地域経済

火発フル稼働で高まる石炭需要-露天掘り炭鉱で増産続く

2012年09月04日 08時10分

 かつて国内の産業を支えていた石炭が、再び脚光を浴びている。泊原発停止に伴う電力の不足分を補おうと、北海道電力が、石炭を燃料とする火力発電所をフル稼働しているためだ。空知、留萌の両管内に今も存在する露天掘り炭鉱では、北電の求めに応じて生産量を増やそうとする動きが続く。各事業者が長期の増産に踏み切るかどうかは不透明だが、原発再稼働のめどは依然として立っておらず、石炭需要は当面高いまま推移するとみられている。

 道央自動車道三笠インターチェンジから北東におよそ10㌔。幾春別市街地の北側にある標高約500mの山あいに、建設業の砂子組(本社・奈井江)が運営する砂子炭鉱三笠露天坑がある。露天掘りとしては最大規模の生産量を誇り、操業からことしで25年目となる。採掘された石炭は、国内炭を燃料としている奈井江、砂川の両発電所に運ばれる。特に、奈井江発電所への供給が多いという。
 「3・11から10日くらいが過ぎた頃に状況が変わった」―。同社の砂子邦弘社長はこう振り返る。
 東日本大震災に伴う原発事故の発生で、日本はエネルギー転換の必要に迫られた。国内の原発は順次運転を止め、泊にある3基の原発も全て停止した。安定供給に向け北電は、石油火力だけでなく石炭火力もフル稼働する方針を決め、道内で露天掘りをしている7事業者に増産を求めた。
 砂子組には、前年比30%増の要請があった。同社は、震災前まで年間約15万㌧を生産していたが、現在は20万㌧を目標とする。およそ60人の作業員が、石炭の採掘と採掘し終えた場所の復元を、早朝から夕方まで進める。現場では、超大型のトラックやショベルなど30台以上が稼働。ダム工事現場さながらの光景が、眼前に浮かぶ。
 本業の土木、建築を取り巻く環境が厳しいことから、砂子社長は「利益率の高い石炭事業をもっと伸ばしたい」と話すが、その一方で難しさも感じている。
 長期の増産には、重機や人員を増やすことが求められるが、この先もずっと石炭の需要が高いという保証はない。また、現場はおおむね5年から6年で掘り尽くされるので、常に別の開発場所を求めねばならない。そのために必要になる保安林解除など法的な手続きは完了までに数年を要し、容易には進まないのが実状だ。
 別の事業者も同じ悩みを抱える。空知炭鉱(本社・歌志内)は「別の場所での開発に向け検討中だが、法的な規制もあり簡単には進まない」、吉住炭鉱(同・奈井江)では「増産のためには相当の設備投資がいる。増産をするかはどうかは、北電が奈井江、砂川の両発電所を将来どのように取り扱うかによる」と話す。
 ただ、石炭の需要が高い状態は、確実にもうしばらく続きそうだ。
 北電は7月末、原発再稼働のめどが立たず、今冬の電力不足が深刻化する恐れがあることから、昨年実績を15万㌧程度上回る約140万㌧の石炭を各事業者から調達し、石炭火力のフル稼働を続ける方針を打ち出した。
 北海道経済産業局は、供給先が限られているため急激な需要増は考えにくいとしながらも、「再生可能エネルギーと石炭への関心が全国レベルで高まっていることは間違いない」(資源エネルギー環境部鉱業課)と説明。「黒いダイヤ」と呼ばれた石炭の復権に、期待感を表す。

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