PC遠隔操作:誤認逮捕の4警察本部…執念の尾行2カ月半

毎日新聞 2014年05月21日 07時24分(最終更新 05月21日 08時06分)

報道陣に囲まれながら片山祐輔被告を乗せ弁護士事務所から出る車=東京都港区で2014年5月20日午前10時54分、竹内紀臣撮影
報道陣に囲まれながら片山祐輔被告を乗せ弁護士事務所から出る車=東京都港区で2014年5月20日午前10時54分、竹内紀臣撮影

 パソコン(PC)の遠隔操作事件で、無罪を主張し続けた片山祐輔被告(32)に一連の事件への関与を認めさせたのは、誤認逮捕という苦渋を味わった警視庁、大阪、神奈川、三重の4警察本部の合同捜査本部による執念ともいえる追跡劇だった。

 15日夕、東京都江戸川区の荒川河川敷。合同捜査本部の捜査員の目は、不審な動きをする片山被告に注がれていた。地面に何かを埋めるような仕草。後で掘り返す時のためか、歩幅を測るようにして埋めた場所を確認している。捜査員らは、この一部始終をビデオに収めていた。

 「まさか警察官に見張られているとは思わなかった」。片山被告は、真犯人を装うメールを送ったスマートフォンを埋める姿を目撃されていたことを知り、佐藤博史弁護士にそう漏らしたという。

 実は、合同捜査本部は複数の捜査員で片山被告が保釈された今年3月5日から行動確認を続けていた。警視庁から投入されたのは、捜査1課で誘拐などの捜査に当たる精鋭の「特殊班」の捜査員。相手に感づかれずに尾行するプロだった。

 翌16日午前11時37分。片山被告が東京地裁の公判に出廷中、「真犯人」からのメールが報道関係者らに一斉に届いた。前日の不審な行動との関連にぴんときた捜査員が同日午後3時ごろ、河川敷の現場を掘り返すと、ポリ袋に入ったスマホが見つかった。令状を取った上で確認すると、真犯人メールと同じ内容のメールが同時刻に送信されていた。スマホの付着物からは片山被告のDNA型も検出。「真犯人」とつながった瞬間だった。

 一時は大きく揺らいだ威信。ある警察幹部は「被告は公判のたびにタイマー機能で真犯人メールを送るつもりだったのでは。これで一区切りだ」と話した。【松本惇、山崎征克、神保圭作】

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