タイ:軍がクーデター デモ激化、対話解決を断念

毎日新聞 2014年05月22日 19時37分(最終更新 05月23日 01時03分)

戒厳令を布告されたバンコク=2014年5月22日、ロイター
戒厳令を布告されたバンコク=2014年5月22日、ロイター
バンコク市内をパトロールする兵士=2014年5月22日、AP
バンコク市内をパトロールする兵士=2014年5月22日、AP

 【バンコク岩佐淳士】タイ全土に戒厳令を布告したタイのプラユット陸軍司令官(60)は22日午後5時(日本時間同7時)過ぎ、テレビ演説で「軍と警察が政権を掌握した」と発表し、クーデターを宣言した。軍は憲法を停止し、治安維持を理由に夜間外出禁止令を発令した。2011年の総選挙から続いたタクシン元首相派政権は崩壊し、今後はプラユット司令官をトップとする「国家平和秩序維持評議会」が国家運営にあたる。クーデターはタクシン氏が失脚した06年9月以来。プラユット司令官は軍事政権下で政治混乱の収拾を狙うが、タクシン派グループからの反発や国際社会からの批判は必至だ。

 クーデターに伴い軍はタクシン派と反タクシン派の協議に参加していたチャイカセム法相や最大野党・民主党のアピシット元首相、反政府デモ隊を率いるステープ元副首相ら両派を拘束し、軍施設に待機させた。

 クーデターの実行はテレビ演説直前の午後4時半で、プラユット司令官は「(タクシン派、反タクシン派の)デモが激化し、国民の生命や財産が脅かされている。我々は平和と安全を取り戻す必要がある」とクーデターの理由を説明。また「国民は普段通り生活し、パニックを起こさないでほしい。外交方針にも影響はない」と、国民や国際社会に冷静な対応を求めた。

 プラユット司令官は20日、戒厳令を布告し、治安権限を掌握。総選挙実施による政権立て直しを図るタクシン派と、選挙を経ない暫定政権樹立を求める反タクシン派の双方に対し「対話による解決」を促した。21日から両派の主要人物を集め軍施設で協議を続けていたが、意見の隔たりは大きく、議論は紛糾した。

 軍関係者らによると、司令官の意向は、反タクシン派が求める暫定政権樹立による混乱収拾を図る方向に傾いていたという。だが、22日の会合で、政権側が内閣退陣を拒否。司令官はこれ以上対話をしても、結論は得られないと判断したとみられる。

 プラユット軍政は今後、政治改革を主導するなどして、国内対立の解消を図るとみられる。しかし、農村住民や貧困層を中心としたタクシン派は、軍のことをエリート層が支える反タクシン派の「中核」と敵視し、今回もクーデターを強く警戒していた。地元メディアによると、クーデター後、バンコク郊外でデモ集会をするタクシン派グループと軍部隊との間で銃撃戦が発生、軍がデモ参加者数人を拘束した。

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