Royal Thai Army soldiers in Silom, Bangkok
タイでクーデター
本日2014年5月22日タイ陸軍のプラユット司令官は22日夕方、クーデターを決行したと発表した。
前回の2006年9月以来、くしくもインラック首相の実の兄タクシン前首相が国外亡命を強いられて以来の出来事となる。
タイでクーデター=陸軍司令官が発表―タクシン派政権崩壊
タイ陸軍のプラユット司令官は22日夕、クーデターを決行したと発表した。タイでクーデターが起きたのは2006年9月以来。半年以上にわたってタクシン元首相派政権と反政府派の対立による混乱が続いてきたタイ政局は、軍がクーデターという非常手段を行使し、政権が崩壊する事態を招くことになった。
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2014052200823
http://www.jiji.com/jc/c?g=int&k=2014052200823&p=0140522at68&rel=pv
タイでクーデターが起こるまでの出来事
反タクシン派によるデモ
今回のタイにおけるクーデターが起こった理由は2013年11月から起こっている反タクシン派(反政府派)によるデモを単に発する。
現タイの首相であるインラック首相は、2006年に起こったクーデターにより失脚し、タイ国外に亡命している実の兄タクシンをタイへ帰国に導くために恩赦*(おんしゃ)法の審議を始めた。
タクシンの政策によって恩恵を受けたタクシン派はこれを歓迎したが、元々の支配階級であった反タクシン派は大きな反発を起こす。
バンコクを中心にデモを活発化させ、バンコク市内の主要道路も封鎖している。
バンコク非常事態宣言
2014年1月には、インラック首相はバンコク非常事態宣言を発令し、夜間外への外出は避けるように命令が出る。
その後は、バンコクの世論も反タクシン派によるデモに関しては否定的な意見が目立ち始め、徐々にデモも落ち着いてくる。
そして、デモが落ち着いてきた3月19日になると、非常事態宣言は解除、事態は収集するかのように思われていた。
違憲判決でタイのインラック首相失職
ところが、5月7日、タイのインラック首相が政府高官人事で職権を乱用したとされる裁判で、タイの憲法裁判所はインラック首相の行為は憲法違反とする判決を下す。
タイのインラック首相失職、政府高官人事で違憲判決
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0DN0BA20140507?pageNumber=1&virtualBrandChannel=0
「人事権の職権乱用」という意外な理由でインラック首相は失職に追い込まれた。
まさに青天の霹靂であった。
反政府デモ拠点で爆発と銃撃
タクシンの実の妹であるインラックの失職に反発したのは、北部を中心とした農民の多いタクシン派である。
そして同じ時期の5月15日、反政府派(反タクシン派)のデモ拠点で爆発と銃撃という惨事が発生し、タクシン派と反タクシン派の対立が鮮明になる。
タイ反政府拠点で爆発と銃撃、2人死亡 21人負傷
http://www.afpbb.com/articles/-/3014957
3月までの反タクシン派によるデモの間も爆発による死者が出たことはあったが、今回は銃撃戦に発展するという異常事態で、両者の対立による治安悪化が懸念された。
ただし、この爆発と銃撃がタクシン派によるものという確信はなく、両者の対立を刺激したい外部勢力もしくは、クーデターの口実にしたいタイ国軍によるものとの可能性も否定出来ない。
非常事態宣言下での死傷事件はデモ、非常事態宣言下のタイで起こった様々な出来事の記事も参考に。
タイ陸軍が戒厳令発令
タクシン派と反タクシンはによる対立によって治安の悪化が懸念され、タイ陸軍は戒厳令を発令する。
戒厳令により、タクシン派と反タクシン派両者には活動の停止と軍との協力を命令、メディアに関しては規制を命じている。
タイ陸軍が戒厳令発令
司令官は「われわれはこの暴力が全般的に国の治安を損ないかねないことを懸念している。そこで、この国の法と秩序を回復するために戒厳令を布告した」と指摘。その上で「この危機から抜け出す方法を探るため、全ての活動グループに対し、活動の停止とわれわれとの協力を求める」と述べた。
軍はバンコクの各地に拠点を築いている政府支持派および反政府派に対し、衝突を避けるためその場にとどまり、デモ行進をしないよう命じた。また、メディアに対しては、国の治安に影響しかねない事柄を放映しないよう命じた。「平和と秩序維持」のため、政府系・反政府系含む衛星テレビ10局に放送停止を求めた。
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20140520-00000019-biz_reut-nb
対話解決を模索=タイ陸軍司令官
タイ全土に戒厳令を発令したプラユット陸軍司令官は20日、タクシン元首相派政権と反タクシン派の対立が続く政情の混乱収拾に向け、全当事者を呼んで対話による解決策を模索する意向を表明した。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140520-00000077-jijp-int.view-000
この際には陸軍将校の話として、クーデターを否定している。
陸軍将官は匿名を条件にロイターに対して「われわれは、緊急非常事態を宣言した。
これはクーデターではない。状況は安定しておらず、日々殺し合いが起きている」と語った。http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0E000B20140520?pageNumber=2&virtualBrandChannel=0
2日前の厳戒令を経て、本日5月22日のクーデター発表という流れに至ったわけだ。
クーデターが起こった理由
2日前の厳戒令時にはクーデターを否定していたが、その時ロイターの記者に対して否定したのはタイ国軍のいち将校であり、タイ国軍の上層部の話ではない。
従って、この際にはすでにクーデターが決まっていた可能性が高い。
プラユット陸軍司令官はタクシン派と反タクシン派を含めた全当事者を呼んで対話による解決策を模索するとの意向を表明したが、元々タイ国軍がクーデターを起こしたのはタクシン派との根強い対立がある。
その点に関して詳しくは
を参照していただくとして、タイ国軍は反タクシン派として、タクシンによって利権を奪われた権力層に該当する。
反タクシン派=民主市民連合(PAD):軍や裁判所、官僚といった既存の権力層や都市中間層(バンコクなど)を基盤とし王室護持を掲げている。
http://freelifer.jp/?p=5638
クーデターにより政権を奪われるのは現政権(タクシン派)であり、これを歓迎するのは他ならぬ反タクシン派である。
今後のタイの情勢を左右するポイントとしては、タクシン派の動きが大きなポイントとなる。
タクシン派は北部の貧困層を中心としたタイ国内では多数派であり、今回のクーデターでも大きく反発している。
クーデター後も集会継続し、これに対してタイ国軍は空砲による威嚇をしている。
タイのタクシン派がクーデター後も集会継続、軍は空砲
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0E213F20140522
インラック首相の処遇で、こうしたタクシン派を刺激するような事があればタイ国内が2分し、大きな内乱が発生する可能性も否定出来ない。
治安維持に必要とはいえ、今回のクーデターはタクシン派にとっては容認できず、治安の更なる悪化をもたらしかねない。
夜間外出禁止令も出され観光にも影響が及ぶなか、力を背景としたタイ国軍の強硬な解決だけは避けてほしいものである。
タクシン派と反タクシン派の対立は中国共産党が関与?
一部のデマとして、タクシン派と反タクシン派の対立が中国共産党によるものとする主張がある。
これはタクシンが中国系タイ人であることが根拠とされているが、タイにおける中国系タイ人は中国に対して特別な感情をほとんど持っていない。
タイへの帰属意識しか持たず、中国への愛着も特に無い。
基本的に、この対立はタクシンとそれまでのタイ国内における支配階級の対立になる。
詳しくは上記でも紹介したように
を参考に。
この記事は今後も情報を収集しながら追記にて情報を加えて行きます。
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