平成25年12月、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録された「和食」をめぐり、文化庁は、無形文化遺産をアピールした上での和食の商業化をいっさい認めない方針を決めた。民間から「無形文化遺産に登録された和食」とアピールして特定の料理や食材を販売することは可能かどうかの問い合わせが相次ぎ、過度な商業化が続けば最悪の場合、登録取り消しもあり得ると同庁が判断したためだ。さらに、こうした措置の背景には韓国の「キムチ」に出された“警告”から学んだ経験も生かされているという。
同庁などによると、和食が無形文化遺産に登録されて以降、例えば、おせち料理に使われる具材や、和食の定番料理などを指定するなどして「無形文化遺産に登録された和食」として販売していいかといった民間企業からの問い合わせが相次いでいるという。
これを受け、同庁は「例外を認めると商業化への歯止めがかからなくなる」として、商業化を一切認めない見解をまとめ、企業からの問い合わせに対応することに決めた。特定の商品だけでなく、たとえば和食文化を楽しむツアーなどを無形文化遺産として宣伝することも認めない。
問い合わせ企業に対しては、「商業化を理由に無形文化遺産登録が取り消されれば企業イメージのマイナスにもつながる」などと硬軟おりまぜて説得しているといい、これまでに問い合わせのあった企業による商業化のケースはないという。
過度な商業化に対する牽制(けんせい)は文化庁だけでなく農林水産省も行っている。
登録前の25年6月に同省食ビジョン推進室の担当者は、民間企業で行われた公開講座で「もうかる日本食を広めるために(和食の登録に)挑戦しているわけではない。これを契機に商売がもうかる、販売促進に利用しようと思っている事業者は大勢いるだろうが、われわれの趣旨は違う」と明言、商業化をもくろむ業界にくぎを刺した。
copyright (c) 2014 Sankei Digital All rights reserved.
Facebookコメント