The Economist

日本の防衛と安全保障:集団的不安の解消へ

2014.05.21(水)  The Economist

(英エコノミスト誌 2014年5月17日号)

日本の首相がこの国を平和主義から脱却させ始めるのは正しい。

集団的自衛権の検討加速へ、安倍首相が表明

5月15日、首相官邸で記者会見し、集団的自衛権の行使容認を視野に、憲法解釈の変更に向けた検討を加速する方針を表明する安倍晋三首相〔AFPBB News

安倍晋三首相が日本の戦争犯罪者が他の戦没者とともに祀られている神社を無分別に参拝したことを考えれば、日本の近隣諸国が、長年続いてきた日本の平和主義の端っこをいじる安倍氏の計画を大きな猜疑心を抱いて見ていることは意外ではない。

 しかし、日本が同盟国を援護することを初めて容認する、先日発表された安倍氏の提案は、日本を正しい方向へ動かすものだ。

 精力的な外交が伴う限りは、この案はアジア地域を不安定にするのではなく、より安全にするはずだ。

時代は変わる

 1945年の敗戦以降、日本は模範的な地球市民であり、東アジア地域の平和と繁栄に貢献してきた。米国の占領軍が作成した平和主義の戦後憲法は一定の功を認められるに違いない。本質的なところでは、憲法9条で、日本は国際紛争を解決する手段としての戦争を永久に放棄している。

 この誓いは、日本の軍国主義が二度とアジアに忍び寄ることはないと近隣諸国を安心させるのに役立ち、おかげで米国が西太平洋を支配下に置くことができた。次に米国による安全の保証のおかげで、軍服を脱ぎ捨ててサラリーマンのスーツに着替えた日本人は繁栄に至る道のりをひた走ることができた。多くの日本人にとって、憲法は誇りの源というだけではない。それは国の宝なのだ。

 しかし、危険は高まっており、日本の取り決めは時代遅れに見えるようになった。脅威は、技術者が核爆弾を開発し、現在はそれを搭載するためのミサイル技術を研究している北朝鮮からも来る。そして中国は怒りを募らせ、軍事力を増強し、東シナ海に浮かぶ島嶼に対する日本の長期的支配に挑んでいる。

 日本国内では、ほかのことに気を取られ、対中紛争の回避に熱心な超大国・米国による安全の保証の確実性について疑念が渦巻いている。疑念は互いに共通したものだ。米国の一部のストラテジストは、米国の安全保障に日本がタダ乗りしていることにウンザリしている。

 現行の憲法解釈では、日本はカリフォルニアに向かって日本上空を飛んでいく北朝鮮のミサイルを撃ち落とすことができない。もし朝鮮半島で戦争が勃発したとしても、日本は戦闘に向かう米国機に燃料を補給することすらできない。米国のストラテジストらは日本に、日米同盟の安全保障にもっと大きな役割を果たしてほしいと思っている。

 近年のどの日本国首相よりも、安倍氏はこれらすべてを…
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