【コラム】日本にもいた「災害現場の悪魔」

「マニュアルの国」日本も、大災害時は無責任・無能・混乱
過度の自虐は実質的な対策につながらず、恨み返しで終わる恐れ

 セウォル号の乗船者たちを救うことのできた「ゴールデンタイム」は、30分から1時間程度。その時間のほとんどは、セウォル号乗組員の理解できない無責任さのせいで無駄になった。「ゴールデンタイム」後に生じた混乱や雑音は国民の怒りを買ったが、実際に救助できたかどうかとは関係が薄い。「なぜゴールデンタイムを生かせなかったのか」という自責は、100回繰り返してもまだ足りない。しかし、既にゴールデンタイムが過ぎてしまった後の枝葉末節的な問題をめぐってののしり合うのは、自責ではなく自虐だ。

 災害に最もうまく対処している国は日本だと思っていた。災害と共に暮らしている上、責任感・節制・正確さのある国民性も有名だからだ。そこで、朝日新聞の元主筆・船橋洋一氏が書いた『福島原発大災害の真相』(原題『カウントダウン・メルトダウン』)を読んだ。結論から言うと、当初の考えとは異なる教訓を得た。

 2011年3月11日の津波で、福島第一原子力発電所は停電し、原子炉を冷却できなくなった。こういう場合に備えて存在している原子力安全保安院所属の検査員4人は、いざ事態が深刻になるや、現場から逃げ出した。原発を運営する東京電力の社員は、家族に連絡して逃亡した。一番最初に空っぽになったのは社宅だった。政府の緊急事態宣言は一刻を争うというのに、与野党の党首会談のせいで1時間半も遅れた。最も重要な安全保安院の院長は、原子力の門外漢だった。東電の社長は1日遅れでようやく現場に到着した。首相は、1号機水素爆発の場面がテレビで放映されてから1時間後に、「爆発した」という報告を受けた。

 冷却水のポンプを回すのに必要な電源車は、原発ではなく、とんでもない場所に集められた。ようやく、あらためて現場に送ったものの、今度はポンプと接続するケーブルがなかった。電気会社にケーブルがなく、約60台の電源車は無用の存在と化した。貴重な一夜はこうして無駄になった。この2日間で、政府の発表窓口は4回も変わった。

 原子炉から蒸気を抜かなければ爆発の危険があり、蒸気を抜けば放射性物質が漏れる。政府は、蒸気を抜くと決断した。なのに、生死の懸かったその決断が実行に移されるまで、実に10時間もかかった。内閣・保安院・東電の考えがずれていた上、調整もされなかった。原子炉に海水を注入するという応急措置も、突然中断された。野党は「首相が中断させた」と言い、首相は「私も知らない」と言う。誰が、なぜ中断させたのか、今も分かっていない。3号機の使用済み燃料貯蔵プールに対する放水も、作業の順番や手続きをめぐって警察・自衛隊・消防庁間の争いが起こった。原子力安全委員会は、最初から最後まで機能「ゼロ」だった。

楊相勲(ヤン・サンフン)論説委員
前のページ 1 | 2 次のページ
<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c) The Chosun Ilbo & Chosunonline.com>
関連ニュース