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「引きこもり」するオトナたち
【第199回】 2014年5月22日
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池上正樹 [ジャーナリスト]

高学歴女子ゆえに地元で職につけない…
地方公務員ワーキングプアの不条理な実態

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 Yさんは昨年、雇用期間を終えた。

 その後しばらくして、職場の歓送迎会に誘われた。

 「同じ島で働かせて頂いたし、挨拶もしないで辞めちゃったので、礼儀として、お礼を言わなければ…」

 迷いに迷った挙句、思い切ってYさんは、歓送迎会に参加した。

 「また戻って来てよ」

 上司から言われた。

 でも、これまでの雇用待遇で、差別されながら働かされるのは限界だった。

 Yさんは「無理です」と答えた。

女性が約8割を占める非正規職員
“女性の社会進出”とは低賃金で働くことなのか

 総務省の調査によると、2012年4月現在、すべての地方公務員の「臨時・非常勤職員」の数は、60万人余りに上る。

 総務省が定義づける調査対象者は、「任用期間が6ヵ月以上又は6ヵ月月以上となることが明らか、かつ、週19時間25分以上勤務の者」。ただし、このうちの6ヵ月以上の雇用に満たない者は除外されるため、実態としては、もっと多くの数に膨れ上がるものとみられている。

 ちなみに、4年前の調査に比べると、「臨時・非常勤職員」の数は10万人余りも増えた。また、女性職員の占める割合は、74%余り。一般非常勤職員だけに限定すると、女性は8割を超えた。

 いまや地方自治体には、こうした“公務員ワーキングプア”としての働き方をさせられる非正規職員の存在なしには成り立たなくなっている。しかも、その大半は女性が占める。

 “女性の社会進出”が叫ばれながら、その多くは、低い給与で働かされているのが現実なのかもしれない。

 Yさんは、こういう。

 「地方にいると、引きこもらざるを得ないシステムになっています。社会は、そうした人たちを精神障害の枠に落とし込んでしまって、できれば手を付けたくないという宙ぶらりんの状態にしたいのではないか。もっと違う仕組みがないのかな、と思います」

 どこにいようとも、まじめな人たちが報われるように、希望の見出せるような道を一緒に考えながらつくっていきたい。

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池上正樹 [ジャーナリスト]

1962年生まれ。大学卒業後、通信社の勤務を経て、フリーに。雑誌やネットメディアなどで、主に「心」や「街」をテーマに執筆。1997年から日本の「ひきこもり」現象を追いかけ始める。東日本大震災後は、被災地に入り、震災と「ひきこもり」の関係を調査。著書は、『あのとき、大川小学校で何が起きたのか』(青志社)、『ドキュメント ひきこもり~「長期化」と「高年齢化」の実態~』(宝島社新書)、『ふたたび、ここから~東日本大震災、石巻の人たちの50日間~』(ポプラ社)、『ダメダメな人生を変えたいM君と生活保護』(ポプラ新書)などがある。最新刊は『石巻市立大川小学校「事故検証委員会」を検証する』(ポプラ社)。池上正樹 個人コラム『僕の細道』はこちら

 


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「会社に行けない」「働けない」――家に引きこもる大人たちが増加し続けている。彼らはなぜ「引きこもり」するようになってしまったのか。理由とそうさせた社会的背景、そして苦悩を追う。

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