教科書問題:竹富町単独で採択地区に 地区協から独立
毎日新聞 2014年05月21日 16時05分(最終更新 05月21日 20時01分)
沖縄県竹富町教育委員会が周辺2市町とつくる採択地区協議会の決定と異なる中学公民教科書を使っている問題で、沖縄県教育委員会は21日、定例会を開き、竹富町教委が要望していた採択地区の分離を認め、町単独で採択地区とすることを決めた。文部科学省は「町単独の採択は困難」と難色を示しているが、地区の構成を決める権限は県教委にあり、竹富町教委は来年度から使う教科書について単独採択が可能となる。
小中学校の教科書を巡っては、4月の教科書無償措置法改正で、採択地区の単位が「市郡」から「市町村」となった。これを受け、石垣市、与那国町と八重山採択地区協議会を構成する竹富町教委が分離を県教委に要望。文科省は「八重山地区は一体」とし、採択前に必要な全教科書の調査研究が町だけでは難しいとの見解を示していた。
この日の定例会で、県教委の宮城奈々教育委員長は「16の島々からなる竹富町は、一つの島からなる石垣市、与那国町と異なる特色を持つ。町独自の教科書のニーズはある」と説明。教科書の調査研究は「退職教員や学識経験者も活用するとしており、町単独でも可能」とした。石垣市と与那国町は2市町で採択地区を維持する。
竹富町教委は、保守色が強いとされる育鵬社版の教科書を地区協が選定したことに反発し、2012年度から独自に東京書籍版を使用。文科省は地区協決定の教科書を使うよう定めた無償措置法に違反しているとして今年3月に町教委に是正要求した。町教委は「地方教育行政法は教科書採択権が市町村教委にあると定めている」として従わなかった。
決定について、竹富町教委の慶田盛安三(けだもりあんぞう)教育長は取材に対して「子供たちのため学校ごとに特色のある教育ができるようになる」と歓迎。県教委の諸見里明(もろみざとあきら)教育長は「決定で長い間の混乱が終息に向かってほしい」と語った。
諸見里教育長は22日に文科省を訪れ、是正要求に従わない竹富町に対し国が違法確認訴訟を起こさないよう求める。下村博文文科相は21日の衆院委で「教科書の調査研究をどうするか確認する」と述べた。【佐藤敬一】