片山被告「自分が犯人」スマホ埋めた「自作自演」ばれて降参…PC遠隔操作事件
パソコン(PC)遠隔操作事件で、無実を訴えていた元IT会社社員・片山祐輔被告(32)が20日、一転して一連の事件の犯人であることを認めた。19日午前から突然、行方不明になっていたが、同日夜、主任弁護士に連絡。一連の脅迫メールの「真犯人」が別にいることを装うメールを報道機関などに送り、送信に使ったスマートフォンを河川敷に埋めたことを認めた。東京地裁は同日、保釈を取り消し、東京地検が片山被告を連行、再び身柄を拘束し東京拘置所に勾留した。
19日午後9時半頃、主任弁護人の佐藤博史弁護士の携帯電話に突然、音信不通だった片山被告から着信があった。「先生、すいません。自分が犯人でした。全部自分がやりました」被告の説明によると、電話をかけてきたのは京王高尾線山田駅(東京都八王子市)の、ホーム下の避難スペースから。佐藤弁護士は時折、電車が通り過ぎるごう音が聞こえたという。片山被告は「死ぬ方が楽。電車に飛び込むつもりでホームの下に降りた」と話していたという。
佐藤弁護士は驚きながらも、思いとどまるよう説得。その後、片山被告はホームに上がり、新宿方面の電車に乗って、車内からこれまでだましてきたことをわびながら説明。「もう会えないかも」とつぶやいて電話を切ったという。
片山被告の説明によると、この日、被告が東京都江戸川区の荒川河川敷に何かを埋めるのを尾行中の捜査員に見られ、その後、その場所で「真犯人」からのメールが発信されたスマートフォンが発見されたというニュースをインターネットで知った。「(アカウントのログインに必要な)パスワードは真犯人しか知らず、自作自演のメールだけでなく、すべての遠隔操作も認めざるを得ない。もう逃げられない」と考え、死に場所を探し始めたという。
自転車で都内を回り、公園のトイレで首つりを試みたが失敗。京王線に乗って高尾山へ。缶チューハイを4、5缶飲みながらさまよい、ベルトで首を絞めようとしたが、切れて失敗。自殺のために購入したネクタイでも試みたが、失敗したという。
翌20日早朝、片山被告から再度電話があり、佐藤弁護士は午前7時すぎ、新宿区内のホテルへ迎えに行った。ホテルで会った時には「死にきれませんでした」と話したという。「真犯人」からのメールを送信したことについて「一日も早く裁判を終わらせて、母親を安心させるため」と説明したという。電源を切っていた被告のスマホには、心配する母から「真犯人だったとしても、受け入れる」という内容のメールが来ていたという。また、弁護団にも内緒で、自作自演作戦のためのスマホとパソコンを保有していたことも明かした。
片山被告の母親が供出した1000万円の保釈金は没取となる。足利事件で無罪を勝ち取るなどの実績があり、一貫して片山被告の無罪を確信していた佐藤弁護士は「裏切られたという否定的な感情はない。事実であればそれで弁護するのが私の仕事。片山さんは『新たに国選弁護人を頼む』と言っていたが、私は『あなたを捨てるようなことはしない』と伝えた」と、今後も弁護を続けることを強調した。
片山被告は、佐藤弁護士に繰り返し謝罪する一方で「私はサイコパス(反社会的人格)」と話し「平気でうそがつける」「演技が自然にできちゃうんですよねえ」などと、自分の精神分析をしていたという。佐藤弁護士は「私もだまされたわけだが、これからはどうして片山さんのような人が生まれたのか。現代の病理について考えないといけないと思う」と話し、裁判所に精神鑑定を求めることも検討している。