憲法の政府解釈の変更によって、集団的自衛権の行使を認めるかどうか。

 この問題を最大の焦点とし、安全保障政策についての与党協議がきょうから始まる。

 安倍首相は先週、みずからの私的懇談会の報告を受け、行使容認に向けた解釈変更に踏み出す考えを示した。

 自民、公明両党の幹部らによる協議は、首相が投げたこのボールを検討する場となる。

 安全保障環境の悪化を理由に、憲法に定められた手続きを踏むことなく憲法9条を実質的に死文化させる。こんな安倍政権のやり方に、私たちは社説で反対してきた。憲法に縛られる側にある権力者による、憲法への反逆行為に等しいからだ。

 日本の安全を確実に守り、PKOなど国連の旗のもとでの活動にさらに貢献していくにはどうすべきなのか。こうした課題について、国民の負託にこたえるべき国会議員には、私的懇談会とはちがった責任と矜持(きょうじ)があるはずだ。与党に限ったことではない。野党議員も国会審議などでその役割を果たさねばならない。

 公明党の山口代表は、きのうの都内での講演で、集団的自衛権について次のような見解を明らかにした。

 日本政府は自衛隊発足以来、海外では武力を使わないとの考え方を貫いてきた。それこそが国際社会にも認められてきた憲法9条に基づく規範性、法的安定性だ。そこで憲法解釈を変えて海外に出て行くぞとなると、身構える国も出てくるし、「そんなつもりで自衛隊に入ったわけではない」という人も出てくるだろう――。

 こうした憲法の規範性をどう考えるかが、与党協議での重要な判断基準だという。立憲主義を踏まえた、極めて理にかなった見解だ。

 一方で自民党の石破幹事長は週末のテレビ番組で、安倍首相が私的懇談会の提言を受けてもなお否定した多国籍軍への参加について、「国民の意識が何年かたって変わった時、(方針が)変わるかもしれない」と語った。

 将来の多国籍軍への参加に含みを残した発言だが、これこそ時の政権が何でも判断できるという考えの表れであり、受け入れられない。

 きょうからの与党協議は、平和主義を掲げてきた戦後日本の大きな転換点となる可能性をはらむ。

 連立維持という政治的要請に向けた結論ありきの議論は、決して通らない。