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「引きこもり」するオトナたち
【第199回】 2014年5月22日
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池上正樹 [ジャーナリスト]

高学歴女子ゆえに地元で職につけない…
地方公務員ワーキングプアの不条理な実態

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 地方公務員の中にも、劣悪な待遇や職場環境の格差などによって傷つけられている非正規職員がいる。しかも、その数は増える傾向にある。

 彼らは、自治体によって「臨時職員」とか「日々雇用職員」などと呼ばれる“地方公務員ワーキングプア”ともいうべき存在だ。

 しかし、その内実については、外側にいる一般の市民からは、なかなか窺い知ることができない。

仕事内容は正職員とほぼ同じなのに
名刺もメアドもない、年収は100万円台

 地方の小さな都市に住む30歳代女性のYさんは、市の広報に掲載されていた「臨時職員募集」を見て、この職に応募した。

 Yさんの自治体では、「臨時職員」として雇用契約を更新。上限3年の条件で、総務課に配属された。

 勤務時間は、午前9時から午後4時まで。昼休みは正午から1時間あって、働くのは実質6時間。残業は決してさせてくれなかった。

 手取りは、多くても月収9万円。雇用保険料、社会保険料はきっちりと引かれる。

 年収にすると100万円台。それでいて基本的には、正職員とほぼ同じ仕事内容だ。

 しかも、決済をとることができないため、彼女が何の仕事をしても、自分の業績として認められることはない。それらの仕事は、それぞれ依頼してくる正職員の“お手柄”になった。

 「体のいい使い捨てだなって、何度も感じました」

 Yさんの氏名は、職員名簿に載ることはなく、名刺もない。パソコンが配備され、ネットは外部とつながっているものの、メルアドはもらえず、庁内掲示板にアクセスすることもできない。

 ロッカーもないため、コートは自分の椅子にかけて、傘も置くところがなくて自分のデスクに引っかける。

 あるとき、初めての部署に「総務課のYですが…」と電話すると、受話器の向こうから「なんかあ、総務課のYさんとかいう人から電話なんですけど、Yさんて、誰?」などと、話し声が聞こえてきた。

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池上正樹 [ジャーナリスト]

1962年生まれ。大学卒業後、通信社の勤務を経て、フリーに。雑誌やネットメディアなどで、主に「心」や「街」をテーマに執筆。1997年から日本の「ひきこもり」現象を追いかけ始める。東日本大震災後は、被災地に入り、震災と「ひきこもり」の関係を調査。著書は、『あのとき、大川小学校で何が起きたのか』(青志社)、『ドキュメント ひきこもり~「長期化」と「高年齢化」の実態~』(宝島社新書)、『ふたたび、ここから~東日本大震災、石巻の人たちの50日間~』(ポプラ社)、『ダメダメな人生を変えたいM君と生活保護』(ポプラ新書)などがある。最新刊は『石巻市立大川小学校「事故検証委員会」を検証する』(ポプラ社)。池上正樹 個人コラム『僕の細道』はこちら

 


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「会社に行けない」「働けない」――家に引きこもる大人たちが増加し続けている。彼らはなぜ「引きこもり」するようになってしまったのか。理由とそうさせた社会的背景、そして苦悩を追う。

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