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俺の愛した異世界で 作者:八乃木 忍

出会いは必然ではなく、偶然である・前編

 目を覚ますと、空が見えた。
 青くて、雲の少ない空だ。
 吸い込まれてしまいそうな程に広く、綺麗な空。

 背中全体が何かに触れている感触で、自分が寝転がっている事に気づく。
 体を起こし、辺りを見回して驚愕した。
 視界いっぱいに広がるのは、草原。
 どこまで続いているのかも分からない、障害物も一切ない、ただの平原だった。

「なんだ、これ」

 ここで初めて声を発して、気づいた。
 俺の声じゃない。
 自分のよりも、もっと幼い声だ。

「あーあー……なんで、なんだ、これ」

 手のひらを見てみると、予想通り、小さかった。
 立ち上がって自分の体を隅々まで確認するが、どれも幼いものだ。
 そして、なぜだか俺は、裸だった。
 アレも小さくなっている。

 幼稚園、保育園児ぐらいの体の大きさだ。
 アレが付いているからには男児だろう。
 状況が飲み込めないまま、もう一度体を倒した。

 整理しよう。
 俺はさっきまで、一人暮らしのアパートでぐーすか鼾をかきながら寝ていたはずだ。
 その前は、同僚と居酒屋で飲み会をしたぐらいしかない。
 起きる前の俺は、社会人だ。
 成人男性の平均身長ぐらいの背だった俺が、幼稚園児並に小さくなっている。

「はぁ……」

 ついたため息も、いつものおっさんっぽい物ではなかった。
 一体、何がどうなっているんだ。
 もしかして寝ている間に心臓麻痺でもくらっておっ死んじまったのか?
 すると、ここは天国みたいな場所だろうか。

「やぁ、少年」
「お!?」

 突然、後ろから声をかけられ、肩に手をぽんと乗せられた。
 反射的に飛び退いたが、バランスを崩し転倒してしまう。
 俺に声をかけたのは、背の高い男だった。

 おかしい。
 さっき、辺りを見渡した時は誰もいなかったはずだ。
 だが、今俺の目の前に人間が立っている。

「お困りの様子だね」

 男は眉根を寄せて言った。
 思わず間抜けな声が出てしまったが、どうでもいい。
 勘だが、こいつは何かを知っている。

「困っているのは確かだが、何か知っているのか?」
「まぁ、少しだけね」
「俺に今何が起こっているのか説明はできるか」
「さぁ、そこまでは」

 胡散臭い男がいきなり出てきた。
 早くこいつから逃げた方がいい。

「ここはね、君からすれば異世界ってやつだよ」

 逃げようと、踵を返したところで男が唐突に話し始めた。

「君は突然、ここに呼び出された。理由なんて知らないし、方法も知らない。でも、君に言うことがあるとすれば、今この場所には平原しかないから、逃げることはできないって事かな。奥へ行っても、ここに戻ってくるよ」

 未だ混乱する俺を尻目に、男はペラペラと言葉を発する。
 異世界なんて、いきなり言われても意味がわからない。
 一昨日やったエロゲーに出てきた様な場所か? サキュバスとかのいる。
 しかし、奥へ行ってもここに戻るなんて、それこそファンタジーだ。
 それが本当に起こったというのであれば、こいつから本格的に話を聞こう。

 俺は、小さな脚を動かした。
 何もない平原を進んでいく。
 一歩一歩の感触が気持ち良いと感じる柔らかい草は、今まで踏んだ事が無かった。



 歩き続けた結果、男の言うとおり、来た場所に戻ってきた。
 男は退屈そうに座っていたが、俺の姿を見つけると、立ち上がって近づいてくる。
 俺は無意識に身構えてしまう。

「やぁ、どうだった? ここには僕達と、平原と、空意外何もないんだ」
「らしいな」
「それじゃ、自己紹介をしよう。僕の名前はアダム、よろしくね」

 アダム、見た目どおり、異国人の名前だ。

「俺は――」

 名前を名乗ろうとした時、舌が痙攣した。
 それだけでなく、声も出なくなった。
 何故だ? さっきまで普通に喋れていたのに。

「ああ、ごめんね」

 すると、思い出したようにアダムが言う。

「理由はわからないんだけど、ここに来た人は自分の名前を名乗れないんだよ」

 ここに来た人? つまり俺以前にもここに来た人がいるという事か?
 そう問い詰めようとしたが、舌が痙攣して未だに喋れないでいる。

「前の来客からは百年ぐらい経っているから忘れちゃってたよ」

 だが、聞くまでもなく男は答えを出した。
 俺は喋れない間に何かできることはないか考えるが、平原しかないこの空間では何も出来ない。
 今はこの男の話を聞くのが得策か。
 とりあえず俺は、喋れるようになるまで、座って待つことにした。



「あー、あー、テステス」

 待って数分で声を出せるようになった。
 男は俺の声に気付いて、閉じそうになっていた目をぱちりと開けた。

「よし、それじゃ、君は多分僕に質問があるから答えてあげるとしよう」
「たくさんありすぎて困っているぐらいだ」
「出来る限り答えるよ」

 思えばこの男、さっきから笑顔を崩さない。
 ずっとにこにこしているのだ。
 まるでその表情が張り付いて離れなくなってしまった様に。
 が、今はそれを置いておいて……聞かなくてはならない事が山ほどある。

「何故俺は名を名乗れない」
「過去は捨てろという神からのお告げなんじゃない?」

 なんじゃない? じゃねえよ。
 自分の名前を名乗れないとなると、色々困る。
 新しい名前を作るという方法もあるが、いい名前が思い浮かばない。
 ゲームに出てきたキャラの名前を使わせていただこうか。
 ……ああ、そうだ、それよりも重要な事があった。

「お前は誰だ」
「僕かい? 僕は、そうだな、神と天使の間ぐらいにいる奴、かな? 神様補佐みたいな」
「それじゃあ、ここは天界か何かなのか?」
「違うよ。異世界と君の世界をつないでいる空間だ。でも、この空間から次の世界へ行くには特別な力を使わないといけないから、どれだけ歩いてもぐるぐる廻るだけなんだ」

 なるほど、つまり俺はまだ異世界と俺の世界との間にいるわけか。

「なら、ここから俺の世界へは帰れるのか?」
「残念ながら、一方通行だよ」
「俺は異世界へ行く以外に方法がないんだな?」
「いや、ここで僕が消してあげてもいいけど」
「遠慮しておく」

 世界から一步飛び出してしまえば最後、次の世界へ移るしかないという事か。
 ここで消えるのは、論外だ。
 俺はまだまだ生きてみたい。
 学生の頃は毎日死にたくて仕方なかったが、今は生きたいと願っている。
 それに、殺されるならヤンデレの妹って決めてるんだ。
 妹なんていないけど。

「それじゃ、次だ。俺はなんで小さくなっている?」
「分からない。でも、身長や年齢は肝の大きさによって定められるんだ」
「……」

 肝の大きさで体のサイズを決められてしまったのか、俺は。
 つまり俺の肝っ玉は、保育園児並ってことか。
 薄々気づいていたことだが、ショックがあるな。

「ま、まあ、それは分かった。それで、俺がこれから行く異世界ってのはなんだ、剣と魔法の世界か?」
「よく知っているね、そうだとも。剣術、魔術、錬金術とか、そういうので溢れている世界さ」
「俺はそれを使えるのか?」
「使えるとも」

 それを聞いて、なんだかワクワクしてきた。
 年甲斐もなく興奮している。
 剣術、魔術、錬金術、小さい頃から夢見たものを使えるというのだ、仕方ない。

 しかも、来世は異世界か。
 素晴らしいじゃないか。
 ガキの頃は親父に殴られる毎日、大人になっても上司に扱き使われる毎日だった。
 来世ってことは、新しい人生を歩んでいけるって事だ。
 しかも、前世の記憶つきで。
 だからこそ、俺は決心する。
 社畜の様な生活は送らない。
 俺は、生きたいように生きることにする。

「あ、そうだ!」

 アダムは突然声を上げ、満面の笑みで言う。

「君にはプレゼントをあげよう」
「プレゼント?」
「魔力と身体能力をあげるよ」
「魔力っていうと、魔術を使うために消費するあれか」
「説明ありがとう。そうだけど、君の今の体じゃあ、魔術を二回使用したぐらいでバテるね。君は百年ぶりの来客だから、特別だよ」
「技術はくれないんだな」
「それは自分の体で覚えないと、どうしようもないでしょ?」

 こうして、俺はプレゼントを貰った。
 並みの魔術師よりも高い魔力をくれたと言っていたな。
 子供でそんな大量な魔力を持ってパンクしないのか、と聞いてみたが、魔力の総量は無限に増えるらしい。

 そして身体能力も得た。
 だが、これには限界があるそうで、成人男性に少し劣るぐらいの能力を貰った。
 この体でそれだけの能力を得られるのであれば充分だろう。

「それでアダム、言語とかも違うんだろ?」
「当たり前だよ。しばらくここに居させてあげるから、僕が教えてあげる」

 アダムという男、意外と面倒見が良い奴なのか、それとも久しぶりの来客者だから張り切っているだけなのか。
 どちらにせよ、言葉を教えてくれるのであればありがたい。
 知らぬ土地に知らぬ言葉、知らぬ文化に知らぬ人、そんな状況に陥った時、俺はどうなるやら。
 ちなみに、文化や土地は自分の目で確かめろと言われた。

 あとは、自分の名前を考えるだけだ。
 名乗って恥ずかしくない名前にしたい。
 異世界だし、相手は「厨二乙」とか思わないと思うが、こっちが恥ずかしくては意味が無い。
 自分では思いつかないので、アダムに聞いてみる。

「そうだね、シャルルでいいんじゃないかな」

 軽いノリで提案された名前だが、いいだろう。
 女っぽい感じがしなくもないが、漂うイケメン臭が気に入った。
 俺は今日からシャルルだ。

「姓はどうすればいい?」
「お勧めを授けよう」

 こうして、俺の名前はシャルル・クレアシオン・リテレールとなった。



――――――



 その後すぐに、俺はアダムから言語を習う事になる。
 全部で四言語だそうだ。
 一体どれだけかかるのやら。
 気が遠くなりそうだ。

 そう思っていたが、思ったよりもアダムの教えが上手く、三言語は簡単に覚えられた。
 本の音読と、覚えた単語をメモした紙を見ながら聞くアダムの読み聞かせがかなり効いたようだ。
 ここにいると、時間の流れが分からないのでどれくらい掛かったかはわからないが。
 時間の流れも分からなければ、腹も減らないのだ。
 まあ、とにかく、覚えたのは、イルマ語とベラート語だ。
 イルマ語は人間とその他、ベラート語は獣人が使うらしい。

 獣人と聞いて思い出したのが、俺がハマっていたRPGだ。
 ヒロインが獣人族で、可愛らしいネコ耳と尻尾があったなあ。
 次の世界にもそういうのがいるのだろうか。
 期待が膨らんで仕方がない。

 それはいいとして、残りの二言語は発音がかなりハードだ。
 ディガル語とシスカ語だ。
 文字も特徴的で覚えるのには時間がかかる。
 ちなみに、本や紙と鉛筆はアダムが手から突然出したものだ。
 神様補佐は大体なんでもできる。



――――――



 どれくらい経ったかは分からないが、結構な時間をここで過ごしたと思う。
 言語もバッチリ覚えた。
 後は、旅立つだけ。
 なんだか、名残惜しい気もする。

 アダムは軽薄い態度で話してくるが、面倒見は良かった。
 言語も教えてくれたし、疲れた時は話し相手になってくれた。
 話はほとんどが今までここに来た人の事だった。

 話によると、皆が皆混乱してたらしく、『異世界? ワッツ?』となっていた奴が多数だったとか。
 中には俺みたいに、次の世界で困らない為の準備をしていく奴も居たらしい。
 中には逆に、ここで消えたいと願う者もいたんだと。
 この空間にいる奴はアダムの意志で簡単に消すことができるのだそうだ。
『流石は神様補佐だな』と褒めたが、アダムの意志でこの空間に呼び出すことはできないらしい。

「そういえば、お前は何で俺が百年ぶりってわかったんだ? ここには時間の感覚なんてあまりないんじゃないのか?」
「僕は感じるんだよ」
「そうか。それじゃ、俺が来てどれくらい経った?」
「百五十日ぐらいかな」
「ぐらいって、曖昧だな」

 一ヶ月以上もここにいた感覚はないんだが、そんなにいたのか。
 まあ、時間のことはあんまり気にしなくてもいいようだ。
 ここでは歳を取らないらしい。
 そういえば、俺の体は何歳なんだろうか。

「なぁ、アダム。俺の年齢、わかるか?」
「五歳だね」
「俺の肝は五歳同等か」

 俺が言うと、アダムが肩に手を乗せてきた。
 気にすんな、と言わんばかりの顔だ。
 まあ、俺は肝は小さいけど、心は広い。
 これぐらいは気にしないのだ。
 気にしないのだ。

 しかし、そうか、五歳か。
 五歳の時、俺は何をしていたっけ。
 母さんっ子だったからな、ずっとベタベタして迷惑かけていたかもしれない。
 母さんはいつも笑顔で俺のことを撫でてくれていた。
 母さんはいつも優しい声で話をしてくれた。
 男らしいのもいいが、そんな風になれたらと思わなくもないな。

 そういえば、親父は一人でもちゃんとやっているだろうか。
 仕事はちゃんと見つけただろうか、お酒はもうやめただろうか。
 煙草はもうやめただろうか、もう暴力はあんまり振るっていないのだろうか。
 思えば、俺の世界にはまだ未練がある。
 未練タラタラだ。

 だが、ここはケジメをつけなくてはならない。
 戻れないし。

 そして選択肢は二つ。
 新しい人生か、ここで散るか。

 もちろん新しい人生に決まっている。
 その為にアダムに世話になったのだから。
 それに、俺は異世界を見て廻りたい。
 きっと俺の世界にはなかった物があるはずだ。
 うぅむ、またワクワクしてきた。

「アダム、俺はそろそろ行こうと思う」
「……そうかい。あんまり変な人に絡んじゃダメだよ」
「俺にそんな度胸はないよ。見てみろよ、この体のサイズを」
「ははっ、そうだったね。それじゃ、気をつけるんだよ。あとプレゼントがもう一つある」
「何だ?」
「秘密」
「そうかい」

 そして、俺とアダムは固い握手を交わした。
 アダムの温かくて優しい手が、俺の不安を拭う。
 俺は自然と笑顔になっていたと思う。

「じゃあな」
「じゃあね」

 別れを告げると、目の前が真っ白になる。
 何も見えない。
 だが、手に残った温かさはまだ感じる。
 視界が白から黒に変わった。
 俺は、手の温もりを抱きながら、意識を手放した。



――――――



 夢。
 温かい腕に抱かれていて、心地が良い。

「こうされるのが好きだったわよね?」

 懐かしい声、優しい声。
 小さいころ、毎日のように聞いた声。
 大きくなって、また聞きたいと毎日願ったあの声。
 それが、俺の耳に届いている。

 うん、俺、こうされるのが好きだった。

 いい匂いがする。
 俺に優しい声をかける人を俺は抱きしめた。
 強く、強く、抱きしめた。
 愛おしくて、嬉しくてたまらないはずなのに、すごく悲しくて。
 嬉しさと悲しさが入り混じっていて……でも、はっきりわかる。
 ずっとこうしていたい。

 だが、そんな願いは聞いてくれなかった。
 俺を包む白い世界は、暗くなっていく。
 どんどん、遠ざかっていく。

「待って、母さん!」

 必死に手を伸ばしても届かない。
 母さんはずっと、遠くにいる。
 薄れる意識の中、母さんは言った。

「また会えるから」

 それを聞いて、俺は安心してしまった。



――――――



「……夢だったのか」

 目を覚ました。
 胸の奥がまだ温かい。手も、温かい。

「ははっ、母さん、元気そうだった」

 涙をこらえながら、一人で呟く。
 あれはアダムからのもう一つの贈り物だろうか。
 だとしたら、「余計なことを!」と一喝してやりたいところだ。

「あ、そういえ――」

 異世界に来たことを思い出し、顔を上げ、俺は絶句した。
 俺は道のど真ん中に居た。
 道の両端にはびっしりと並んだ露店。
 俺の横を通り過ぎる、多くの人。
 羽が生えていたり、犬や猫の耳がついていたりと、色んな種類の人がいた。

 だが、無音だ。
 誰もが口を動かして何かを話しているのだが、何も聞こえない。
 五感が機能するまでタイムラグがあるのだろうか。
 とりあえず、俺はこの道を進んでいく事にした。

 石造りの道、石造りの家、並んだ露店、行き交う人々。
 ゲームの平面では見れなかった物が、立体となって俺の視界に広がっている。
 恐くて仕方がなかった。
 違う世界、違う言葉、違う文化。
 恐いに決まっている。
 だが、それ以上に、興奮していた。
 ゲームで見た種族、ゲームで見た武器、ゲームで見た風景。
 自然と口元が緩む。

 だが、ここで俺は周りからの視線に気づいた。
 道行く人がちらりと見るだけだが、変なものを見るような視線に俺は気づいた。
 顔に何かついてるか?
 そう思って、顔をいじっても何もない。
 なら、他のパーツに。
 そう思って、下を向いた。
 俺は、裸だった。
 何もついていなかったのだ。
 俺のムスコ以外は。

 俺はパニックになり、急いで路地裏に逃げ込んだ。
 体を隠せる、マント代わりになる物は何かないかと近くの木箱を探る。
 宝箱、木箱、ツボ漁りはRPGの定番だからな。
 ていうか、初期装備全裸って……アダムよ、何故服をくれなかった。

 俺は木箱を片っ端から確認した。
 中には食糧と金銭しかなかった。
 だが、最後の一箱がある。
 この中にあればいいのだが。
 そう思い、木箱に手を伸ばした時だった。

「てめぇガキィ!」

 声のした方を向くと、俺に向かって振り下ろされる剣を見た。
 カトラスの様な、後ろに反った剣だ。
 外套を身につけ、口元はマフラーの様なもので隠れている。

 完全に盗賊じゃないですかぁ……。
 異世界に召喚されて間もなく、殺されてしまうのか。
 もったいない。俺のクソみたいな人生を捨てて、やり直せると思ったのに。
 次こそは楽しい人生を送れると思ったのに。
 惜しんではみるが、不思議と緊張も恐怖もなかった。
 俺は、そっと目を閉じた。
御意見、御感想、駄目出し、評価、何でも何時でも歓迎しております。

では、ショートストーリーをどうぞ。


「なぁ、アダム」
「なんだい?」
「イヴって知ってるか?」
「君こそ、イヴを知っていたんだね」
「アダムとイヴって、俺らの世界でよくある話しなんだ」
「へぇ、僕とイヴがそんなに有名だったなんて、驚きだ」
「イヴは今どこにいるんだ?」
「また違うところさ。彼女は僕とは違う役目を担っているんだ」
「離れ離れは寂しいか?」
「いいや、空間を越えて会いに行けるからね」
「どのくらいのペースで会ってるんだ?」
「十四日に一回ぐらいかな」
「結構少ないな」
「うん、そのぐらいの方が良いんだ」
「ん? 何でだ?」
「寂しがったイヴは、激しいんだ」
「……そうか」
「僕の身が持たなくなるほどに、激しい。まぁ、僕の身は壊れないけど」
「……そっか」
「いやぁ――」
「もういい」
「…………どうして涙目なんだい?」
「うるせぇ」
+注意+
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