佐田の海(左)が寄り切りで栃乃若を破る=両国国技館で(佐藤雄太朗撮影)
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◇夏場所<10日目>
元小結を父に持つ新入幕の佐田の海(27)=境川=が7連勝で勝ち越しを決め、史上初となる親子の新入幕三賞が見えてきた。遠藤(23)=追手風=は5連敗で4勝6敗。横綱白鵬がただ一人全勝を守り、1敗で追う2人は稀勢の里が大関対決で琴奨菊を寄り切り、平幕の勢も9勝目を挙げた。
194センチの栃乃若と左四つで胸が合った。苦しい体勢。だが佐田の海は寄られながらも、持ち味の思い切りのよさで勝機を見出した。右へ回り込むように上手投げ。体勢を逆転させて寄り切った。苦労人の新入幕が10日目勝ち越し。テレビのヒーローインタビューでは「親子三賞をとりたいです」と、全国の相撲ファンに宣言した。
大阪・東大阪市で「相撲茶屋佐田の海」を営む父は、新入幕だった1980年九州場所で初日から9連勝し、11勝4敗。敢闘賞を受賞した。もろ差しからの速攻を得意とし幕内在位45場所。十両だった1988年名古屋場所で引退するまで、序の口以来1124回連続出場した。親子幕内は史上9組目だが、新入幕親子三賞となれば史上初の快挙だ。今場所の活躍を「(父も)喜んでいると思う」とフィギュアスケートの浅田真央似の顔に笑みを浮かべた。
優勝争いでも白鵬に2差。幕尻Vなら00年春場所の貴闘力以来。新入幕Vなら1914年5月場所の両国以来、100年ぶりだ。そんな佐田の海の快進撃には、レスリングで五輪3連覇した吉田沙保里と同じ視力回復法もひと役買っている。
「寝るときに角膜の形を矯正するハードコンタクトレンズをつけているんです。手術はリスクがあるので。普段は0・07ですが、コンタクトを外すと一日中、0・8から1・0くらい見えるようになる」と相撲ともども視界良好だ。
右足首を脱臼骨折したのは、十両に定着していた2011年秋場所だった。はい上がってくるまで幕下に2年。稽古に加え竹ノ塚駅近くの足立区立のスポーツセンターに通い肉体改造した。
「上がる重さが自信になった」。境川親方(元小結両国)からは「プロに努力はないと言われました。当たり前ということ」。けがで120キロまで落ちていた体重は131キロに。十両経験しかなかったが「幕内を目指してやってきた」と目標も高く持ち続けた。
熊本出身だが、小学校6年の12月に愛知県犬山市の東小に転校。熊本市の西原中に転校する中学2年の1月まで、愛知で生活した。来場所は名古屋。番付を上げて懐かしの地へ凱旋(がいせん)する。 (岸本隆)
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