2014-05-18
福島の甲状腺ガン検出率は他県とほぼ同じ
【5月18日22時修正】東京新聞より今回の検査人数は29万人との報道があったため、試算前提を修正いたしました。
この福島の甲状腺ガンの記事は、二重の意味で誤解を生みやすいタイトルだと思います。
福島の子ども甲状腺がん50人に 県、放射線の影響調査
■福島で甲状腺ガンが増えたのか?
このニュースを読むと「福島で甲状腺ガンが増えた。もしや被曝の影響では?」と思う人が出ても不思議ではありません。
しかしよく読むと、これは1巡目の調査についてのものであり、前回の調査対象者数が約25.4万人(ソースは後述)であるのに対し、今回は約29万人に増えています。母数が増えているわけですから、甲状腺ガン検出の絶対数が増えるのは当然のことです。
仮に調査対象者数100人に対して10人の割合で検出される病があったとして、対象者数を200人に増やせば検出数は20人前後に増えるでしょう。しかしそれは有病率の増加を意味しません。
ここで改めて前回調査と今回調査との間で、甲状腺ガンの検出率が増えたかどうか試算してみます。
■福島での10万人あたりの甲状腺ガン数
【14年02月時点】
対象者数 :25.4万人
甲状腺がん者 :33〜75人(うち甲状腺がん疑い 41人)
10万人あたりの甲状腺ガン数 :13〜29.5人
(情報ソース)
【14年05月時点】
対象者数 :29万人
甲状腺がん者 :50〜89人(うち甲状腺がん疑い 39人)
10万人あたりの甲状腺ガン数 :17〜30.7人
上記の通り、10万人あたりの甲状腺ガン数にほとんど変化はないことが分かります。それにそもそも1巡目の調査が進展しただけなので、増減を測るものでもありません。
メディア側は、母数が異なる2つの調査結果を比較する場合は、絶対数だけではなく比率なども併せて報じて欲しいです。
■福島の甲状腺ガンは他県よりも多いのか?
また、このニュースを読んで「福島では他県よりも甲状腺ガンが多い。被曝の影響では?」と思う人もいるかもしれません。
ですから他県との対照検査による比較もあわせて行った方が、福島における甲状腺異常のインパクトをより正確に知ることができます。比較結果を下記に記します。
■福島での10万人あたりの甲状腺ガン数
10万人あたりの甲状腺ガン数 :17〜30.7人
■他県(青森・山梨・長崎)での10万人あたりの甲状腺ガン数
対象者数 :4,365人
甲状腺がん者 :1人
10万人あたりの甲状腺ガン数 :22.9人
(情報ソース)
上記の通り、福島における10万人あたりの甲状腺ガン数は、他県のそれと比べて有意な差はない可能性が高いことが分かります(対照群の母数が十分ではない点は少し気になりますが)。ですから福島で他県に比べてすでに甲状腺ガンが増加済みのように捉えることは不適切だと思います。
メディア側は、風評デマに悩まされている福島のことを配慮して、福島と他地域の調査結果を比較できるような形で情報提供して欲しいです。
■大事なこと
大事なことは、今回の1巡目の検査結果をベースラインとして、今後の追跡調査で甲状腺異常の有意な増加がないかを注視していくことではないでしょうか。
そのためにも、誤解を生まない冷静で客観的な報道を願いたいところです。
- 291 http://b.hatena.ne.jp/
- 289 http://www.hatena.ne.jp/
- 260 http://horiemon.com/news/2014/05/18/8607/
- 249 http://gigazine.net/news/20140519-headline/
- 187 http://gunosy.com/rd/gjxtA
- 165 http://gunosy.com/g/gjxtA
- 145 https://www.facebook.com/
- 138 http://t.co/qj7wSCSv6y
- 137 http://pipes.yahoo.com/pipes/pipe.info?_id=2063c526896043e68c28b3a0547e3cb6
- 133 http://b.hatena.ne.jp/entry/d.hatena.ne.jp/ryoko174/20140518/1400373076