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【社説】

集団的自衛権 反対の民意に耳傾けよ

 安倍内閣が目指す「集団的自衛権の行使」容認に反対する意見は依然、賛成よりも多い。それを無視して、解釈改憲を強引に進めることがあってはならない。民意には真摯(しんし)に耳を傾けるべきだ。

 集団的自衛権の行使を容認する方向を示した安倍晋三首相の考えに反対48%、賛成39%。共同通信社が十七、十八両日に実施した全国電話世論調査の結果である。

 首相は全国中継された十五日夕方の記者会見で二枚のパネルを使い、憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使を認める必要性を自ら説明した。反対48%は、首相の発言が新聞やテレビなどで散々報じられた後の数字である。

 同じ時期に毎日新聞が実施した世論調査でも、集団的自衛権の行使に反対が54%、賛成39%と、ほぼ同様の結果となった。

 世論調査には統計上、誤差がつきものだ。しかし、現時点の世論は、集団的自衛権の行使容認に賛成よりも、反対の方が多数と分析するのが妥当であろう。

 首相の記者会見に先立ち、「集団自衛権 71%容認」と報じたメディアもあるが、ほかの調査との乖離(かいり)は否めない。

 世論調査は質問の仕方によって結果が左右される。民意を調査結果に可能な限り正確に反映するためには、細心の注意を払い、質問の文言を工夫すべきである。

 自民、公明両党はきょうから、集団的自衛権の行使容認問題などをめぐる与党協議に入る。

 公明党は、政府の憲法解釈を見直し、集団的自衛権を行使できるようにすることに反対を崩していない。首相が会見で例に挙げた、邦人輸送中の米艦船防護も個別的自衛権で対応が可能との立場だ。

 公明党の支持母体である創価学会も「集団的自衛権を限定的にせよ行使する場合、本来、憲法改正手続きを経るべきだ」と異例のコメントを発表。自民党は「支持母体の言うままということはない」(石破茂幹事長)とけん制する。

 一政党の支持母体の意向が絶対というわけではないが、それを無視していい理屈も見当たらない。

 そもそも小渕内閣以降の自民党政権は、公明党の協力がなければ成り立たない。その支持母体を説得できないような政策に、正当性はない。

 集団的自衛権の行使容認は「専守防衛」という、先の大戦の反省に立った戦後日本の安全保障政策を根本から転換する。民意を顧みず、一内閣の意向で強行することがあってはならない。

 

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