宮城・名取市:仮設162戸立ち退き要求 地権者に計画

毎日新聞 2014年05月20日 05時00分(最終更新 05月20日 08時10分)

愛島東部仮設住宅で開かれた住民説明会で、立ち退き要請に反対する住民ら=宮城県名取市愛島笠島で2014年5月19日午後7時29分、金森崇之撮影
愛島東部仮設住宅で開かれた住民説明会で、立ち退き要請に反対する住民ら=宮城県名取市愛島笠島で2014年5月19日午後7時29分、金森崇之撮影

 東日本大震災で被災した宮城県名取市は19日、愛島(めでしま)東部仮設住宅(同市、182戸)の住民に対し同住宅を立ち退き、他の仮設住宅への転居を求めていることを明らかにした。土地所有者らでつくる区画整理組合が引き渡しを求めているため。宮城、岩手、福島3県でこれまで最大規模の立ち退き要請で、同日夜に行われた市と県による住民説明会では立ち退きに反対する声が相次いだ。

 同仮設は同市最大で、800人近くが死亡・行方不明となった同市閖上(ゆりあげ)地区の被災者らが162戸(322人)に入居。震災直後、県が区画整理組合から約2年間の無償契約で土地を借りて仮設住宅を建設。昨年、有償で1年延長した。今年6月末期限の契約で、組合側は宅地造成を理由に更新に難色を示し、市に対し10月にも用地の一部で造成工事を始める考えを示している。

 市は「最後まで(組合側と)交渉するが、最低でも住民の半数は移転してもらわないと厳しい」と説明、今夏にも転居者を募り、空いた仮設住宅は解体する方針。民間の賃貸住宅を活用するみなし仮設の募集は終了しており、住民には市内の別のプレハブ仮設への引っ越しを求める。

 ◇市は救済策検討

 ただ、市内の仮設住宅の空き室は112戸で6カ所に分散している。市は組合から用地を買い取り、愛島東部の仮設住宅を一部維持する方針で、「児童や要介護者がいる世帯には配慮したいが、愛島に残すのは9棟分(72戸)くらいにとどめたい」と説明した。

 閖上地区は市が住宅の現地再建を決めたが、移転を望む住民の反発などで計画修正が相次ぎ宅地造成が始まっていない。仮設住民の多くも自宅再建のめどが立っておらず、男性(51)は「みんなで頑張ってきたのにバラバラになるなら、この3年間は何だったのか。百歩譲っても全員が1カ所に移れるようにしてほしい」と憤った。【金森崇之、百武信幸】

 ◇民有地 契約切れの懸念

 災害救助法による仮設住宅の供与期間は2年で、国や自治体は1年ずつの延長で対応している。仮設住宅は4月末現在、津波被害の大きい宮城で2万2095戸、岩手で1万3984戸あり民有地に建設されているのはそれぞれ約4割、5割強。震災から4年目になり、民間地で土地の返還を求める動きが増えることも予想される。

最新写真特集