PC遠隔操作事件:「死にきれず」連絡 弁護士が説得
毎日新聞 2014年05月20日 12時10分(最終更新 05月20日 18時06分)
◇片山被告「私が犯人」 メール自作自演
「私が犯人です」−−。パソコン(PC)遠隔操作事件で、逮捕時から公判に至るまで一貫して無罪を主張してきた片山祐輔被告(32)が弁護士に、一連の事件への関与を全て認めた。誤認逮捕という警察の失態からスタートした事件は、自作自演の「真犯人メール」で追い詰められた被告自身が関与を告白するという異例の展開をみせた。
片山被告は20日午前10時50分過ぎ、東京都港区の弁護士事務所前で、東京地検の係官らに付き添われながらワゴン車に乗り込んだ。しまの半袖ポロシャツに紺色のジーンズ姿。黒色のバッグを胸に抱えていた。100人を超える報道陣の問いかけには応じなかったが、終始笑顔だった。
午前11時半ごろから、都内の司法記者クラブで記者会見した佐藤博史弁護士によると、片山被告は前夜の19日午後9時半ごろに電話をかけてきて「申し訳ありませんが、私が犯人です。死のうと思い、酒を飲んで高尾山を徘徊(はいかい)したが、死にきれなかった。駅の線路に降りて電車が来たら飛び込もうと思ったが、それもできなかった」と話したという。
関与を認めた事件については「やってみたら、簡単に誤認逮捕をさせることができた。4人が誤認逮捕されて、不謹慎だが、『やった』という気持ちになった。私は平気でうそをつけてしまう」などと説明したという。
また、16日に「真犯人」を名乗るメールを送った理由については「有罪判決が出たらメールを送ろうと思っていたが、母親が心配しているので裁判を早く終わらせるために前倒しした。真犯人が出てくれば無罪になると思った。警察官に見張られているとは思わず、ばれないと思っていた」と話しているという。誤認逮捕された4人に対しては「申し訳ない」と謝罪の意思を示したという。
佐藤弁護士は「急な展開だが、虚偽を言い続けるべきではなく結果的に良かった。保釈取り消しはやむを得ない。今後の裁判では片山さんに心境をまとまった形で話してもらいたい」と語った。
誤認逮捕するという失態を犯し、長官が謝罪に追い込まれた警察庁。事件を機にサイバー捜査態勢の強化を全国で進め、片山被告逮捕につなげたが、被告が真犯人は自分だと弁護士に名乗り出たことについて、幹部は「特段の感想はない。元々有罪になると思っていた事件」などと冷静に受け止めた。