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【社会】

大飯原発 運転認めず 各地の再稼働 影響も

2014年5月22日 07時00分

大飯原発3、4号機の運転差し止めを認める垂れ幕を掲げる原告団と喜ぶ支援者ら=21日、福井市の福井地裁前で(蓮覚寺宏絵撮影)

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 関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)は地震対策が不十分だなどとして、福井県の住民らが運転差し止めを求めた訴訟で、福井地裁は二十一日、定期点検中の二基の再稼働を認めない判決を言い渡した。樋口英明裁判長は「(住民が)生命を守り生活を維持する人格権の根幹を具体的に侵害する恐れがある」とした。東京電力福島第一原発事故後、原発の運転差し止めを認める判決は初めて。原発の再稼働に向けた全国の自治体などの動きにも影響を与えそうだ。関電は控訴する。

 菅義偉(すがよしひで)官房長官は同日の会見で、規制基準に適合すると判断された原発の再稼働を進める政府方針に変化はないとの認識を示した。

 耐震性の目安となる「基準地震動」が訴訟の最大の争点だった。樋口裁判長は「(炉心溶融に結び付く)一二六〇ガルを超える地震が来ないとの科学的根拠に基づく想定は、本来的に不可能」と判断。住民側の「これまで国内で観測された揺れの最大加速度四〇二二ガルに設定するべきだ」とする主張を踏まえ、一二六〇ガルを超える地震が起きる危険性が否定できないと認めた。

 さらに、使用済み核燃料の保管状況について「福島原発事故では4号機の使用済み核燃料が危機的状況に陥り、住民の避難計画が検討された」と指摘。関電の「堅固な施設は必要ない」との主張に対し、「国民の安全が何よりも優先との見識に立たず、深刻な事故はめったに起きないだろうという見通しに基づく対応」と断じた。そのうえで「危険性があれば運転差し止めは当然」と指摘。福島事故で検討された住民への避難勧告を根拠に、原告百八十九人のうち二百五十キロ圏内の百六十六人の請求を認めた。

 また、生存権と電気代のコストを並べて論じること自体が「法的には許されない」ことで、原発事故で豊かな国土と国民生活が取り戻せなくなることが「国富の喪失」だと指摘。福島事故は「わが国が始まって以来、最大の環境汚染」であり、環境問題を原発推進の根拠とする主張を「甚だしい筋違い」と断じた。

 住民側は「事故や放射線の被害による不安のない安全な環境を享受する権利を有している」として、人格権と環境権に基づいて運転差し止めを求めていた。

 原発の運転や設置をめぐる訴訟で、住民側勝訴は三例目。二〇〇三年一月に名古屋高裁金沢支部で高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の設置許可を無効とする判決、〇六年三月に金沢地裁で北陸電力志賀原発(石川県志賀町)の運転差し止めを命じる判決が出ている。いずれも最高裁で住民側敗訴が確定した。

 大飯原発3、4号機は原子力規制委が審査中だが、一四年度中の再稼働は困難とみられている。

(東京新聞)

 

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