シノキバチック。15歳設定で恋愛感情はナシ。
ちょこっとエロいお話なので。大丈夫な方はスクロール。
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衝動
シノの家は、森の奥にある。
広くて静かなその場所をキバは気に入り、暇さえ有れば遊びに来ていた。
要は、うるさい母親と姉から解放されたかったのだ。
「なあ、シノ。この部屋にエロ本とかねーの?」
「………無い」
今までうつ伏せに寝転がって自身で持ち込んだスナック菓子を頬張っていたキバが、唐突に言った。
シノは読んでいた本から徐に顔を上げ、眉を寄せた。
ゲームや漫画があるかと聞かれたことはあったが、こんな質問までされるとは…
と些か不機嫌になりながら、いつものように端的に答える。
その答えに対し「なんだ、つまんねーの…」と漏らすキバに、眉間の皺の数を増やした。
「お前さ、そういうのに、興味ねーの?」
キバは体を起こしてわざわざシノの方に向き直り、胡座を組む。
「だってよ、年頃の男子が興味ねーって、おかしくね?俺らもう15だぜ?ま、お前は色々変だけどさ。
それにしたって、やっぱおかしいだろ」
キバは、シノが答える前から興味がないと決めつけて「おかしい」と繰り返す。
シノもそれに反論することなく、しばらく黙って聞いていたが、ふいに口を開いた。
「…………興味という意味でなら、無い訳ではない…」
ぼそり、と言われた台詞に、キバは一瞬固まった。
「へ…?」
「性行為に関する事は、子孫を残し血統を存続し続けるためには必要不可欠だ。
ただ、それについては雑誌等ではなく専門書で学んだ」
「せ…専門書……て。おま…」
ぽんぽんと普段と変わらない調子で語るシノに、絶句し目を丸くするキバ。
そんなキバの様子に臆することなく、シノは本を横に置いて続けた。
「驚くことではない。もともと虫を研究する上で交尾は基本中の基本だ。
生物の子孫の残し方なら、アカデミーに入る前から知っていた。無論、ヒトもだ」
アカデミーに入る前…自分はどうだったろう、とキバはビックリしている頭で考える。
おそらく、まだ赤ちゃんがどこから来るかなど考えもしていなかったと思う。
しかし、それにしても。
だんだん冷静になってきた頭が、なんだかスッキリしない。
「男女の行為も興味の対象ではある。特にヒトの場合…「ちょっと待った」
淡々とセックスに関して語るシノの言葉を、キバは遮った。
シノは口を噤み、何を考えているか分からない顔でキバを見る。
「お前……それ、なんか………違う…」
「違う…?」
スッキリしない頭を抱え言うキバに、シノは首を傾げた。
「……俺が、言いたいのはだな…そういうことじゃなくて……」
「では、どういうことだ」
あ〜う〜だからぁ〜と苦悶するキバを見かねて、シノはそっとキバに近寄り、頭に手を置いた。
「わからないならいい。あまり考えると知恵熱が出るぞ」
顔を覗き込みながら言う。嫌味のようだが、本人はいたって真面目だ。
シノの顔を間近にして、キバはなぜだか苦しくなった。
隠されているためあまり知られていないが、シノはけっこう綺麗な顔立ちをしている。
サバイバル中心の8班にいるのに陽に焼けることもなく、透き通る様な白い肌を有しているし、
時折覗く目は綺麗な琥珀色で睫毛も長い。
衝動だった。
そんなことをするつもりは、全くなかったのだが。
キバは、シノの薄い唇に口を付けていた。
「……!?」
シノは瞬きをし、あまりに突然のことで反応し忘れる。
引き剥がすべきだと気付いた時には、キバに突き飛ばされていた。
「…………っ…ち、ちが…」
気が付いた時、キバは一瞬自分が何をしているのか認識出来なかった。
それが分かった時、咄嗟に思わずシノを突き飛ばしていた。
心臓がばくばくと鳴り顔が熱くなるのに、冷や汗が流れる。
口をぱくぱくさせながら弁解を試みるも、失敗。
キバは完全に混乱状態に陥っていた。
「……キバ…」
「ぅわあああああああああっっ!!!」
困惑しながらもキバを落ち着かせるべきと思い、手を伸ばそうとしたシノに対し、
キバはあらん限りの声を張り上げて全速力で油女家から逃走した。
何処をどうやって走って家に辿り着いたのか。
分からない内にキバは部屋に戻り、ベットにダイビングして布団をかぶった。
嘘だ。ありえない。キス…。俺のファーストキスがぁぁ。
その日、キバはそんなことを心の中でひたすら叫び続けていた。
次の日。
そのまま眠ってしまったキバは、姉のハナに起こされた。
いつもなら起こされた後もしばらくうだうだしているのだが、今回は姉の
「キバー。シノくんが来てるわよー」と言う文句に飛び起きる。
「シノ!?」
「おはよう」
玄関に駆けつけると、シノが相変わらずのスタイルで立ち、呑気に朝の挨拶までした。
「おま…なん……」
「忘れ物だ」
そう言って突き出したのは、昨日キバが忘れていった上着。
「…………」
差し出された上着を手に、キバは絶句した。
昨日の今日で、忘れ物を届けに来るとは、一体どこまで神経が図太いのか。
否、というより昨日のことなんて忘れてしまったのではないか。
不必要なことはそっこー忘れる質で、自分の誕生日すら忘れていた男だ。
そうだ、そうに違いない。こいつ程の天然なら有り得る。きっと、そうだ!
キバは自分の上着を睨みつけながら都合の良い考えを巡らした。
しかしそんな淡い期待(ただし本人はかなり真面目に出した結論)はシノの次の言葉によって打ち砕かれた。
「キバ。昨日のことは気にするな。俺も気にしていない」
覚えてやがった……。
上着から顔を上げ、少々恨めしげな目とひきつった笑みをシノに向ける。
全身の感覚が麻痺した様に何も感じず、頭がぼんやりした。
呆然とするキバにそれだけ言って、シノは踵を返す。
立ち去ろうとするシノの背中にを見つめながら、キバは昨日自分が言いたかったことが何か、思い出した。
そうだ。俺が言いたかったのは…。
「お前、感じねーの?」
「?」
ぼそりと背中にかけられた声に、シノは立ち止まって振り返った。
「女とかキスとか……こう、気持ちが高ぶったりしないのかよ」
本能的な性に対する興味があるのかと。
少し、驚いている様にも見えるシノに、投げつけるように言った。
「俺とのキスだって、少しぐらい気にしろよ!馬鹿!!」
しばらくの沈黙の後、シノは徐に口を開いた。
「……………俺だって、お前に接吻をされた時は、驚いたぞ?」
「だから、そういう気持ちの高ぶりじゃねえ!!!」
どこまでも鈍いチームメイトに、キバは上着を投げつけた。
あとがき
昔書いた話。
赤丸が居ません。ごめん、赤丸…。
シノキバチックのシノ天然オチでした。
蛍の本を読んだ時、食事とか交尾とかけっこう生々しくて。
虫はその2つが主な活動だから、小さい頃から学んでいればセックスも当たり前の
行為として認識してるんじゃないかと。生物として。
そしてキバは、犬の出産に立ち会ったり、真っ当な男として性に目覚めていくのだけれど、
そこには矢っ張りドキドキ鼓動が高鳴ったり、焦れたり、そういうのがあるのが当然だと思ってる。
だから、シノが客観的に性を解釈するのが気に入らない。
でも、ファーストキスを自分からやってしまったキバは、ちょっと乙女過ぎた気が…;
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