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【秘密保護法 言わねばならないこと】

(22)知らぬ間に戦争 怖い 弁護士 藤原 真由美氏

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 旅先での見聞を話しただけで学生と米国人教師夫妻が軍機保護法違反で逮捕された一九四一年の「宮沢・レーン事件」を調査した。裁判は非公開で、一審の判決文は敗戦時に焼却処分され、なぜ逮捕されたのか親族すら知らなかった。

 特定秘密保護法と裁判の公開原則は根本的に矛盾する。軍機保護法と同じく、検察官は特定秘密の内容を一般に明らかにしない。このため弁護人は被告が特定秘密を探知・収集したのか、そもそも本当に刑罰で保護しなければならない秘密なのか、公開の場で争うことができない。

 政府の見解では、逮捕状や捜索差し押さえなどの令状請求は、特定秘密の中身を裁判官に知らせなくても可能だ。これでは、公安警察の都合に応じて家宅捜索・逮捕して必要な情報を持って行ける。容疑者が不起訴になって裁判にならなくても、公務員ならば内規に従って懲戒できるから、社会から排除される。

 もうひとつの問題は、軍事秘密が特定秘密に指定されていくと、憲法九条に規定されている非武装という理想からどんどん外れていく。安倍晋三首相は集団的自衛権を行使できるように憲法解釈を変更しようとしている。行使を認めると、米軍と共同で作戦行動をやるという理由にかこつけて、自衛隊の動きが特定秘密にされるのではないか。

 見えないうちに戦争が始まってしまう危険性。今の政府の動きを見ると、そこが一番心配で怖い。憲法の前文でうたう「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起きることのないようにする」ことができなくなってしまう。

 <ふじわら・まゆみ> 1954年生まれ。日本弁護士連合会憲法委員会事務局長。男女共同参画の実現に取り組む。

 

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