電力小売りを2016年に全面自由化する電気事業法改正案が20日の衆院本会議で与党などの賛成多数で可決した。週内にも参院での審議に入る。家庭や商店に誰でも電気を売れるようにし、柔軟な料金を設定できるようにすることが柱。政府・与党は今国会での成立を目指す。
いまは工場やオフィスなど契約電力が50キロワット以上の大口需要家にしか小売りは自由化されていない。販売電力量の4割を占める家庭や商店向けは東京電力など電力大手10社が地域ごとに独占している。経済産業省は小口販売の自由化で約7.5兆円の市場が開かれると試算する。
消費者は電気を買う相手や料金プランを自由に選べるようになる。例えば通信会社と契約すれば「スマートフォンと電気料金のセット割引」を受けられる可能性がある。電力会社も「平日は高く、休日は安い」といった新たな料金プランで新規参入組に対抗する見通し。政府は電力小売りの競争を促すことで、電気料金の上昇を抑制する効果を期待する。
一方、16年以降も政府が電力会社の値上げ幅を審査するいまの料金規制は残す。このため消費者は従来の電力会社と料金体系を変えずに契約し続けることもできる。他の会社に乗り換えて、再び電力会社の契約に戻ることも可能だ。
小売りの自由化にともない、Jパワーなどが電力大手に電気を卸売りする際の規制もなくす。Jパワーから電力大手への供給義務を外し、新規参入組にも電気を売りやすくする。Jパワーは東北電力並みの発電力を持っているが、供給が大手向けに偏っているのが自由化の障害とされてきた。
政府の電力システム改革は今回の法改正が第2弾。昨年の通常国会には全国で電力を融通する広域機関をつくるための法改正案を提出したが、国会の混乱で廃案に。結局、第1弾改正は昨年11月まで先送りとなった経緯がある。第2弾も政府・与党が目指す今国会での成立が見通せる状況にはまだなっていない。
経産省は来年の通常国会に、18~20年をメドに電力会社の送配電部門を法的分離し、料金規制を撤廃する第3弾の改正案を提出するスケジュールを描く。電力システム改革は成長戦略の柱とされており、経産省幹部は「成立まで気を抜けない」と強調する。
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