Financial Times

近隣諸国を方向付ける力を失ったEU欧州の理想主義者がアラブの春を歓迎した時代は遠い過去

2014.05.21(水)  Financial Times

(2014年5月20日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

EUのCO2排出権取引サイトにフィッシング攻撃

EUの議会組織である欧州議会の選挙は22~25日に実施されるが、大多数の加盟国の投票日は25日の日曜日に集中する〔AFPBB News

米国には「スーパーチューズデー*1」がある。欧州は間もなく「スーパーサンデー」を迎える。欧州連合(EU)加盟28カ国で相次ぎ欧州議会選挙が行われ、5月25日の日曜日に終わるからだ。また、同じ日曜日にはウクライナで大統領選挙が実施され、その翌日にはエジプトで大統領選挙の投票が行われる。

 そして同じ週の5月29日にはロシア、ベラルーシ、カザフスタンの3国による調印式が行われ、ウラジーミル・プーチン大統領肝いりのプロジェクト――ユーラシア連合なるものの創設――に正式なゴーサインが出される見通しだ。

 このように一斉に行われる選挙や外交活動の間には、何らかの関係があるのだろうか? 答えはイエスだ。なぜなら、不安定で比較的貧しい近隣諸国を安定と繁栄に導く標識としてEUが機能できるか否かについて、この5月末までにいろいろなことが分かってくる可能性が高いからだ。

かつては近隣諸国を安定と繁栄に導く標識だったEU

 EUは、平和、繁栄、優れた政府といったものを近隣諸国に広めるにあたって極めて重要な役割を担いたいと考えている。そうした取り組みのうち、これまでで最も成功したのは「ビッグバン」と称される2004年のEU拡大だった。これによりEUは加盟国数を15から25に増やし、旧ソ連ブロックの国々の大半を飲み込んだ。

 新たに加盟した国々は、ブリュッセルのきらめく門をくぐるために、厳格な政治経済改革プログラムをあらかじめ受け入れていた。このEU拡大は、欧州の理想が持つ力を誇示する出来事だった。

 当時は、EU拡大が将来にわたって強い威力を発揮し続けることも十分にあり得るように思われた。バルカン半島を経てトルコやウクライナにも広がり、いずれは北アフリカやロシアにまで及ぶのではとも思われた。

 実際にEUに加盟する公算はまだ小さい国もあるが、たとえそうだとしても、政治・経済改革の実行と引き換えに市場へのアクセスや援助、技術支援などを提供することにより近隣諸国の方向付けをしたい、と欧州は考えていた。実際、それは妥当な取引であるように思われた。

 だが、残念ながら、欧州のスーパーサンデーでは、現状はこの理想主義的なビジョンにはほど遠いことが明らかになるだろう。

*1=大統領選挙の候補者を決めるためにあちこちの州で一斉に予備選挙や党員集会が開催される火曜日のこと

 欧州議会選挙では、極右政党と極左政党が合わせて最大…
Premium Information
楽天SocialNewsに投稿!
このエントリーをはてなブックマークに追加

バックナンバー

Comment

アクセスランキング
プライバシーマーク

当社は、2010年1月に日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)より、個人情報について適切な取り扱いがおこなわれている企業に与えられる「プライバシーマーク」を取得いたしました。

Back To Top