2014年5月20日16時09分
現地の大盤解説会場の横は、指導対局コーナー。地元・千葉県ゆかりの5棋士が多面指しで、将棋ファンに指導対局を行っている。
5棋士は、真田圭一七段(千葉県八千代市生まれ)、加瀬純一六段(千葉県八日市場市生まれ)、石井健太郎四段(千葉市出身)、三枚堂達也四段(千葉県浦安市出身)、鈴木環那女流二段(千葉県富津市出身)。
鈴木女流二段は「私がプロになる前に、母が成田山新勝寺の勝御守(かちおんまもり)をもらってきてくれました」と懐かしそうに話した。
勝御守は、初穂料500円。「己に勝つ 震災に勝つ」とうたい、うち100円を被災地復興支援として岩手県陸前高田市に寄託しているという。(佐藤圭司)
■天人が見守る対局室
対局が行われている成田山新勝寺の奥殿(おくでん)は、寺の貫首(かんす)の住居として建てられたもので、寺務所がある光輪閣の奥に立つ。特別な時にだけ使われる建物で、2月の節分の際には豆まきで訪れた大河ドラマの出演者らが利用するという。
対局室となった2階の和室には、木村武山(1876~1942)の「天人散華の図」が描かれている。木村は岡倉天心に師事した日本画の巨匠。緊張感がみなぎる勝負の場に、彩りを添える。その他、室内には掛け軸や仏像などの調度品も用意された。
前夜祭で寺の岸田照泰寺務長は「当山あげて準備に取りかかってきた。歴史に残る対戦を期待したい」と話した。(村瀬信也)
■おやつ 挑戦者は和、名人は和洋両方
【午後3時】両対局者におやつが運ばれた。羽生挑戦者は和菓子と緑茶。森内名人は同じ和菓子のほかに、フルーツロールケーキとレモンティー。
和菓子も洋菓子も、地元の米屋(よねや)株式会社のもの。和菓子は、ういろう製で、黄味餡を使った上生菓子。創作者は「潔い対局の場への願いを込めて菖蒲(しょうぶ)と名付けた」という。(佐藤圭司)
■大盤解説会
【午後1時30分】現地で大盤解説会が始まった。トップバッターは藤井猛九段と本田小百合女流三段。
盤上はじっくりとした序盤戦が続いているだけに、余談が多いが、それが面白い。藤井九段創案の藤井矢倉について、本田女流三段が「佐藤康光先生が藤井矢倉についての本を出しておられてますね」。藤井九段は「僕は将棋世界の付録で、ちょっと書かせてもらっただけです……。佐藤さ~ん!」。聞いている将棋ファンは大笑い。楽しい時間を過ごしている様子だ。(佐藤圭司)
■対局再開
【午後1時30分】対局が再開した。少考後、森内名人は△6四歩を着手。これからしばらくは、来るべき戦いに向けて、互いにどのような陣形を構築するかが見どころとなる。(村瀬信也)
■昼食は共に「うな重」
【午後0時30分】昼食休憩に入った。両対局者とも「うな重」だ。
成田山新勝寺の参道では、参拝客のためにウナギを焼くお店が軒を連ね、香ばしい香りが漂っている。
今回、出前をしたのは、そんな中の一軒、1798(寛政10)年創業という、うなぎ屋「駿河屋」。運ばれてきたのは、老舗自慢の「共水うな重」(5500円)だ。
女将の木下よしえさん(66)は「大井川の伏流水の水を豊富に使い、また養殖に適した山土を池底に敷き詰め、静岡県の温暖な気候を利用して、ストレスのおきない天然に近いウナギです」と説明した。
昼食休憩は1時間で、午後1時半に再開する。(佐藤圭司)
■3度目の相懸かりに
【午前10時50分】3連勝でタイトル奪取に王手をかけた羽生挑戦者が用意していた作戦は、相懸かりだった。第2局で用いた「鎖鎌銀」と呼ばれる形とは違い、▲2七銀から▲3六銀と構えるよくある形に進んでいる。対する森内名人は△8五飛と浮き飛車に構え、相手の攻撃を牽制(けんせい)している。
副立会人で解説の木村一基八段は「この進行は後手も結構戦える、という印象を持っている人が多いと思います。この後、羽生挑戦者にやってみたい手が出てくると思います」と話す。一気に激しい戦いとなる可能性も秘めているため、互いに一手一手慎重に手を進めることになりそうだ。(村瀬信也)
■10年ぶりの成田山
成田山新勝寺は不動明王を本尊とする真言宗の寺で、4年後に開山1080年を控える。源頼朝は平家討伐の際にここで祈願し、歌舞伎の初代市川団十郎は信仰を機に「成田屋」の屋号を使った。
新勝寺で名人戦が行われるのは、2004年の第62期以来となる。その時は名人の羽生に森内が挑戦。ここでの第1局を制した森内が奪取し、65期までの4連覇につなげた。開幕から3連敗を喫している森内はそのことを念頭に、19日の前夜祭の決意表明の際、「またここで新たなスタートを切りたい」と語っていた。
千葉県成田市は市制施行60周年を契機に今回の名人戦の開催に名乗りを上げた。将棋が盛んな土地柄で、11日には名人戦開催を記念する「子ども名人戦」が開かれ、小学生60人が参加した。
小泉一成市長は前夜祭で「成田市が誕生して今年で60年。その節目の年に開催できてうれしい」とあいさつした。(村瀬信也)
■第4局始まる
【午前9時】森内俊之名人(43)に挑戦者の羽生善治三冠(43)が3連勝して迎えた第72期将棋名人戦七番勝負(朝日新聞社、毎日新聞社主催、大和証券グループ協賛)の第4局が20日、千葉県成田市の成田山新勝寺で始まった。
午前9時、立会人の佐藤康光九段が「それでは定刻になりましたので、羽生挑戦者の先手で対局を開始してください」と告げた。羽生挑戦者の初手は▲2六歩。ほどなくして森内名人も△8四歩と応じ、第1局、第2局と同じ相懸かりに進んでいる。
持ち時間は各9時間。対局は20日夕に封じ手をし、21日朝に再開して夜までに決着する見込み。羽生三冠が勝てば3年ぶりの名人復位となる。森内名人は1勝を挙げて、防衛に望みをつなぎたい。(村瀬信也)
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