だったのだ。

しかし、見つけた。

これ以上適切な表現は他に思いつかない。

 

「俺は、お前を愛しているのだと思う」

 

 シカマルの顔が、真っ赤に染まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Scene6.おまけ

 入ったばかりなのに湯に逆上せたのか、茹で蛸のように真っ赤になったシカマルに、シノは驚いた。

 しかも、鼻から赤い物が垂れてくる。

「おい、シカマル…。大丈夫か?鼻血が…」

「だ、だ、だ、大丈夫……!」

「すぐ上がった方が…」

「す、すぐあがるから…!」

 ごしごしと鼻血を拭うシカマルに、そんなに強く擦ってはダメだと言い掛けたシノだったが、

突然シカマルに真剣な眼差しを向けられて黙った。

「すぐあがっから。でも、その前にもう一つ確認させてくれ」

「な…何だ……?」

 何やら深刻そうなその表情に、シノは眉を寄せた。

 再び垂れてきた鼻血を拭ってから、シカマルは真剣そのもので尋ねる。

 

「俺と蛹、どっちの方が好き?」

 

 

 こうして、二人の初めての夜は、更けていった…。

 

 

 

 

 

 

あとがき

 シリアス路線が結局ギャグに。

どうしてもオチが外せない悲しい性…。

スミマセン……。

そして裏的要素は、自分のもてる知識と描写を出し尽くしました。

 もう、叩いても振っても引っ張っても何にも出ません。

 情事の真っ最中は、私が書くと間抜けな事になるので自粛。

 それにしても、シカシノはどうしてこうも甘々でバカップルになるのか…。

 書いていると恥ずかしくなってきます…本当…。

 

 



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