漫画の「美味しんぼ」が話題になっています。 フクイチへちょこっと見学に行くだけで鼻血が出たり、だるくなったり、 しまいには、もう福島には住めないと言い出したり。 マスコミだけでなく、政府や関連する地方自治体もコメント、 抗議しており、喧々諤々。 今回話題になったのは美味しんぼの「福島の真実」という最新の シリーズで、24話で完結。 有名になったのは22話の鼻血のシーンから。 で、22、23、24話の載っている雑誌をコンビニなどで買いました。 1−11話までは既に単行本になっています。110巻。 12−24話まではそのうち単行本になるんでしょう。 110巻はAmazonで品切れのようなので、Kindle版を購入。 1話から福島を取材する経緯が出てきて、福島県をくまなく取材し、 「福島の真実」を伝える話になっています。 だいぶ前に和解した親子がさらに絆を深めるということで終わっている。 「しばらく休載」(24話p390)らしい。 親が子に福島を取材し福島の真実を知ることは「自分の根を知る」 ことにつながるそうです(110巻p28)。 親の根が何かは途中で明かされますが、子の方は最後まで不明。 途中、妻に「(父は)あなたと本当の和解を成立させようと思っている。そのために、あなたに自分の根を確認させたいいのだと私は思う」といわれ、結局、最後にはその「根」を見つけ、親子が手を結ぶ、って感じ。 それはいいとして、2年間かけて福島を取材したということですが、 その期間は2011年11月から2013年4月までらしく、 6回行ったらしい。 なので、一番新しい話題でも1年以上経っています。 24話(p372) 父「今の福島に住み続けて良いのか、われわれは外部の人間だが、自分たちの意見を言わねばなるまい」ってことで、盛り上がります。 24話(p385) 父「医者は低線量の放射線の影響に対する知見はないと言うが、知見がない、とは解らないと言うことだ」 24話(p386) 子「福島を出たいという人たちに対して、全力を挙げて協力することだ」ってことで、鼻血で話題になりましたが、どうやら、福島は住めないところなので、脱出しろ、その支援をする、ということらしい。 110巻ではアイガモ農法で米を作っている農家(110巻p17)や有機栽培しているダイズの話(110巻p143)が出てきますが、最新機器でも放射性物質が検出できなかったり、かなり低レベルしか検出できなかったりと、安全性が高い農作物の紹介もあります。 110巻p126では 父「安全なものは安全、危険なものは危険、きちんと見極めをつけることが福島の食材には必要なのです。消費者に真実を伝えなければいけない。それは我々の役目です」って言ってます。 ところが23話で、識者という人が実名で出てきて、「福島を広域に除染して人が住めるようにするなんて、できないと私は思います」、「福島はもう住めない、安全には暮らせない」、というような過激な発言も出てきます。 朝日新聞の2014年05月21日の記事によれば、ご本人は確かにその過激発言はしているが、漫画では使わないで欲しいと要請したけど、結果的に編集部の意向に従ったという経緯が書いてあります。 「福島の真実」という言葉が全編を通じて盛んに出てきます。 先の「識者」の発言の後にも父は「ここれが福島の真実なのだ」と 言ってます。 この「真実」が何を指しているのかはじっくり読んでもわかりません。 少なくとも科学的根拠にもとづく事実ではない。 その辺が、論争になっているところで、細かく取り上げたらキリがないのですけど、この題材をどう解釈するかで科学的な考え方を確認することもできますし、そういう意味では良い教材かもしれません(もちろん皮肉です)。 福島県の浜通り、中通り、会津をポイントとなる季節に満遍なく回り(110巻p38)、結局6回2年近く取材したにもかかわらず、最後の話では地域差や放射線量などおかまいなしに、福島全体が危険だと受け取れる話になっているのは、残念なことです。 24話には、「識者?」や大阪府・市などから寄せられた批判と意見などと編集部の見解がまとめてあります。 ネットでもpdfファイルで見ることができます。 ○『美味しんぼ』福島の真実編に寄せられたご批判とご意見、編集部の見解 http://spi-net.jp/spi20140519/index.html ニセ科学等でおなじみの安斎氏の抑制の効いた冷静な見解から、なんじゃこりゃ? という、まぁ楽しめる意見までいろいろ。 その中でも大阪府・市の「抗議文」が異色で「場合によっては法的措置を講じる」と厳しい批判です。 「悪魔の証明」をしろ、と、毎度お騒がせの「識者」も登場しています。 「悪魔の証明」ができんから自分は正しい、と、まぁ、いつものパターンをくり返しています。 「編集部の見解」で編集長の見解も載っていますけど、力関係は圧倒的に漫画家の方が上のようです。 以前、美味しんぼと遺伝子組換え作物との間でもゴタゴタがありました。 ○美味しんぼと遺伝子組換え その1 http://yoshibero.at.webry.info/201007/article_6.html ○美味しんぼと遺伝子組換え その2 http://yoshibero.at.webry.info/201007/article_8.html ○美味しんぼと遺伝子組換え その3 http://yoshibero.at.webry.info/201007/article_9.html ○美味しんぼと遺伝子組換え その4 http://yoshibero.at.webry.info/201010/article_61.html その時に関与された人が新刊でこのことについてコメントされています。 この本は、わかりやすい言葉でいろんな事件がまとめてあって、非常に有益な本なのできちんと取り上げないといけないのですが、とりあえず、美味しんぼ関連だけ引用します(p226)。 美味しんぼにおける遺伝子組換え作物にかんする記述に対して、この著者が雑誌の編集長と話し合いをしたわけですが、 その結果、編集長はこの抗議を受け入れないが、今後、食品の安全性を取り上げる際には、この話し合いの結果を考慮することで同意した。 「今後、このようなことがないようにする」という言葉が、編集長ができる最大限の誠意の表れと著者は判断した。 さて、今回の騒動はどうだったんでしょう? 今回の騒動で、ラジカルやら放射線量やらいろいろと細かい点でツッコミどころが多く、それぞれコメントすると大変なのでパスしますが、このブログを書こうと思った最大のきっかけは「福島の真実編に寄せられたご批判とご意見」で意外な「識者」の名前を見つけたからです。 「酵素玄米」「EM菌」「波動」をマジで信じている「識者」です。 「酵素玄米」という訳のわからない商品もあるらしく、その本も出ています。 これを読んで、なんだこりゃと思い、検索してヒットしたのが次のサイト。 ○対談:野呂美加さん×中西研二(JOYヒーリング) http://joy-healing.jp/readings/special/20.html 「酵素には被ばくで錆びついた体を元に戻す力がある。人間の体内に酵素が減少すると生命力も減少する。だから酵素を体内に取り入れることがとても大事なんですね」なんていっちゃってます。 トンデモ「酵素栄養学」のマジ信者ですね。 「長岡式酵素玄米のすごいところは、有機ゲルマニウムや酵素源を発生させていることです。釜の中で原子転換させて、あるはずのない物質が生まれているんですよ」えぇ!? 「釜の中で原子転換」ですか!? 核反応? 勢いに押されたのか、対談相手も 「やっぱり酵素玄米が放射能のような毒素を消してくれるんですね」なんていっちゃいます。 みごとな放射脳ぶりです。 他にもEM菌や波動など、おなじみのトンデモ用語がバンバン出てきます。 「汚染地でEMX を飲んで、体内の放射能値がゼロになった人もいます」いやいや、ゼロになるって、あんた、その人の体はどんな元素でできてるの? 類は友を呼ぶ、って感じで、結局「酵素」に群がるのはこういう人たちのようです。 ってことで、次回は「酵素玄米」のお話です。 ちなみに、先週のNHK高校講座「生物基礎」は「代謝を進める酵素」。 二人のリアル「緑」さんはともに農学部出身だそうです。 いまいち深みがない話題でしたが、「酵素栄養学」の人たち必見です。 ネットでも見る事ができます。 ○NHK高校講座 生物基礎 http://www.nhk.or.jp/kokokoza/tv/seibutsukiso/ ○テーマ「コラム・酵素」のブログ記事 http://yoshibero.at.webry.info/theme/a2710f5053.html ○「コンシェルジュ」第8巻 野菜戦争 「美味しんぼ」への皮肉? http://yoshibero.at.webry.info/200904/article_3.html ○「美味しんぼ第101集 食の安全」を読む 有機農法 http://yoshibero.at.webry.info/200809/article_5.html ○「美味しんぼ第101集 食の安全」を読む 有機無農薬栽培 http://yoshibero.at.webry.info/200809/article_7.html |
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