雨上がりの告白

 

 それは、本当に些細なことだった。 

 今回の任務は、突然増殖した黄籠蛾という蛾を捕獲するというDランク任務。

その蛾の鱗粉には毒素が含まれており、命に別状はないが吸い込めば微熱が出るというものだった。

 紅抜きの任務と言うことで、8班は虫使いのシノをリーダーに捕獲作業に追われていた。

黄籠蛾は特殊な匂いを持つ葉に寄っていくので、キバと赤丸の鼻でその木を探し、シノの術で虫を集めて

3人で虫籠に捕獲していった。ついでにと、シノは鱗粉が飛ばないように黄籠蛾をチャクラで眠らせる。

 作業は、順調に進んでいた。もともと細かい作業が苦手なキバが、捕まえた蛾を籠に入れるのに失敗するまで。

「うおっ!?」

 籠の中に入れる前に手を放してしまい、蛾はぱたぱたと空へと舞い上がっていく。

 シノは反射的にキバとヒナタの口と鼻を手で塞いだ。

 蛾の姿が見えなくなると、シノは手を放し、キバに向いて言った。 

「もう少し慎重にやれ。微熱でも、でれば支障がでる」

「う、うっせーな!ちょっと手を放すタイミングがズレただけだろ!!それに、俺はお前みたいに虫の扱いに

慣れてるわけじゃねぇえんだかんな!!」

「………………では、この作業は、俺とヒナタでやる」

「――――――っ!!!」

 注意にがなるキバに対し、シノは表情一つ変えずに言った。

シノにしてみれば、ただ、慣れていないという言葉をそのまま受け取って、能率を考えて言っただけだったのだが。

キバは、何に対して怒ったのか、眉を吊り上げてシノを睨むと「勝手にしろ!」と吐き捨ててずんずん歩いて行ってしまった。

その後を、心配そうな赤丸が追う。……まだ、ここでの作業は終わっていないのに。

「キ、キバくんっ!」

 ヒナタが、行ってしまうキバとシノを交互に見てオロオロする。

 シノは小さくため息をついて、ヒナタに言った。

「ヒナタ。すまないが、キバと一緒に行ってくれ。…おそらく、もうじき雨が降る。凌げるような所を見つけてきてほしい。

ここの作業は俺がやっておく」

 ヒナタは、「う、うん」と頷くと、キバの方へ小走りで走っていった。

 ふと空を見上げると、確かに厚く薄暗い雲が西の空に見える。嵐になるかもしれないと、僅かに足を速めた。

 それは、本当に些細なことだった。

 キバは、ムカムカする腹の辺りを押さえて、その原因であるシノの台詞をどうしてだか繰り返す頭を振った。

『俺とヒナタ』。たったこれだけ。

こんな些細な言葉に、キバはイライラしていた。

(くそっ、シノの奴、ヒナタと仲良くやってりゃいいんだ!)

嫉妬以外のなにものでもない。

そんなキバを追いかけてきたヒナタに気づくと、赤丸がアンッと鳴いた。

「どーしたよ、ヒナタ」

「……シノくんがね、キバくんと雨宿りできそうな場所を見つけてきてほしいって。もうすぐ、雨が降りそうだから…」

ヒナタが、もじもじと、しかし一生懸命説明する。

キバは、ヒナタとシノが一緒にいないことにほっとしたと同時に、ふいに不安感を覚えた。

なぜだろう、と考えると、一つ、思い当たる節があった。

「……キバくん?」

 考え込んだキバに、ヒナタが心配そうな声をかける。

「あ、いや、悪い。…ただ、シノの奴大丈夫かと思って」

「シノくんが……?」

 ヒナタが首を傾げると、キバは言った。

「ほら、さっき。蛾が飛んだ時にさ、あいつ自分の口と鼻押さえてなかったら、鱗粉吸い込んだんじゃないかって

……いや、ま、無いと思うけど」

 無いと思うといいながら、ますます不安感は募っていく。

 ヒナタも、不安げにシノのいる方向を見た。

しかし、シノに言われた通り雨を凌げる所を探すべきか、シノの元へ戻るべきか、判断が付かなくてやはりオロオロする。

「…………戻るぞ」

 不安に負けて、キバが言った。すると、ヒナタもすぐに頷く。やはり、心配なのだ。

 無事なのを確かめるだけでいい。きっと何事もなく、戻ってきた二人を不思議そうに見やるはずだ。

と心の中で唱えながら、キバはヒナタと先程の場所へ戻っていった。

しかしその不安は、予想以上に当たってしまった。

戻るとシノの姿はなく、あるのはシノの額あてと、木陰に置かれた虫籠だけ。

「なんだよ、これ………」

「シノくん……」

絶句する二人に追い打ちをかけるように、ぽつりと、赤丸の鼻に水滴が落ちた。

「ちっ、降ってきやがった」

キバは咄嗟に赤丸とシノの額あてをヒナタに託し、虫籠を持って依頼人の家に戻るように言った。

「シノは俺が探してくる。匂いを追えば、すぐに見つかる。もし雨が上がっても俺達が戻らなかったら、

赤丸に探させるんだ。いいな?」

 ヒナタは、キバの言葉に青い顔で、しかし真剣な表情で頷いた。

 キバも頷くと、雨が匂いを洗い流してしまう前にと、急いでシノの匂いを追いかけた。

 

この上ない失態に、シノは少し滅入っていた。なんだかんだで虫を呼び寄せ続け、眠らせ続けていたので、

チャクラがもう残り少なかった。その上、鱗粉を吸い込んでいたらしく、熱もしっかりあがっている。

 そのため、普段なら瞬殺できそうなただの野党三人組にあっさり捕らえられてしまった。

まだ頑張れば抵抗できたが、本格的な戦闘ともなればせっかく捕獲した蛾たちを逃がしてしまう恐れがあった。

咄嗟に木の陰に虫籠を隠しただけでも、良しとするしかない。

 しかし……とシノは思った。

 この三人は一体何の目的で自分を捕まえたのだろう?

 特に暴力を受けるでもなく、金品を要求されるでもなく、ただ、目隠しをされて根城であろう洞窟に連れてこられた。

 縄抜けもしっかりしつつ、冷静に様子を窺う。

洞窟の一番奥の部屋であろう。シノは、その中の拾ってきたと思われる汚れた埃っぽいベットに座らされている。

汚くともベットという快適なものに座らされるという待遇の良さも疑問だ。

今は三人の内二人が部屋にいて、黙々とカードをしている。

 しばらくしてもう一人の男が戻ってきた。手には、小さな瓶を持っている。

 それを軽く振って見せると、カードをしていた二人は嫌な笑みをこぼした。

(一体、何をする気だ?こいつら……)

 シノは訝しげに眉を寄せた。いまいち、意図が読めない。

 瓶を持った男が徐にシノに近づき、瓶のふたを開けてシノの顎を持ち上げる。

まったく抵抗しないことを不思議にも思わず、無色透明な中身をシノの口に流し込んだ。

シノも、大人しくそれを飲み込む。……ひどく甘くて、顔をしかめた。

 幸いにも、たちに毒の分解を命じられるほどのチャクラはまだ残っている。

 今はとにかくあまり動かず、鱗粉と今飲まされたものの解毒を優先させた。

 雨が降ってきたのだろう。ザーザーという音が遠くに聞こえてきた。

 

 

「シノ!!」

蛾の鱗粉の毒の分解が終わり、熱もひいた頃、無駄にでかい声が洞窟内に響いた。

 それと同時に部屋中が煙に巻かれ、視界がゼロになる。

その中で、匂いを頼りにキバがシノの腕をつかんだ。

縄からはとっくに抜け出していたので、シノはその手に従って立ち上がる。

 しかし、雨のせいで湿度が高くなっていて、煙玉の効果も長続きせず、部屋から脱出する前に煙が消えてしまった。

「逃がすか!!」と、男達がそれぞれの獲物を持ち、出口を塞ぐ。

 自分だけならば戦っても良いが、ぐったりした様子のシノは、どうやら戦える状態ではないようだ。

キバは一度シノから手を放し、「通牙!!!」と盛大な声と音を立てて背に面した岩壁に大穴を開けた。

「…………へっ!?」

 瞬間、キバの身体が宙に浮いていた。

一瞬何が起きたかわからなかったが、すぐに理解した。

穴を開けた壁の向こうは、なんと崖だったのだ。

「キバ!!」

 徐々に落下する中、伸ばされたシノの手に向かって、キバも手を伸ばす。

お互いの手は、しっかりと握られた。

「――――くっ」

「うわっ!」

だがしかし、キバの重さに堪えられるほどシノの力は残っておらず、そのままシノも一緒に崖の下へと落下した。

 段々速度を増して落下していく。キバはとにかくシノだけでも守ろうと、つないだ手を引き寄せ、

自分の背を下にして自分より頭一つ高いシノの身体を抱き込み、庇う体制を取った。

 しかし突然落下スピードが減少し、ふよふよ浮いたかと思うと、崖の中程にぽっかり空いた

洞窟の中にゆっくりとおろされた。

一体なんだと見まわして、気づく。

「ありがとな」

 主の元へと戻っていく黒い塊に、キバは礼を言った。

 シノが、残しておいたチャクラを使ってたちに命じたのだ。

 

 

「雨が上がんのを待つしかねぇな。雨さえ上がれば、赤丸が見つけてくれる」

「……ああ」

 荒れてきた外を眺めながらキバが言うと、シノは小さく応えた。

「お前、大丈夫か?」

 キバは、洞窟の奥に腰を下ろしたシノに心配そうな顔を向ける。

「……ああ」

 あまり、大丈夫ではなさそうだ。チャクラも使い果たしたようで、疲れ切っているのが隠し切れていない。

「休んでろよ。俺が見張っとくから」

 キバはそう言って、洞窟の入口付近にどっかと座り、また、外を見た。

「……………すまん」

「別に……いいって」 

 雨の音に消されてしまいそうな声で、珍しく素直に謝ってくるシノに、キバはぶっきらぼうに言った。

 随分、弱ってる……。

長い時間を共有してきたため、激務や風邪で弱っているシノを見たことが無いわけではないが。やはり、珍しい。

こんな時こそは自分がしっかりしなければと、雨に濡れた服を脱いで、キバは顔を引き締め、背筋を伸ばした。

 雨は、激しさを増している。

 

 

 どのくらい経っただろうか。雨は、嵐とはいかないまでもかなり激しくなった。

ずっと薄暗いため、時間の経過がわからない。感覚だけなら、30分程だろうか。

 ふと、シノの様子が気になってキバが奥の方に視線を移した。

 シノは壁に寄りかかって座り、俯いている。

一見、眠っているように見えるが、キバはすぐに異変に気づいた。

雨の音で聞こえなかったが、肩の動きから息が荒いことが見て取れる。

「おい、シノ!」

 キバが慌ててシノに駆け寄る。不安感が再発した。

「どうした?やっぱ熱があんのか!?」

「触るな!」

 キバがシノの額に手を当てようとすると、シノはその手を払い除けた。

「なっ!心配してやってんだぞ!!」

 シノの態度に、キバが怒鳴る。すると、シノはまた消えそうな声ですまん、と言った。

 おかしい。

 キバは直感し、シノの様子を観察する。

 息づかいが荒く、顔が赤い。そして震えている。

……まさか毒かと思った時、キバは微かな甘い匂いに気づいた。

今まで嗅いだことの無い匂いだったが……。嫌な予感がした。

「おい、シノ、お前まさか……!」

 触れようとするとシノは払おうとしたが、キバは逆にその腕をつかんで壁に押しつけ、

空いている右手でシノのサングラスを奪い取った。

「…………キバ」

 シノは、困惑した表情でキバを見つめた。顕わになった琥珀色の瞳が、潤んでいる。

 熱ではない。これは……。

「お前、もしかして……」

 シノは、観念したように口を開いた。目を伏せ、躊躇いがちに、しかしいつも通りの淡々とした口調で。

「さっき、捕らえられた時、薬を、飲まされた…」

 やっぱり、とキバは思った。経験したことはないが、かなり辛いと聞いたことがある。

そんな状態で30分も我慢してたのか、こいつは…!

「バカヤロー!なんでもっと早く言わねぇんだよ!!」

「…………寄壊虫が、分解して、いる」

「チャクラ残ってねぇんだろ」

 以前、との契約について聞いたことがあった。

確か、チャクラ無しでを働かせるのは自殺行為だと聞いた。

キバがズバリ言うと図星だったらしく、押し黙った。

シノのことだ。薬を飲まされた時はまだ分解できるだけのチャクラを残していたのだろう。

すると……さっきの、あれか。

キバは舌打ちをした。守ろうとしたはずが、助けられた挙げ句、こんな辛い思いをさせてしまった…。

「……………処理は、自分で、やる。キバは、向こうを、向いていて、くれ…」

 とぎれとぎれに、シノが声を絞り出して言った。

 しかし、キバは壁に押しつけた腕を放さない。

キバはサングラスを壊れないように放り投げ、あいた手をシノの顎に添えて自分の方を向かせる。

「手伝う」

 真っ直ぐ見つめられ、淀みなく言い放たれた言葉に、シノは驚いて目を見開いた。

「いや…しかし――――っあ…!」

 食い下がろうとするシノの顎からふいと手を放し、キバは問答無用とばかりにその手でズボンの

上から痛々しいまでに勃起したそれに少し触れる。

 ほんの少し触れただけで、シノの身体はビクンと反応し、苦痛に顔を歪める。

「黙ってろ。お前よりは本とかビデオとかでこういう知識は持ってんだ。たまには俺の言うことも聞けよな」

 冷静なキバの声に、シノはただ黙って…そして微かに頷いた。

 キバはそれを見て取ると、ジャケットを脱がせ、薄手の鎖帷子をはずし、シャツは脱がせるのが難しいので

真ん中から力任せに引き裂いた。これにより、シノの白い上半身は裂かれたシャツだけを纏うことになる。

 そして、手裏剣のホルスターをはずして、今度はより慎重にズボンを脱がせ、中心部を露わにさせる。これで、準備は整った。

 実際、知識があるとは言ったものの、そう大したものはなかった。

ただ、ヤる時にはできるだけ服は脱いだ方が、汚れないと認識していた。

「始めるぞ」

 キバは、静かにシノに言った。

シノはただ頷いた。それにキバも頷き返すと、やさしく、そっと触れた。

「――――――っ!!」

 直に触れられたため、先程よりもさらに顔を歪めたが、今度は唇を噛んで声は押し殺した。

「シノ、声、我慢すんな!」

反射的にキバが言った。

「し、かし……」

「ただでさえ辛いのに、声まで我慢してどーすんだ!いくらお前でも、オカシクなんぞ!心配しなくても、雨の音が掻き消すって!」

 珍しいキバの正論に、シノはしばし沈黙してから「わかった」と呟いた。

「続けるぞ」

 キバは、今度はそれをやんわりと包み込むようにして全体に触れた。

「ぁあ……ん!!」

 予想以上の甘い声に、キバも驚いたが、それ以上に驚いたのは本人で。

「キバ、やはり……!!!」

 顔を真っ赤にして、珍しく焦った様子で尻込む。

「黙ってろっ!!」

 と、負けじと顔を赤くしたキバが、シノの言葉を防ぐように触れた手に少し力を加えた。

「んあ……やぁ…ぁぁっ…!」

 経験したことの無い感覚に、シノは思わず両手でキバの手首を押さえ、俯いた頭を必死に左右に振る。もう止めてくれ、と。

 しかし、このままにしておくわけにもいかない。

仕方ない、とキバは一度手を放し、ホルスターを留めていた布をシノのズボンから取る。

そして、何をするのだろう、と涙ぐんだ目で見ていたシノに、両手を後ろに組むように言った。それを、縛る。

「言っとくが、俺にこんな趣味はねぇから!!断じてねぇからなっ!!!」

 自分もかなり恥ずかしいようで、頬のトレードマークと区別できないほど顔を赤くして夢中になって怒鳴った。

 しかし、逆にシノは、ここまでしてくれるキバを見て少し落ち着いたのか、「わかって、いる」と辛そうながらも静かな声で返した。

 シノの落ち着いた声に影響され、まだ顔は赤いものの、キバは冷静になって作業に戻る。

「あぁ……ぁ、ぁ、ぁ…っ」 

 優しく、そっと、撫でるように指を這わせると、白濁の体液が徐々に漏れだしてきた。

 しばらく行為を続け、少しずつ、少しずつ精液を吐き出させていく。

 しかし、これ以上は手だけでは無理だと判断したキバは、徐に頭を下げ、それを口に含んだ。

「ふあぁ…!?……キ、キバ!?」

 突然の感触に、シノは驚いてキバを見る。

「キバ…!な、なにも、そこまで…っああ!キバっ…やめ……っ!!」

 今までと比べものにならないほどの衝撃に、シノは仰け反った。

 キバが、舌で舐めたのだ。キバは、シノの声を無視し、舌を絡め、歯を甘くたててシノの中心部を刺激する。

「や、あぁ、ぁ、ぁ、っ…も、ぁあ……!!」

 堪えきれなくなったように、一気に欲を吐き出す。

それがキバの喉に引っ掛かり、ゲホッと咽せながら離れると、キバの顔に見事にかかった。

「………………………………キバ」

 ケホケホと咽せていると名を呼ばれ、キバはシノを見た。

 申し訳なさそうな、今にも泣き出しそうな、今まで見たことのない、情けない顔。

(………そんな顔、すんなよ……)

「……キバ、本当に、すまない…お前に、こんなこと…」

 はあはあと息を整えながら、シノは弱々しく言った。

(そんな声、出してんじゃねぇ!)

キバは、自分の顔をごしごしと拭うと無言で立ち、シノの後ろにまわって縛っていた布を解き始めた。

「…気にすんな」

 そう、ぼそりと呟くと、また、すまん、と返ってくる。

「気にすんなっつってんだろ!!」

 きっと、これを言ったら嫌われる、とずっと思っていたコトを言いたくなった。

 嫌われても良いから、嫌な顔でも呆れた顔でも怒った顔でも良いから、今のシノの表情を変えたかった。だから、言った。

「俺…俺は………お前のことが、シノが、好きだから。キ、キスしてぇとも思ってたし、抱きてぇとも思ってたし!

だから、気にすんな!俺が、好きでやったんだ!!」

 告白と同時に布が解け、「気にするな」と繰り返すために勢いよく振り向くと、キバは心底後悔した。

状況は、更に悪化していた。

 シノは、嫌な顔でも呆れた顔でも怒った顔でもなく、泣いていた。

目を閉じて、涙を、流していた。

(最悪だ…)

 そんな表情をさせたくなかったのに。泣かせたくなかったのに。

 キバは、もう、何も考られなかった。ただ、その涙を拭ってやりたくて。泣き顔を、壊したくて。

それだけを思って、シノの頬を伝う少ししょっぱい水を舐め、シノの唇に己の唇を重ね、そのまま押し倒した。

 両肩に手が当てられ、押されているのがわかる。抵抗しているのだろうが、力が入っていない。

シノの表情はわからない。怖くて、見ることができなかった。

ただ、悲しい顔でなければいいなと、身体中を愛撫し、喘がせ、シノを犯しながら、そう願った。

 

 

 シノが目を覚ますと、キバのジャケットが被せられていた。

雨音はすでにぱらぱらとしか聞こえず、雲の切れ目から陽が射し込んでいた。

その逆光の中に、背中を丸め、頭を垂れて座るキバの後ろ姿を見つける。

「……キバ」

 呼ぶと、声が掠れている。身体も、ものすごくだるい。

「…………シノ、わりぃ、俺……」

 背中を向けたまま、キバはぼそぼそと言った。

「……薬の効果は完全になくなった。お前のお陰だ」

「違う!!俺は…ただ……」

 自分の欲望を満たすために……と、声にもならない声で呟く。

「キバ、サングラスを持ってこっちへ来い。眩しい」

 そんなキバの様子を目を細めてじっと見つめてから、シノが少し強い口調で言った。

眩しいと言われ、その上自分のせいで掠れた声のため、余計に逆らえない。

 キバはのろのろと立ち上がり、放りっぱなしになっていたサングラスを拾うと、シノの横に膝をついてサングラスを差し出した。

 シノはそれを受け取らず、だるい身体を無理矢理動かして、俯いたままのキバの頬に手を当てて顔を上げさせる。

 「後悔」と文字にせずとも書いてある顔。シノは、思わず口元を綻ばせた。

 しかし、キバはシノの顔を直視できず、目を伏していたためにそれに気づくことはなかった。

「……嫌いに、なったよな…こんな………」

「いや…。嫌いになどなるものか。自分を好きだと言ってくれる相手を、嫌いになるわけはない」

 シノの、きっぱりはっきりした応えに、キバは驚いて視線を向ける。

 瞬間、心臓が、止まるかと思った。

 シノが、琥珀色の目を細め、優しく優しく微笑んでいたから。

それが、あまりにもきれいで、キバはほうっと見とれてしまった。

「キバ」

 呼ばれて我に返ると、すでにシノは普段の無表情に戻っていた。

「……今のところ、なんと答えたらいいのかわからないのだが。ともかく、ありがとう、と言っておく」

 シノの今のところの返事を聞いて、キバは改めて思い出す。

……嫌われなかった。

 そのことが、とにかく嬉しくて、心底ほっとして、思わずシノを抱きしめた。

「シノ、俺、お前のこと大好きだ!」

 シノは、いつの間にかキバの手から取ったサングラスを掛けてから、ぽんぽんとキバの頭を軽く撫でる。

 雨は上がり、外は溢れんばかりの光に満ちている。

爽やかな風が吹き込み、滴る水滴がきらきらと輝く。

この分だと、赤丸が二人を見つけるのも時間の問題だろう。

 早く服を着なくては…などと考えて、ふと、シノは気づいて言った。

「…ところで、俺はこの様では動けない。当然、お前が背負っていってくれるのだろうな?」

「………………あ、当たり前だろ…!!」

 キバの強がりな声が、洞窟に反響し、晴れ渡った空に吸い込まれて、消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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