名人戦:羽生4連勝で4冠に 新たな「平成伝説」誕生
毎日新聞 2014年05月21日 20時58分(最終更新 05月21日 21時58分)
新たな「平成伝説」の誕生−−。千葉県成田市の成田山新勝寺「奥殿」で20、21日に行われた第72期名人戦七番勝負第4局(毎日新聞社、朝日新聞社主催、大和証券グループ協賛、同市後援、成田山新勝寺、ANAクラウンプラザホテル成田協力)。「昭和」を代表する大山康晴十五世名人対升田幸三実力制第四代名人と並ぶ史上最多の9回目の顔合わせは、挑戦者の羽生善治王位(43)が森内俊之名人(43)を4連勝で降し、4期ぶり通算8期目の返り咲きを果たした。
羽生と森内の名人戦は、幾多の死闘を繰り広げてきた。森内は十八世名人、羽生は十九世名人の資格を獲得。本局で両者の対戦は127局(羽生の70勝57敗)となる。
第69期に森内が羽生から4勝3敗で奪取して以来、羽生がA級順位戦で好成績を上げても、森内にはね返される年が続き、両者の対決に一区切りついた印象もあった。
ところが、今期の羽生はA級順位戦を8勝1敗で勝ち抜き、3期連続の挑戦権を獲得。4期連続となった対決は定評のある森内の受けを、羽生の強烈な攻めが打ち破ったシリーズといえる。
第4局も羽生の攻めが、森内の受けを上回った。当初、羽生の攻めは焦らされた観があり、森内は的確な受けから反撃に転じ、控室も「森内有利」との見方が大勢を占めた。しかし羽生が巧みな攻めを続けて、森内のミスを誘って勝ち切った。
森内は前期七番勝負から約1年間好調を維持して迎えただけに、わずかな誤算が生じて敗戦するパターンが続いた。
1月から3月の王将戦七番勝負で渡辺明王将(30)に敗れた羽生だが、充実の指し回しで名人位に復活。羽生が名人を含む4冠を獲得したのは、2010年3月に王将を失うまで、名人・王座・棋聖と共に保持して以来だ。6月から棋聖戦五番勝負が幕開けし、羽生に森内が挑むことが決まっている。幼年時代から対決してきた両者が、さらなる「平成」の伝説を刻み続けるのは間違いない。【山村英樹】