宗教法人を舞台にした新たな犯罪、出家詐欺。
その実態がNHKの取材で明らかになりました。
出家すれば、戸籍の名前を変更できる仕組みを悪用。
多重債務者を次々と出家させて別人に仕立て上げ多額の住宅ローンをだまし取る手口です。
取材を進めると出家詐欺が水面下で広がっている実態が見えてきました。
背景にあるのは経営難などに苦しむ宗教法人の現状です。
危機感を強める宗教界。
犯罪に悪用されるのを食い止めようと対策を急いでいます。
狙われる宗教法人。
知られざる出家詐欺の真相に迫ります。
こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
住職といえばお寺、お寺と聞いて境内で遊んだ思い出をお持ちの方お墓参りにお寺に行くという方も多いと思いますけれども今、厳しい運営を強いられているお寺が増えています。
檀家の減少や後継ぎの住職がいない。
さらにお葬式や法事の簡素化。
宗教離れが進む中で経営が立ち行かなくなるお寺が少なくないのです。
中には、お寺はあっても宗教活動の実態のない不活動宗教法人になってしまうケースも数多くあると見られています。
こうした状況を裏付けているのがこちらです。
宗教法人は年1回活動実態を書類で行政に提出することが義務づけられていますけれども提出のない宗教法人はご覧のようにこの10年で2倍以上に増えその数、1万4000件余りに上っています。
地域に密着して長い間存続してきたお寺。
宗教法人が次第に社会の変化についていけなくなっているそんな実態をうかがわせています。
こうした中で、お寺の苦境につけ込んだ犯罪も起きています。
出家詐欺です。
僧侶になるための儀式を得度といいます。
得度を受けると僧侶としての名前法名が与えられます。
家庭裁判所で手続きをすれば戸籍上の自分の下の名前をこの法名に変えることができます。
出家詐欺のグループはこの仕組みを悪用し多重債務者を次々と別人に仕立て上げることで本来受けることができない多額の融資をだまし取っていたのです。
300年の歴史を持つお寺宗教法人を舞台に起きた出家詐欺。
全国で初めて京都府警が摘発した事件の実態をご覧ください。
出家詐欺事件の舞台となった滋賀県大津市の寺、定光坊です。
300年以上の歴史がありますが寺の宗教行事などの収入が減り事件当時、経営が行き詰まっていたと見られています。
定光坊の住職、三浦道明被告。
1億3000万円余りをだまし取った4件の出家詐欺に関わったとして去年、逮捕・起訴されています。
警察は詐欺グループが多額の負債を抱えていた三浦住職に計画を持ち込んだと見ています。
私たちは事件の経緯に詳しい人物に話を聞くことができました。
私たちが入手した出家のための儀式得度の写真です。
警察によりますと詐欺グループは三浦住職に依頼し多重債務者に、得度を受けさせていたということです。
多重債務者には協力すれば借金を帳消しにすると持ちかけていました。
詐欺グループの関係者が得度の実態を明かしました。
僧侶としての名前法名を与えられた多重債務者に家庭裁判所で戸籍の名前を変えさせていたといいます。
三浦住職が作成した得度を証明する書類です。
この書類と得度の写真を示せば僅かな時間で手続きは終わったといいます。
出家詐欺で融資をだまし取る手口です。
多額の借金を抱える多重債務者は住宅ローンを契約することができません。
しかし、出家して戸籍の下の名前を変え別人に成り済ますことでローンをだまし取っていたのです。
詐欺に悪用された物件の一つ京都市内のマンションです。
名前を変えた多重債務者が偽造した源泉徴収票を提出しおよそ3000万円の住宅ローンを契約します。
3000万円は不動産業者に支払われます。
しかし、不動産業者は三浦住職やヤミ金融業者と裏で手を結んでいたといいます。
本来の物件の価格は2400万円で600万円を水増ししていました。
それを関係者で分け合っていたということです。
多重債務者は行方をくらましローンの返済を免れたのです。
多重債務者が名前を変えたことをなぜ金融機関は見抜けなかったのか。
改名したことを確認するには戸籍謄本などを調べる必要がありますが提出を求めることはほとんどないといいます。
出家詐欺はどこまで広がっているのか。
インターネットで検索すると…。
出家をあっせんするホームページが複数見つかりました。
「改名のメリットは計り知れない」。
「ブラックも消えて人生リセット!」。
私たちは出家をあっせんするブローカーの一人が関西にいることを突き止めました。
たどりついたのはオフィスビルの一室。
看板の出ていない部屋が活動拠点でした。
ブローカーは経営が行き詰まった寺などを多重債務者に仲介することで多額の報酬を得ているといいます。
ブローカーのもとには多重債務者の訪問が後を絶たないといいます。
私たちが取材したこの日も数百万円の借金を抱えた男性が現れました。
多重債務者を出家させ融資をだまし取る出家詐欺。
宗教法人を悪用した巧妙な手口が水面下で広がっている実態が明らかになりました。
今夜のゲストは、宗教法人の事情にお詳しい、慶應義塾大学教授、中島隆信さん。
そして、取材に当たってきました、京都放送局の法花記者です。
まず法花さん、出家して、法名を得られる仕組みが悪用され、お寺が犯罪の隠れみのになったという事件ですけれども、ただ本当に、その修行を積んだかどうかなど、チェックする、それを防ぐ手だてはあったのではないかとも思えるんですけども。
まず、戸籍の名前の変更を受け付けるのは、家庭裁判所なんですが、その中には、お経を読んでくださいですとか、そういったことをして、チェックをするところもあるんですね。
しかし、そもそも出家して仏門に入るということの神聖な行為は、悪用されないだろうと、そういった性善説に立っていることがありますので、書類などがそろっていれば、その多くは簡単な面接で許可されるケースが多いということなんですね。
今回の出家詐欺の事件のように、出家して名前を変えることが悪用されるということが、まだまだ想定外だった状況があったと思います。
さらに、ローンをチェックする金融機関側に関しても、個人情報保護の流れの中で、身元を詳しく調べるという行為に、慎重になっているということもありますので、これを逆手に取ったことも、巧妙だといえます。
そしてその、懸念されるのは戸籍の名前を変えることができるのであれば、詐欺に限らず、ほかの犯罪にも悪用されるということも考えられますね。
すでに暴力団関係者も出家の仕組みを悪用しているという情報もあるんです。
つまり暴力団排除の流れが進む中で、資金源が枯渇する暴力団も増えていますので、暴力団員が名前を変えることで、一般人を装って、本来できない、表のビジネスに進出して、それで得た利益を、活動資金としているケースもあるということなんですね。
こうした中、警察は、戸籍の名前を変えるという出家を悪用した犯罪が今後、さらに増えるおそれがあると見て、情報収集ですとか、取締りを強化することにしているんです。
中島さん、お寺で経営が立ち行かなくなっている状況のところって、多いんですか?
そうですね、2つの理由があると思いますね。
1つは地方を中心に進んでいる過疎化ですね、少子高齢化。
あとは、都市部でだんだんお寺とのつきあいを少なくしていきたいという流れですよね。
もともとそのお寺っていうのは、葬儀と法事というのをある意味、仕事の中心にして、それが主な収入源だったわけですけれども、そのように人口が減り、また都市部で、お寺とのあまり濃いつきあいは嫌だと、もっと節約して、葬儀も簡単に、あまりお坊さんと深いつきあいをしたくないという形で、お寺離れが進むと、結局、それが葬儀や法事の収入を減らしてしまうということにつながると思います。
そして後継ぎがいないお寺も増えてきたといいますね。
そうですね。
地方で過疎化が進んでいけば、お寺の檀家が減ってくる、そうするとまあ、住職の息子も、このお寺の後は継ぎたくないと、こうなるわけですね。
そうすると、その住職は、別の住職さんに、自分のお寺の後を継いでほしいということになって、1人の住職が10軒以上、お寺の住職を兼ねるという事態も起きているわけですね。
それからお寺をしっかり見ている人がいなくなったり、あるいはその檀家の方がいなくなると、例えば、全く修行してない人に得度の儀式をするといったことも可能になるんですね。
そうですね。
私もVTRを見て、びっくりしたんですけれども、得度っていうのは法名を与えられて、まさにお坊さんになる出発点ですよということなんですね。
とても重要な儀式なんですよね。
それをこう、師匠のお坊さんと、個人がたった2人だけで、誰のチェックも受けない、周りで見ている人もいないという状況ですよね。
普通のお寺とか、ある程度名の通った宗派では、あまり考えられないことだと思いますね。
信者が見守る中でという?
そうですね。
周りの目があってのことだと思うんですね。
そしてさらに、活動の実態がなくなっていくと、今度、不活動の宗教法人になる。
そうなったときに、ますます犯罪の温床になるおそれというのは出てきますか?
それはありますね。
結局、経営難で止まっていればいいんですけど、それが不活動ということになると、そこでこう、しっかりと信者さんたちを取りまとめる住職もいない、檀家さんたちの代表である檀家総代もいないということになってきますと、もう結局、糸の切れたたこ状態になって、もうどうなってるか分からない。
そうすると、誰かがそこに忍び寄ってきて、その法人という法人格を買って、それを隠れみのにして悪用していくという流れになる可能性もあると思いますね。
そしてなかなか、宗教ということですから、なかなか立ち入って調べたりすることは難しいですか?
そうですね。
憲法に信教の自由っていうのがありますから、先ほどもVTRにありました宗教の力っていうのがありましたから、それで結局、信者さんたちが集まって、自発的に活動しているところに、別の人が、外部の人が何かそこにメスを入れるとかチェックするとかいうのは、本来の宗教法人にふさわしくないと、こう考えられているからですね。
犯罪の温床になりかねない不活動の宗教法人。
対策に乗り出した自治体、そして宗教界をご覧いただきます。
5500余りの宗教法人を抱える京都府。
不活動宗教法人の洗い出しを全国に先駆けて行っています。
宗教法人には、役員名簿や財産目録などを年に1回行政に提出することが義務づけられています。
書類が未提出のうえ連絡がつかないなどの場合不活動宗教法人と認定されます。
京都府が認定したのはおよそ100。
不活動宗教法人の実態はどうなっているのか。
私たちは、その一つを訪ねました。
宗教施設などはなく一戸建ての住宅が建っていました。
50年以上前から住む住民に話を聞くと…。
京都府では不活動宗教法人の解散や合併などに向けた手続きを進めていますが多くの場合思うように進まないのが実情です。
宗教法人を解散させる場合親族や檀家などの関係者から原則、同意を得る必要があります。
そのあと裁判所に解散の請求を行い解散命令が出されます。
しかし、長年放置されてきた結果関係者の所在すらつかめず手続きが全く進まないケースが相次いでいるのです。
行政の取り組みに限界がある中みずから不活動宗教法人の対策に乗り出している宗派があります。
京都に本山を持つ臨済宗妙心寺派です。
先月、解散や合併に向けたプロジェクトチームを立ち上げました。
専従のメンバーに任命されたのは4人の僧侶。
妙心寺派では全国およそ3400の寺のうち1000以上で住職が常駐していません。
不活動になる可能性のある寺を調査したうえで解散や合併を進めることにしたのです。
専従メンバーの一人久司宗浩さんです。
この日は和歌山県の山村にある寺まで5時間以上かけて足を運びました。
本堂は、すでに失われ集会所に間借りしている状態です。
放置しておけば遠からず不活動に陥るおそれがあります。
久司さんは解散の同意を得るため半年間にわたって檀家のもとに通い続けました。
檀家の同意は得られましたが財産の整理などの法的な手続きで解散までにはさらに1年近くかかるといいます。
中島さん、行政が主導する解散の取り組みも、そして本山が主導して解散や合併を進めようという取り組み、どちらも難しさがあるわけですけれども、解散ということを考えている最大の障害になるものってなんですか?
憲法に信教の自由ってありますね。
なので宗教法人法っていうのは、法律であまり介入するんではなく、あくまで、檀家さん、それから住職たちの自由意思に任せて、解散するにしても意思決定をしなさいということになっているんですね。
今のVTRにあったように、ああやってこう、住職もいない、檀家さんも高齢になっている、なかなか正常な判断ができなくなってくるということになると、もう意思決定すらできない、解散しようということすら決められないという、こういう状況になると思います。
意思決定ができる人がいればまだいいということですね。
そうですね。
でも日本には本当に多くのお寺がありますよね。
そうですね。
日本は7万5000のお寺があって、コンビニエンスストアよりも数が多いんですね。
それは実は、歴史的な背景があるんですよね。
それだけ多いっていうのは。
その中で、どれくらい苦境に立っていると見られていますか?
大体、そうですね、3割ぐらい、経営状態が悪いなっていうふうに思われますね。
これは私が聞いた話ですけどね。
そしてその歴史的背景とは?
歴史的背景は、まあそもそも今の檀家寺といわれるものは、江戸時代に徳川幕府がキリシタンを禁止にするために、国民をお寺に縛りつけて、仏教の信者であるということを証明する係をお寺に与えたんですね。
だからそういう点でいうと、今のお寺っていうのはそもそもの成り立ちからいうと、徳川幕府の宗教政策からスタートしてるんです。
そうやって出来たお寺っていうものが、宗教法人格を与えられたそのまま現代までにずっときていると。
だから…。
つまりその檀家というのは、そのお寺といわばおつきあいをするということが、義務化されていたんですか?
そうですね、制度的に結び付けられたものなんですね。
だからそこにもともと信仰があったわけじゃなくて、制度的に結び付けられたものが宗教法人という形になって、ずっと今まで続いていると。
主な収入源が葬儀とか法事になってしまっていると、こういうことなんですよね。
そうやって続いてきたお寺がいよいよもってそれが継続が難しくなってきたとすれば、どうすればいいんですか?
そうですね。
やはり葬儀や法事主体のお寺の活動はもう限界がきていると思いますね。
ですのでこれからはやっぱり、日本人の心の中にまだ仏教に対する、帰依しようという気持ちが私はあると思うんですね。
仏像の前で手を合わせるという習慣もありますしね、そういう習慣が残っているうちに、お寺がもっと、信者さんたちに働きかけて、国民の宗教心を高めてほしいと思います。
それが本来の役割だと、私は思います。
本当の仏教の教えを伝えるということに立ち返らないと?
まさに今、チャンスじゃないかもしれないとも思いますよね。
きょうはどうもありがとうございました。
2014/05/15(木) 00:10〜00:36
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「追跡“出家詐欺”〜狙われる宗教法人〜」[字][再]
多重債務者を出家させて名前を変え、融資をだまし取る。宗教法人を舞台にヤミ金融業者などが暗躍する新たな“出家詐欺”が広がっている。背景には何があるのか徹底取材する
詳細情報
番組内容
【ゲスト】慶応義塾大学教授…中島隆信,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】慶応義塾大学教授…中島隆信,【キャスター】国谷裕子
ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
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