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【社説】

集団的自衛権 公明の真価が問われる

 「平和」の旗を掲げる公明党は「集団的自衛権の行使」容認に慎重姿勢を貫くのか、容認を迫る安倍晋三首相率いる自民党にすり寄るのか。きのう始まった与党協議は党の真価が問われる正念場だ。

 自民、公明両党幹事長らによる安全保障法制整備に関する与党協議会の初会合では、武力攻撃に至らない領域侵害(グレーゾーン事態)への対処▽国連平和維持活動(PKO)での武器使用▽集団的自衛権に基づく武力行使−の順に検討することで合意したという。

 集団的自衛権の行使容認を、年末に予定する「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」の再改定に間に合わせたいのだろう。自民党は、一括して閣議決定することを主張し、公明党は「私たちはそういう認識でない」と突っぱねた。

 ここは公明党側に理がある。

 グレーゾーン事態とは漁民を装った武装集団の離島への上陸などを指す。警察や海上保安庁による「警察権」での対処は困難だが、外国政府による武力攻撃とは認定できず、自衛隊の「自衛権」発動には至らない隙間の事態だ。

 中国の海洋進出に伴い、現実性はより高いのかもしれない。だとしたら、一括して閣議決定するのではなく、集団的自衛権と切り離して先行処理するのが筋だろう。

 公明党が「検討の余地がある」とするグレーゾーン事態への対処と抱き合わせることで、行使容認も認めさせようとする自民党の手法は、狡猾(こうかつ)に過ぎる。

 公明党は結党五年後の一九六九年の党大会で「すべての国際紛争は、絶対に武力によらず外交手段で解決すべきだ」との「絶対平和主義」を掲げ、日米安全保障条約の段階的解消と完全中立を主張。自衛隊も認めていなかった。

 その後、安保条約と自衛隊の容認に転換。九九年に自民党と連立を組んでからは、テロ対策でインド洋に、復興支援でイラクに、自衛隊を派遣する法律に賛成した。

 公明党の平和主義は“変節”を重ねてきたとはいえ、集団的自衛権の行使容認は、戦後日本の国是である「専守防衛」政策の抜本的転換だ。憲法改正を経ない「解釈改憲」は立憲主義を否定する。党を挙げて阻止すべきだ。

 今年は結党五十年の節目の年である。自らの政策実現のためにも政権与党の座にあり続けたいのだろう。そのために「平和主義」という日本の国是をないがしろにすることなど、あってはならない。

 

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