忍者研究:漫画など題材に忍者像の変遷に迫る 本刊行

毎日新聞 2014年05月19日 18時02分

 忍者の実像に迫るだけでなく、小説や映画、テレビドラマ、漫画、アニメで忍者、忍術がいかに描かれたかを探り、フィクションとしての「忍者像」とその変遷を明らかにしようと「忍者文芸研究読本」が刊行された。近現代の文学や歴史の研究者の他、児童文学や歌舞伎の専門家、ロシア人の研究生など多彩な顔ぶれが執筆している。【大西康裕】

 ◆巻頭は伊賀市で開催の和田竜さんの座談会

 三重大人文学部の吉丸雄哉准教授と山田雄司教授、尾西康充教授が編著者。3人の他に12人が執筆した。

 巻頭は、「村上海賊の娘」で2014年本屋大賞を受賞した作家の和田竜さんを招いて山田教授らが昨年3月、伊賀市で開いたトークイベントを収録した。

 和田さんは「忍者というのは一次史料の中で確認できないので、これは日本人にとってはなし、とするのは非常にもったいないと思います。これはもう江戸時代ぐらいからずっと創ってきた日本人の財産ですから」と述べている。座談会で出てくる「天正伊賀の乱」や「にんじゃりばんばん」などは簡潔な解説が同じ見開きに付く。

 ◆忍者漫画

 「忍者漫画の“革命”−白土三平から相原コージ『ムジナ』へ」をテーマにした大学講師は「白土三平『カムイ伝』に極まる60年代のブーム以降、忍者漫画というジャンルは、時代感覚に沿いながら絶え間なく変容・多様化していたといえよう」と書いた。2人の漫画家の作品を行きつ戻りつしながら、1960年代と90年代に描かれた忍者と忍者が生きた社会を考察する。

 児童文学の研究者は、古田足日さん作の「忍術らくだい生」や尼子騒兵衛さん作の「らくだいにんじゃらんたろう」などを取り上げ、同じ落第生のアンチヒーローものでも時代の違いを感じる差異を指摘する。近現代文学の研究者は「山田風太郎が描いた忍者」をテーマに執筆した。

 ◆忍者関連主要作品年表

 吉丸准教授らがまとめた「忍者関連主要作品年表」も。江戸時代は書物のみ、明治以降は「小説」「映画・テレビドラマ」「マンガ・アニメ」の三つに分け、題名や作者、掲載誌名などを記入した。

 一方、忍者の実像については、吉丸准教授が「忍者とはなにか」、山田教授が「『しのび』の実像」で典拠を示して、定義している。

 ◆新しい魅力を

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