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南京大虐殺否定「翻訳者が無断加筆」 著者ら否定

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《注意報2》2014/5/18 07:00

英国人記者の著書に盛り込まれた「南京大虐殺」否定の文章が翻訳者の無断加筆によるものだったと共同通信などが報じ、これを否定する「著者の見解」が発表された問題で、著者のヘンリー・ストークス氏(元ニューヨーク・タイムズ東京支局長)が5月14日、日本報道検証機構の単独インタビューに応じ、「著者の見解」に示されたのと同様、「南京大虐殺」はなかったとの見解を主張し、内容を事前に把握していなかったとの指摘を否定した。一方、翻訳者の藤田氏は、共同通信の記事が配信される前に、英文で記したストークス氏の見解を担当記者に送っていたが、記事に反映されなかったことを明らかにした。

ストークス氏のインタビューは英語で行われた。共同通信の報道で問題とされた文章のうち「歴史の事実として『南京大虐殺』はなかった」(as a histrical fact, “Nanking Massacre” had never occurred.)という部分について、ストークス氏は、英語で”a massacre”(日本語では通常「大虐殺」と訳される)と呼ばれるようなことは起きていなかったということだと説明。「『南京大虐殺』は中華民国政府に捏造されたプロパガンダだった」(”Nanking Massacre” was a propaganda created by KMT government.)という文章についても、「中華民国政府のプロパガンダだったことは確かだ」と語った。ただ、南京事件そのものを全否定しているわけではないとも述べた。

南京大虐殺の記述を知らなかったと報じられた点についても、ストークス氏は「全くばかげている」と一蹴し、翻訳者の藤田氏とこのテーマについて何度も話し合ったと強調した。

ヘンリー・ストークス氏単独インタビュー(2014年5月14日収録) (日本報道検証機構) ※ロング・バージョンも近日中に公開予定

(「南京大虐殺」に関する主な発言)

  •  A massacre is a fearful destruction of human beings without any warning, and it’s very bloody and extremely memorable to the people who had witnessed it. Having said that, none of the descriptions that I have seen of Japanese troops in action in ‘37, none of those crushes in the streets described by people I witnessed come up to the scale of a massacre. So I’d say so-called Nanjing Massacre by Japanese troops had never occurred.
  • It did not happen as a massacre. That was, according to what I have read, it was sporadic violence here and there in the city.
  • This Nanjing Massacre idea needs more exploration. It was certainly propaganda of KMT government, most certainly.
  • I do not totally deny Nanjing incidents. We have not got the word massacre here. We’ve taken this out, which is very good.
  • I would like them to correct any references they made to the so-called massacre.

翻訳者の藤田氏によると、ストークス氏は共同通信記者から7日に取材を受けた際、著書で問題となっている記述の趣旨を誤解していたという。そのため、取材が終わった後、ストークス氏と協議して問題の記述に関するストークス氏の見解を英文でまとめ、了解をとった上で、8日午後3時ごろ、共同通信の記者に送信。記者はメールが届いたことは確認したものの、8日夜配信した記事には反映されなかったという。

当機構が入手したそのメールには、ストークス氏の見解として次のように書かれていたが、9日に祥伝社を通じて発表された「著者の見解」にも、ほぼ同じ文言で掲載された。

From this, it is clear that the so-called “Massacre”never took place. “Massacre” is not the right word for what happened. And moreover, it was originally a propaganda of the KMT government.

ストークス氏は16日にも当機構を訪れ、英字紙ジャパンタイムズに掲載された共同通信の英文記事(日本語で配信された記事と異なる)を自ら取り上げ、「長年東京に住んでいるストークス氏は、最近共同通信の取材を受けるまで、彼自身の本に書かれていることを知らなかった」(until a recent interview with Kyodo News, Stokes, a longtime resident of Tokyo, did not know what was written in his own book.)という部分について「これは事実でないから訂正してほしい」と訴えた。ストークス氏は、昨年の夏ごろから約半年間かけ、翻訳者の藤田氏と170時間ほどかけて議論しながら出版を準備したと指摘。藤田氏が議論の中でストークス氏が示した見解を整理して日本語原稿にまとめたと話している。ストークス氏にも日本語原稿を渡していたという。

また、ストークス氏は英文記事の「ストークス氏が重度のパーキンソン病に苦しんでいる」(Stokes, who suffers from advanced Parkinson’s disease and)という部分も、何をもって”advanced”と言っているのか「異常だ」(extraordinary)と指摘。ストークス氏によると、ここ数年パーキンソン病の治療を受けてきたが症状はよくなり、最近は薬ものまなくてよい状態まで改善してきているという。ストークス氏は現在も日本外国特派員協会のメンバーとしてインタビュー取材を受けるなど活動しており、今回の祥伝社版の著書の英語版出版に向け準備を進めている。

Journalist backtracks on best-seller after Nanjing switcheroo (The Japan Times 2014/5/8)

ヘンリー・ストークス氏が

ヘンリー・ストークス氏が自ら持参した英文記事に赤線を引いて、事実と異なると指摘した箇所(①と②で囲った部分)。

 

(*) 「著者の見解」の日本語訳全文の文字起こしを追記しました。(2014/5/13 10:00)
(**) 琉球新報5月9日付朝刊1面の第一報の見出し情報を追記し、本文も加筆しました。(2014/5/14 06:30)

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