昨年、巨人とのクライマックスシリーズで敗れた後、ロッカールームで丸佳浩、菊池涼介らが号泣したという。今の強い広島には、その悔しさがチーム内に浸透しているように見える。「勝ちたい」という気持ちが伝わってくる力強い投打で、4月は球団新の16勝。中でも投手陣の充実ぶりは、2年連続2桁勝利の大竹寛(巨人)が抜けた穴をまるで感じさせない。
今季限りでのメジャー行きを容認されているエース前田健太は、「田中将大(ヤンキース)並みの働きを置き土産に」というファンの期待に応える仕事ぶり。ゴールデンウィークが終わった5月7日の時点(以下同)で勝ち星は3つながら、防御率はセ・リーグトップの1.54だ。
さらに安定感のあるバリントンに加えて、野村祐輔、篠田純平という若い先発陣は打線の援護で勝ちを拾い、自信をつけてきた。そして何よりも大きいのが、大学出の新人・大瀬良大地、九里亜蓮の2人が先発ローテの一員として予想以上の活躍を見せていることだろう。
「自分が野球で家族を支える」というハングリー精神。
「今のカープはマエケンと大瀬良やけん」
巷の“カープ女子”はそう言うらしい。春のキャンプでは前田健太をさしおいてグッズの売り上げが一番だったという大瀬良は、前評判にたがわぬ投球で既に強力投手陣を牽引する存在になりつつある。5月1日、阪神との首位攻防戦では148球の完投で3勝目を挙げ、防御率は前田、菅野智之(巨人)に次ぐ1.89。開幕から5試合38回を投げ、得点圏に走者を背負った場面では24打数でなんと1度もヒットを打たれていない。
大瀬良の精神力の強さは、九州共立大時代から折り紙つきだ。当時、試合になるとスタンドには故郷の長崎からやってきたダウン症の弟の姿がよく見られた。「兄を誇りに思います」というその弟や両親を喜ばせるため、大瀬良は「大学ナンバーワン」と呼ばれるまでに己を高めてきた。「家族の支えが負けじ魂を支えてきました」と本人もドラフト前に語っていたように、「自分が野球で家族を支える」というハングリー精神を持っている。だから、一球一球に魂が入っている点で、他の新人とはひと味もふた味も違っている気がする。
並ではない新星が飛び出した広島。この勢いは簡単には止まりそうにない。
SCORE CARD バックナンバー
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