ロシアのRT放送は21日、ロシアのプーチン大統領による訪中を契機として、両国がアムール川(中国名・黒竜江)に鉄道橋を建設することで合意したと伝えた。中ロは1969年にアムール川での国境紛争で銃撃戦を繰り広げた経緯がある。
北京の外交筋は「米国などは中ロが国境問題で再び衝突する可能性があると予想するが、アムール川への鉄橋建設はそうした可能性を一蹴するものだ」と述べた。プーチン大統領が20日、上海で江沢民元国家主席と会い、「両国間にはいかなる対立も存在しない」と述べたことも、中ロの蜜月関係を暗示している。2人は2004年、北京で会い、両国間で最後まで残っていた国境紛争の難題を交渉で解決した。
プーチン大統領の訪中で、中ロは反米・反日の共同戦線を張ることになったとの分析が聞かれる。中ロ首脳は20日の会談で、「他国の内政干渉に反対する」との共同声明を発表した。これはロシアが併合したクリミア半島と中国が領有権を主張する南シナ海の問題に米国が介入すべきではないとの意味として受け取れる。
習近平国家主席は同日、アジア相互協力信頼醸成会議(CICA)の基調講演で、「CICAをアジアの安全保障協力機関にしていこう」と提案した。中国が主導し、ロシアが後援するアジアの安全保障機構を構築し、米国の「アジア復帰」戦略に対抗する狙いとみられる。
中ロはまた、来年7月の第2次世界大戦戦勝70周年の記念行事を共同で開催することを決めた。習主席は「(日本の)軍国主義の野蛮な侵略という悲劇を繰り返さない」と述べ、プーチン大統領は「歴史を勝手に変えようとする試みを阻止していかなければならない」と指摘した。日本の再武装などに共同で対応していく意図とみられる。
現在中国は東アジアで、ロシアは東欧で、それぞれ過去の栄光を取り戻そうとしている。習主席は「中華民族の復興」を、プーチン大統領は「強いロシア」を掲げている。しかし、中ロはいずれも単独では力不足だ。ロシアはクリミア諸島を占領する過程で米国など西側の経済制裁に直面した。中国は中日の紛争地域である釣魚島(日本名・尖閣諸島)と南シナ海で米日同盟に対抗している。
中ロは今回のプーチン大統領の訪中を通じ、それぞれ十分な実益を得たとみられている。プーチン大統領は多くの企業トップを帯同し、石油、ガス、原子力、電力、高速鉄道、旅客機、金融の各分野で協力を強化した。経済制裁を掲げる西側の「ロシア包囲網」を中国と手を結ぶことでかいくぐろうとしている格好だ。
一方、中国はロシアの軍事力を借り、米日同盟主導の「中国包囲網」突破を目指す構えだ。中ロの海軍による合同軍事演習が釣魚島付近の海域で行われるのもそのためだ。香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは、米国が中国軍関係者5人をハッキングの罪で起訴したことを受け、中ロ首脳は「情報空間」に関する協力を強化することで合意したという。
1969年の中ソによる国境紛争は、中国が米国との関係改善に積極的に乗り出すきっかけとなった。その後、世界秩序は米ソ両極体制から米中ソの三角体制に転換し始めたとされる。北京駐在の第三国の消息筋は「米中日ロはこれまでアジア太平洋地域でけん制と協力を並行させてきた。しかし、プーチン大統領の訪中以降、地域の勢力地図は『米日同盟』対『中ロ連合』に二分される可能性が高い」と指摘した。