(店内の音楽)
(店員)あんた何してる!離しなさい!おい警察呼んで!警察!
(店員)何をしてんだよ!なんとか言えよ!
(池内弘二)あんたの行為は器物損壊威力業務妨害に当たるんだよ。
なんでこんな事したの?
(池内)これ売ってる店になんか恨みでもあったのか?それともなんか悩みがあって?ストレス発散か?
(ため息)あんたねぇ…。
(平林雅彦)池内さん。
家族が来てます。
(後藤宏子)後藤咲子の母です。
事情は聞きました。
ご迷惑をかけたお店の方には私どものほうから謝罪いたします。
(鈴木幸彦)お嬢さんを連れて帰ってよろしいでしょうか?いやまだ犯行動機も不明ですし…。
犯行の動機ですか?あの子は私が憎くてやったんです。
あれっ?ちょっとすいません。
(平林)あなたこのCDの…。
お恥ずかしいわ。
30過ぎた娘が親に反抗するのを世間様に知られるなんて。
あとの事はこの鈴木が。
失礼します。
後藤宏子のマネジャーの鈴木です。
お嬢さんに会っていかれなくていいんですか?高原くん!こっち。
(高原純之介)やあ。
久しぶり。
ごぶさた。
いつぶり?一昨年の同窓会以来になるかな。
うん。
「くん」付けで呼ばれると新鮮だよ。
アハハ…。
京都地検のお偉いさんは敬語を使われ気を使われ…。
君のほうこそクラシック界の女王様だろ?買ったよCD。
いいねぇ。
クラシックには暗い僕でも胸に響いた。
高原くんって声がいいのよね。
言われた事ない?このダミ声を褒められた事なんてないよ。
ハハハ…。
アハハハ…。
そうそう面白い事があったのよ。
(鶴丸あや)娘が母親のポスターにスプレーを吹き付けた?ああ。
10日前には彼女の自宅に10人前の寿司とピザが10枚配達された。
ええっ?それもお嬢さんの仕業ですか?そのようだ。
(鶴丸りん)高原さん今夜は私が料理当番だから味は期待しないでね。
(成増清剛)りんちゃんあのね煮魚の時はね鍋から離れないようにね。
まあよく聞く話ですよね。
金持ちの子供が親のお金で遊び暮らして迷惑行為に走る。
一番嫌いだわその手の若いの。
いやついこの間までは評判の孝行娘だったそうだよ。
なんでひっくり返っちまったんです?後藤宏子の旦那は娘の咲子さんが高校生の時に病気で亡くなっていてね。
宏子くんの身の回りの世話は全て娘がしてた。
しかし先月急に家を出てコンビニで働き始めた。
それはあれだ。
あの…遅れてきた反抗期ってやつ。
そんな事ならここまで来てないよ。
ちょっとこれ見てくれないか?あらまぁ…。
「お前の指を叩きおッテやる」?脅迫状だぜこれ。
これもその…娘の咲子さんが?たぶんそうだろうと宏子くんは言ってた。
まあ本人は子供のやる事って愉快ねなんて笑っていたが…。
笑ってる場合じゃないですよ!バイオリニストにとって指は命の次に大切なはずです!それに出前に脅迫にスプレーってお嬢さんの行為はどんどんエスカレートしてきてる。
次に彼女が何をしでかすか心配です。
そういうねチビッとした話をねでっかくするのあんたの悪い癖だよ。
器物損壊は立派な犯罪よ。
それに殺人事件の半数は親族間で起きてるの!まあそこまで大事になるとは思わないが…。
いいえ!このままにしておいてはいけないと主婦の勘が言ってます!
(高原)いややりすぎは困るよ。
あくまで穏便に。
今日の無縁社会と言われる日本に必要なのは私のように愛らしいおせっかいなおばさんです!
(平林)ううっ…!
(池内)やあっ!
(平林)どりゃーっ!池内さん!
(平林)隙あり!まいりました。
(川喜多夏帆)かっこいい〜!
(夏帆)おお…!スプレーの件はですね店のほうから告訴も被害申告も出さないっていう連絡がありましてちゃんちゃんになりました。
後藤宏子が契約してるレコード会社から手を回したのね。
やっぱり新譜出したすぐあとに内輪の揉め事ってよくないですもんね。
娘の後藤咲子が器物損壊に至った動機は何?マネジャーの話によると親子喧嘩が原因じゃないかとかなんだとか…。
あいまいじゃない!そんなんでお茶を濁したの?いや身内のいざこざは被害届が出ない以上我々が積極的に関与するわけにはいかないんですよ。
民事不介入を盾に手を抜いたって事ね。
ハハハハハ…あのですね…。
(携帯電話)はいもしもし。
えっ…えっ殺し?殺しですか?了解です!池内さん宮堀町です。
よし。
失礼します。
お疲れさまです。
はい。
お疲れさまです。
検事井森事務官から早く戻るようにと再三連絡が…。
井森さんに10分遅れるって伝えて!検事…。
お名前は?河合加奈です。
(警官)発見した時の状況を詳しく聞かせてください。
(加奈)はい…。
(池内)遅くなりました。
殺しですか…。
ガイシャはこの部屋の住人です。
京都音楽大学で助手を勤めています。
死因は腹を刺されての失血死。
死亡推定時刻は一昨日の夜6時から9時の間。
凶器は…。
たぶんこれだろう。
きれいに洗って台所に置いてあった。
ホシの目星は?ああ…。
あの向かいの部屋のおばちゃんが一昨日の夜8時頃この部屋で女がガイシャに食ってかかってるのを見ていたそうだ。
…とガイシャは8時過ぎにその女にブスリと。
恐らくな。
第一発見者が表にいる。
(警官)おいどうするんだよ?あれ?さっきの若い子は?すいません!目を離したらいなくなってて…。
おいおいおい何やってんだよ。
目を離したらって…。
後藤咲子さんですね?私京都地検の鶴丸といいます。
(後藤咲子)一昨日の事は立件はされないと聞いてますが…。
ええそのとおりよ。
今日私がここへ来たのは私の上司がお母さんの友人でこれを見せてもらったからなの。
おせっかいは承知の上です。
私はあなたがもっと極端な行動に出るのが心配なの。
私でよかったら話してくれる?お母さんをどうしてこんなに執拗に攻撃するのか…。
(咲子)あの人は…。
怪物なんです。
怪物…。
今日私が余計な道草を食わなければあと2件は片付いてたわよね。
(井森幸三郎)損害賠償請求してもよろしいでしょうか?井森事務官は道草とかしないんですか?当たり前だ。
わたくしは人生の限られた時間を無為に過ごしたくはない。
仕事の効率を下げ他人の予定を顧みない厚顔無恥のどっかの誰かさんとは違う!残念だわ。
今日これからバイオリニストの後藤宏子に会いに行くんだけど仕方ないから1人で道草食うわ。
じゃあ。
お疲れさまでした!はいお疲れさま。
後藤宏子?
(バイオリンとピアノの演奏)さすがですね。
(鼻息の音)井森さん興奮しないで。
(鼻息の音)鼻息荒い!いや世界的なバイオリニスト後藤宏子が目の前にいるんですから無理もないです!
(宏子)う〜んダメダメ。
今日はこれで終わりにしましょう。
全然指が動かないわ。
わかりました。
後藤宏子さん。
あの…私京都地検の鶴丸といいます。
あっその指どうなさったんですか?スケジュールの調整のほうちゃんとしといて。
(鈴木)はい。
先生京都地検の方です。
後藤の指は演奏中に切れた弦が当たって切っただけで大事には至りません。
どうぞお気をつけて。
指は命と同じですから。
来月先生のコンサートを鑑賞させて頂こうと…。
なんのご用かしら?あっ…。
出すぎた真似なのはわかっていましたけど気になってお嬢さんに会ってきました。
咲子さんに会ったんですか?何が原因で揉めたかって質問ね。
男よ。
男?あの子が家を出て行ったのは男ができたからなの。
前川春樹って男。
これがつまらない男なの。
腹が立ったからちょっとプレッシャーをかけてやったの。
(宏子)あなたの音楽評論なんて最低よ。
それにあなたの大学の学長は私のファンなの。
私のひと言であなたはクビよ。
やめてお母さん。
(前川春樹)また見てやがる…。
咲子と別れてくれるなら今と真逆の事を言ってあげる。
あなたは最高。
教授にすべきだってね。
いくらなんでもそれは…。
親として正しいかどうかなんて話はしないでね。
私を支えるのが咲子の役目なの。
絶対に。
(宏子)武田帰るわ。
車を出して。
(武田祐二)はい。
お疲れさまです。
(鈴木)あきれていらっしゃるでしょうね。
いや彼女ほどのアーティストなら多少の傲慢さは芸術性を高めるためには必要な事ですよ。
(鈴木)彼女は横暴に見えるかもしれませんが本当はとても繊細です。
公演の際も…。
今日の演奏は絶対に失敗するわ。
ああ…。
お母さんなら大丈夫。
神様がくれた才能があるんだから。
自信持って。
お母さんの演奏は最高だもの。
私がついてるから。
(鈴木)いや〜お疲れさまでした。
すばらしかった!今の拍手聞いた?はい。
私の才能を見た?あ〜最高!シャンパン開けましょう。
ええ。
あの拍手は私と咲子に送られたものよ。
これからもずっと二人三脚。
ずっとずっと…。
(鈴木の声)誰も2人の間には入れない。
2人はまさに一心同体でした。
ただ…。
(鈴木)業界関係者の中には娘の咲子さんは後藤宏子の奴隷だとささやく者も…。
奴隷?
(バイオリンとピアノの演奏)何?クラシックなんて珍しい。
うん…心の疲れを癒やそうと思って。
きれいで優しそうな人だね。
そんな写真だけじゃほんとの姿はわかんないわよ。
(メール受信音)あっ章ちゃんからだ。
「いつもご苦労様。
どんなに君が疲れていてもいつも僕が支えているよ」…。
あ〜もうグッドタイミング!超うれしい!なんか変じゃない?突然こんなの。
えっ?なんで?ベテランの先生が言ってたの。
必要以上に肯定的な言葉の裏には否定的な意味もあるって。
それってどういう意味?うーん…。
疲れて支えてほしいって思ってるのはお父さんのほうなんじゃない?ええっ?りん…あんた大人になったわねぇ。
そっか…。
逆の意味もありか…。
(高原)アーティストに最高のパフォーマンスをさせるにはそれを支える黒子の存在が必要だと聞いてはいたけどね。
はい。
偉大な母親に踏み潰されそうになってたんです咲子さんは。
だとしてもあの脅迫状は納得できません。
行きすぎです。
うん…まあどうあれいびつな親子の泥仕合じゃないかね。
まいったねぇ。
後藤宏子さんともお会いしたんですけどなんていうかこう…うまく言えないけど妙な違和感を感じたんですよね。
いやそれがなんなのかはちょっと…。
(携帯電話)あっ…失礼します。
あっ成増さん。
何?あの…例の主婦の勘…当たったようなんだかそうでないような…。
奥歯にものの挟まったような言い方して…。
論旨を明快に!あのお騒がせ娘が殺しに関わってたんだよ。
誰が殺されたの?前川春樹って奴だ。
前川?えっ?
(池内)あなた前川春樹さんの部屋を前川さんが殺害された日の午後6時頃に訪ねてますね。
マンションのエレベーターの防犯カメラにあなたが出入りしている姿が映っているんですが。
前川さんとはどういう関係だったんですか?3か月ほど前母が大学で講演をしました。
その下準備を手伝ってくれたのが大学で働いていた前川さんでした。
それが縁で知り合ってそのあと交際が始まって…。
でも母が前川さんにひどい事を言ったせいで…。
あのお母さんがいたんじゃとても君とは付き合えない。
別れてくれないか?
(咲子の声)彼とは別れました。
あんたはそれを根に持って今回のスプレー騒ぎを起こしたんだね?いや〜驚いた。
ゆうべその殺された前川さんの話を後藤宏子さんから聞いたとこだったのよ。
ひでえ親もいるもんだな。
別れねえとクビだなんてよ。
で殺害したのは娘の後藤咲子さんじゃなかったのね。
ああ。
後藤咲子がCDショップにいた夜7時過ぎガイシャはまだ生きていたし目撃者もいる。
グサリやられたのはそのあとだな。
これが前川さんの部屋ね。
これ…ねえこの血痕は何?恐らく殺害したあとに死体を引きずったか何かしたんじゃないですかね。
なんのために?やっぱり外から死体を見られたくなかったんじゃないですか?だったらカーテン閉めればいいじゃないの。
おかしいわよこれ。
変!お前さんさこの変だ変だ病の相手ちょっと頼むよ。
ちょちょちょちょ…!何何?犯行が行われたのは午後8時過ぎでしょ?ねえもう暗いじゃないの。
そんな時間にどうしてカーテンが開けてあったわけ?大体殺害するつもりだったら目撃されるのを恐れてカーテンは閉めとくでしょ。
(池内)犯行は発作的なもので閉める余裕がなかった。
エレベーターに防犯カメラは?あ〜あ送致前の事件の証拠をなんで見せなきゃならないのかこの悪い頭でもわかるように説明してもらいたいもんです。
乗りかかった船よ。
情報は仕入れておきたいの。
犯行時刻前後エレベーターに乗り降りした人物は全部で11名です。
そのうちマンションの居住者が…。
止めて!この人…。
(家政婦)先生警察の方が来てますけど…。
先ほどから後藤宏子の取り調べが始まってます。
ありえんよあやちゃん。
いくらなんでも宏子くんが娘の元交際相手を殺すなんて…。
私もまだ半信半疑ですが…。
(携帯電話)失礼します。
(携帯電話)池内さん?そう…ありがとう。
たった今後藤宏子が前川春樹殺害を自供したそうです。
(宏子)警察で話した事をもう一度言えっていうんでしょ?言うわよ。
あの日咲子の携帯に電話したの。
そしたら前川の部屋にいるって。
だからあの部屋に怒鳴り込んだの。
咲子はもういなかったけどあの男の顔を見てたらどんどん腹が立ってきて責め立ててるうちに興奮して…。
バカな事したわ。
いいからさっさと起訴して。
事件の経緯はわかりました。
ただ…いくつか疑問があります。
まずあなたは前川さんを刺したあと前川さんの遺体を動かしてますね。
それはなぜですか?それに犯行時カーテンを開けていましたね。
午後8時過ぎ。
普通ならカーテン閉めてる時刻ですよね?あなたの質問の意味がわからないわ。
カーテンの事を聞いてる…。
留置場って眠れないのよ。
疲れたわ。
今日はもうしゃべらない。
全部黙秘よ。
あの黙秘の意味は何?カーテンの事遺体を動かした理由。
彼女一切答えてないわ。
それに弦で切ったはずの指包帯も傷もなかった。
井森さんあなた後藤宏子の態度になんか違和感感じなかった?えっ?わたくしは被疑者に対する印象を述べる立場には…。
はいはいわかりました。
しかしこれはすばらしい。
あっそれ任意で同行を求めた際後藤宏子が見てたって画集ですね。
うん。
このページが開かれていたそうだ。
ん?うっ!やだ〜!不気味な絵…。
ちょっとちょっと…ちょっと見せて。
(井森)これはスペインの画家ゴヤの傑作のひとつ『わが子を喰らうサトゥルヌス』です。
ローマ神話を題材に描かれていてその戦慄的な画風は近代絵画の道を開いたとして…。
講釈は結構!わが子を喰らう…。
(チャイム)これお母さんにあげたのあなたね?家を出る時突きつけてやりました。
お母さんはまるでこの怪物と同じよ!どうしてそんなふうに過激にお母さんを攻撃するの?母を憎みたかったから。
憎みたい?憎んでるじゃなくて?わかってもらえないと思います。
でも…聞かせて。
母は小さい頃から天才バイオリニストと言われていました。
父は母に初めて会った瞬間に母を一生のパートナーと決めたそうです。
母と母の奏でる音楽に全てをかけた父は母が私を産むのを喜ばなかったそうです。
子育てのために音楽から離れなければならないから?ええ。
でも母は私の事をかわいがってくれました。
時間の許す限り面倒も見てくれましたし…。
でも子供って敏感ですぐわかるんです。
(バイオリンとピアノの演奏)
(咲子の声)母と演奏が我が家では一番大事。
私は後回し。
父は完璧に母を支えていました。
そして何度も聞かされました。
後藤宏子という作品を作り上げるのは父と私の使命だって。
お父様は確かあなたが高校生の時…。
死に際に私の手をにぎってあとは頼むと…。
それであなたはお父様に代わって宏子さんの世話をした。
周りから見ると奴隷のように…。
24時間いつも一緒。
それが当然だと…。
でも…。
君は君の本当の幸せをつかむ時期に来てるんだよ。
(咲子の声)あの人の言葉で目が覚めたんです。
母から離れないと。
だから…。
わざとお母様に憎まれるような事を繰り返したの?
(鳥の鳴き声)
(鳴き声)もう音楽は一切聴かないって決めたのに音のないのは寂しくて…。
家を出てもう1か月も経つのにまだ慣れなくて…。
これじゃダメなのに…。
早く自立しなきゃいけないのに…。
第一発見者が姿を消した?そんな報告受けてません。
平林が教えてくれなかったら見過ごすところでした!バカ野郎。
なんでもかんでも報告しやがってこの野郎。
いやでも間違った事をしたつもりは…。
いい?平林。
心がきれいだと顔もきれいになるの。
間違ってもこの2人みたいになっちゃダメよ!いい?で?河合加奈。
前川が勤めていた音大の大学院生で実は1年半前から前川と付き合ってたそうです。
じゃあ前川は二股かけてたって事?そのようですね。
その事咲子さんは?いや河合加奈は友達に咲子のほうは私がいるのをまるっきり知らないのよって言ってたらしいよ。
じゃあ母親の後藤宏子は?彼女がもし前川の裏切りを知ってたとしたら…。
この事件にはもう一枚裏があるわ。
部長お待たせしました。
おう。
えーと…マンハッ…。
いも…。
なんでここに?あっ…。
弟さんの知り合いの店だそうだ。
マスターがぎっくり腰でボランティアでお手伝いを。
あっ手間賃はフリーです。
8の字8の字8の字8の字…。
(高原)では後藤咲子の家出や脅迫状は母親に嫌われるためにあえてやった行為だったと?ええ。
前川さんと交際したのも親離れのための第一歩として選んだ道のようです。
ほんとに宏子くんの犯行なのかねぇ?私にはまだどう受け止めていいのかわからんのだよ。
親離れも子離れもまた難しい。
りんがまだ小さかった頃私はいつもりんの手を引いて買い物に行ってました。
でもそのりんが自分の友達と遊ぶようになって…。
つなぐ手をなくした時の体半分なくしたようなやるせなさと寂しさ。
今でもはっきり覚えてます。
日本クラシック界の重鎮後藤宏子もうまく子離れができていないという点ではごく普通の母親であるとこうおっしゃりたいんですね?上品なバーテンダーはお客の話に口を挟まないものよ。
新米なものですから。
それとこれはあくまでもわたくしの個人的な感想なのですが先日の後藤宏子の演奏は以前のような情感に欠けていたかと…。
うんちくは結構。
ねえ井森さんほんとはさワイドショー好きでしょ。
週刊誌とかすごい読んでるでしょ?それは好奇心です。
前川って奴の裏が見えてきたぜ。
わあ〜成増さん仕事が早い!まあこの件には部長も関わっておいでだからよ。
すまないねぇ。
公私混同なのはわかってるんだが…。
万事承知の上ですよ。
前川は音楽評論っていうのを専門にやってるんだが2週間前『月刊女性新報』の編集部を訪ねてました。
(井森)『女性新報』といえば著名な女性たちの堅めのインタビューをよく掲載してる雑誌ですよね。
やっぱり読んでるじゃない!井森さんなんで!?いいのこの人は無視して。
ねえ前川はそこに記事を持ち込もうとしてたの?たぶん後藤宏子に関する記事だろうな。
娘と親密なのを利用して後藤宏子の怪物的母親の素顔を暴いた。
親子のいさかいだけの記事じゃ編集部も簡単には乗らんだろう。
その前川って奴ひょっとして宏子くんの何かインパクトがある事実をつかんでたんじゃないか?インパクト…。
(桜井麗子)う〜ん!夏はこれに限る〜!
(漆原さやか)お〜っとっとっと…!
(吉川香織)ちょっ!全然こっち流れてきやへんやないの!
(柿野たまこ)もっとこっちにも流してください!
(香織)どいて!あやさんここのもらうで!あやさん!聞こえてるの?ダメダメ。
あやさん事件の事で頭がいっぱいだから。
人の話全然耳に入ってない。
えっ?ああ…。
耳に入ってないって…。
聞こえない?その指どうかなさったんですか?スケジュールの調整のほうちゃんとしといて。
じゃああれ…。
カモフラージュ?担当直入に言います。
後藤さんあなた聴力が落ちているのでは?私の声が聞こえてないのでは?早くして。
もう取り調べは結構。
私の声聞こえてますか?やっぱり。
突発性難聴で左耳はまったく…。
(井森)だとしたら演奏家としては致命的だ。
あの指のケガは難聴から来るミスをカモフラージュするためね。
病気の事咲子さんは?わかったのはあの子が家を出てったあとだったから…。
検事取り調べを続けますか?右耳は聞こえるわ。
バイオリニストにとって難聴は大事件ですよね?奈落に突き落とされた気分よ。
底のない暗い穴に…。
(バイオリンとピアノの演奏)
(宏子の声)穴の中で初めて自分と向き合った。
母親としての自分と…。
あの子を踏み台にして演奏してきた…。
母親として最低だわ。
前川が雑誌に掲載しようとしていたのはあなたの難聴についての記事だったんですね。
あの男の勤めてる大学の学長に相談したの。
このままだと引退だわって。
それを立ち聞きしてたようね。
(宏子)咲子に近づいた本当の目的は何?彼女が積極的だったんですよ。
それに僕の音楽評論を認めてくれる人がなかなかいなくて…。
後藤宏子の音楽人生とその幕の下ろし方…。
つまりあなたを襲った突発性難聴についてのストーリーを書けば絶対に受ける。
いくら?
(前川)えっ?その記事言い値で買うから咲子は傷つけないで!あなた咲子さんのために自分を悪者にして…。
私のひと言であなたはクビよ。
別れてくれないか?あの子を守ってやりたかった…。
一人の母親に戻った後藤宏子とても弱々しく見えました。
栄光からの転落。
強気でいられるわけがない。
で前川殺害の動機は?再度前川から彼女の難聴だという記事を暴露週刊誌が欲しがってると言ってきたそうです。
要するにゆすりだな。
はい。
あまりの卑劣さに前川に会いに行きそこで口論になり刺してしまったと…。
あやちゃんよくやってくれた。
もういいよ。
起訴手続きに入ってくれたまえ。
はい。
ただ一点だけ…。
はあ?娘の咲子さんにも何度かお会いして彼女の人となりを少しだけ知る事ができたんですけど事件当日のスプレー騒動あの振る舞いだけがどうしても咲子さんのものとは思えないんですよね。
あやちゃんの悪い癖だ。
えっ?単なる考えすぎだよ。
急げばあと2件片付きます。
スプレー事件…。
それにカーテンも…。
時間を無駄にされないように。
(携帯電話)あっこちらを先に!せっつかなくてもちゃんと手続きは済ませるわうんちくロボ。
成増さん何?ここに例の河合加奈がいる。
話を聞いたんだが…。
私とんでもない思い違いを…!もう一度確認したいんです。
事件のあった日の午後8時頃向かいのマンションで男性と女性が口論してたんですよね?私のぞきの趣味はないんですよ?けど洗濯物取り入れたりしてここに出たら自然と見えてしまうんですよ。
そうですよね。
カーテン開いてたら見えちゃいますもんね。
であのその時口論してたのは確かにこの男性とこの女性ですか?ええっ…?もう全て話したのに今度はなんなんですか?実は新たな供述が出てきたんです。
前川さんの遺体の第一発見者の河合加奈さんが事件の前日咲子さんと会ってたんです。
(咲子)彼があなたと?じゃあなんで私と?
(加奈)鈍いなぁ。
あいつ本を出したかったのよ。
あんたは利用されただけ。
その時の咲子さんにただならぬものを感じた河合さんは前川さんの遺体を発見した時とっさに思ったそうです。
自分のせいだって。
自分が前川さんとの関係をしゃべったから咲子さんが彼を…。
違う!咲子は…咲子は…。
(咲子の声)ほんとに私を利用したの?もう済んだ話だ。
それに君の母親の音楽家としての寿命もあとわずかだしな。
何これ?なんなの?なんなのよ!恐らく咲子さんは前川さんとあなたの難聴に関する記事で口論となり前川さんを殺害した。
そしてその部屋からあなたに連絡を入れたんでしょう。
あなたはすぐマンションを出るように命じた。
この写真を見てください。
前川さんのマンションの防犯カメラに映った男性です。
私この男性によく似た人に会ってます。
武田祐二さん。
あなたの付き人です。
私はこう考えました。
あなたが部屋に入った時前川さんはすでに殺されていた。
(武田)先生!ああーっ!!ああっ!!先生!武田…。
(宏子)死体を隠して!ううっ…。
先生こんな事をしても…。
いいからあっちに立って。
私を見て。
あなたはまだ前川さんが生きているように装った。
アリバイ工作のためにCDショップに行って騒ぎを起こせと命じたのもあなたですね?咲子が犯人だっていう証拠があるんですか?まだかばうんですか?咲子さんは必死であなたから自立しようとしてます。
状況証拠だけじゃ有罪にはできないわ。
寂しい寂しいって言いながらもがいてます。
私が殺しました。
音楽のためにあの子を食らうだけ食らってきたのよ。
だったらこうするしかないじゃない!今度はあの子の罪を食らってやるの。
あなたの行為は自己満足です。
守るつもりが結局は縛っている。
抱きしめていては見えないものが離れて見える事もあります。
その手を離してください。
どんなに寂しくても親は子供の手を離さなくてはいけないんです。
後藤さん。
どうしました?前川春樹さんを殺したのは母じゃありません。
俺はこいつを週刊誌に売る。
まあそんな事しなくてもどのみち後藤宏子は終わりだ。
やめて。
お願い。
離せよ!ええ…殺したのは…。
あの子です…。
あんたが?離れよう離れようとしてたのに母が侮辱されるのは我慢ならなかった。
でももう自分の足で歩かないと。
お母さん頑張って練習しないと。
咲子…。
後藤さんは証拠隠滅と犯人隠避の罪を犯しましたが一人娘を思っての事。
取り調べ中に全てを供述した点を考慮し…。
不起訴か?はい。
あやちゃんよくやってくれた。
感謝するよ。
いいえ。
宏子さんのマネジャーが言ってました。
難聴でも演奏を続けてる音楽家がいる事を知って宏子さんこれからはボランティアでアマチュアの楽団で演奏活動を続けるそうです。
ふ〜ん。
タフだねぇ。
偉いよ。
今度ぜひ一緒に聴きに行きましょうね!ああ。
だが子離れなんてほんとにしなくちゃならんのかね。
えっ?もしかして部長まだリンダちゃんと一緒にお風呂に入ってるんじゃ…。
それが今年の始めに拒否された。
あれ以来砂を噛むような毎日だよ。
あの…お顔が険しくなったのは部長職の重みじゃなくてそのせい?正直絶望してる。
リンダは私の太陽。
リンダの笑顔こそ希望。
明日への勇気!リンダの愛らしさこそが仕事への活力!なのに…なぜなんだ!何があの子を変えた!?好きな男でもできてしまったのか?男ってめんどくさーい。
フフフ…。
(ため息)
(爆発音)
(パトカーのサイレン)
(榊マリコ)泰乃さん!ケガはない?
(吉崎泰乃)大丈夫です。
(宇佐見裕也)爆発って一体何が?
(権藤克利)テラスのほぼ中央テーブルの下に置かれていた段ボール箱が爆発したそうです。
私は隣の席にいたんですけどちょうど帰ろうとしたところだったから…。
(相馬涼)やっぱ悪運強いっすね。
ねえ。
イタッ。
(土門薫)彼女の他にテラスには客がいなかったため奇跡的に死傷者は出ずに済んだ。
かなりの威力ですねえ。
スプレー缶や花火などの誤爆では考えられません。
って事は…爆弾。
とにかく始めましょう。
宇佐見さんは爆薬の特定をお願いします。
相馬君は爆発物の破片を全て拾い集めて。
泰乃さんは今日はもう…。
あそこに防犯カメラあります!映像もらってきます。
心配はないようだな。
そうね。
段ボール箱が置かれるのを目撃した人はいなかった?店員に確認を取ったがここは外から直接出入りが出来るため気づかなかったそうだ。
そう…。
防犯カメラの映像に怪しい男が映ってました。
置くところまでは映ってませんでしたけど。
爆弾を仕掛けたのはこの男で間違いなさそうね。
(日野和正)さすがに顔は隠してるか…。
ただ妙な癖っていうか…体が小刻みに前後してて。
確かに。
(日野)そのルートで移動したゲソ痕はこれだね。
店員や他の客よりも後に付けられてる。
26センチのスニーカー。
(日野)ああ。
有名メーカーの量産品だから流通経路から調べるのは難しいだろうな。
ふう1000ピースのジグソー並みに歯ごたえがありましたよ。
遊びと勘違いしてないだろうね?
(泰乃)これが爆破装置?
(相馬)市販のタイマーと乾電池。
泰乃さんでも作れます。
だとしたら問題は爆薬の方か。
爆薬の組成です。
工事用のダイナマイトや黒色火薬市販の花火などとも違う組成でした。
爆薬の方はオリジナルだったんだ…。
科警研のデータベースで過去の爆弾事件に使われた爆薬の成分と比較分析してもらった結果がこれです。
(泰乃)これそっくりじゃないですか。
(日野)連続金融機関脅迫事件ってあの大阪で起きたやつ?ええ。
なんですか?それ。
ああ15年前の事件だから相馬君が覚えてないのも無理はないね。
15年前…。
(佐久間誠)15年前と同じ爆薬が使われたっていうのか?爆薬の組成を見る限り今回のものと酷似しています。
なんてこった…。
どんな事件だったの?事件の発端は大阪にある梅田信用金庫本店に送られてきた小型の時限爆弾だった。
同封された脅迫文は1000万円を要求する内容で要求に応じない場合は月末の25日複数の支店を選び爆弾を仕掛けると書かれていた。
大阪府警の捜査本部は市民の混乱を避けるためという理由でマスコミにかん口令を徹底させたうえで犯人グループの要求を拒否。
同時に近隣の京都府警兵庫県警奈良県警に協力を要請。
捜査員を総動員して2府2県全ての支店に厳戒態勢を敷き25日を待った。
ところが…。
(捜査員)離れて!みんな逃げて!さあ早く!爆弾ではなく時限式の発炎筒だった。
単なる愉快犯だったって事ですか?いやその直後に犯人グループは新聞社とテレビ局に自分たちが梅田信用金庫を脅迫していたという事実を公表した。
え?そのせいで事実を公表しなかった大阪府警本部と梅田信用金庫に市民の非難は集中したんだ。
そんなさなか今度はなんば銀行に同様の脅迫文と時限爆弾が送られてきた。
捜査本部はやむなく脅迫の事実を公表しなんば銀行からは客足が途絶え経営的にも大きなダメージを負った。
捜査本部は犯人グループの割り出しに全力を注いだが尻尾をつかむ事すら出来ないまま受け渡しの日が来た。
犯人グループは金を持った行員を電話で様々な場所に何度も移動させたあげく…。
結局最後まで姿を現さなかった。
つまり犯行は失敗に終わった…。
いやマスコミはそうは報じなかった。
警察が追い回したせいで犯人が接触出来なかったと書き立てたんだ。
それでも捜査本部は粘り強く犯人に繋がる情報を集め捜査を続け犯人グループが滋賀県の山間にある農場に潜んでる事を突き止めた。
滋賀県警の協力を得て大阪府警の捜査員たちはアジトを急襲しようとした。
しかし捜査員が到着した時にはアジトだった民家はすでに爆発炎上していた。
おい消防に連絡!はい!焼け跡から男女5人の遺体が見つかりうち2人は農場の経営者崎本善彦と妻の清江だと判明しさらに…。
子供が!子供がいました!どこだ?あっちです!大丈夫か?おい!崎本夫妻の6歳になる娘の菜津美が納屋の近くで気を失った状態で発見された。
残りの爆弾は見つかったの?うん。
周辺の倉庫から複数の爆弾と原料となる肥料や大量の薬品が見つかった。
なおかつ死亡した崎本善彦は工科大学を出て農場を経営するまでは化学製品工場に勤めていた事も判明した。
大阪府警は崎本善彦が一連の金融機関脅迫の主犯であり捜査の手が迫ってきた事を察したため仲間や妻を巻き込んで自らも爆死したんだろうとそういう判断を下した。
結果事件は崎本善彦夫妻他3名計5名を被疑者死亡で送検し幕引きとなった。
佐久間部長に折り入ってお願いがあります。
ん?大阪府警に当時の捜査資料や証拠品を送ってもらうように要請してください。
15年前と同じ成分の爆薬が使われた以上事件との関連を調べる必要があります。
自分からもお願いします。
もし関連があれば事件の早期解決に役立つはずです。
そこまで言うなら…お前たちが直接頼んでみたらどうだ?頼むって?科捜研の榊です。
実は…。
(大西武政)佐久間君から報告は聞いてる。
捜査資料と証拠品が見たいそうだな。
大西本部長は大阪府警時代刑事部長として捜査本部の指揮を執られたと伺っています。
今回の爆発事件との関連を調べるためにもぜひ。
(大西)15年前に…事件は解決している。
お言葉ですが主犯の崎本善彦が金融機関を脅迫した動機や3人の仲間との関連など不明な点は多々残ってると思いますが。
当時の我々の判断に異を唱えるつもりか?いえ。
その辺りも含めて捜査の責任者であった本部長の口から当時の事をお伺いしたいのですが。
ハッハッハ!そりゃ無理だ。
いいか?大阪から兵庫京都…刑事畑を歩いてきてな世間を騒がせる事件は数限りがない。
カタがついた事件は全て忘れる!つまり終わった事件の事は思い出せないと?この歳だ!それでしたらやはり当時の資料と証拠品を見せてください。
手配しよう。
ありがとうございます。
うーんいい香りだ。
そうですね。
なんだ君もわかるのか?イエス。
あっ。
大阪府警から届きました。
(日野)おっ。
15年前の捜査資料と証拠品ね。
でもこれ調べてなんかわかるんですか?何がわかるか調べてみないとわからないでしょ。
さあ手分けして。
はい。
だったら爆薬の成分分析は私が。
私も手伝います。
(日野)確か脅迫文があったよね。
それもらおうか。
(相馬)時限装置の方は当然僕ですよね〜。
音声テープがあるんだ…。
じゃあ私これやります。
間違いありません。
今回の爆薬の組成とほぼ同じです。
15年前に作られたものが使われた可能性は?いや…不安定な爆薬を長期間保存するのは危険が大きすぎます。
それよりは新しく作られたと考えた方が。
だとしたら何者かが15年前の事件を再現しようとしている事になるわね。
仮に模倣犯だとしても今回爆発が起きたのはコーヒーショップだし脅迫文も届いてないんですよね。
犯行の手口が違う気がします。
一体何が狙いなのかしら…。
(ノック)はい。
(泰乃)マリコさん。
犯人の声が残ってたんですけど…。
それってお金の受け渡し場所を指示した電話の録音?ええ。
でもそれが…。
(女の子の声)「国道173号線を綾部方面に向かえ」「能勢の道の駅でプレゼントを持って車を降りろ」これが犯人の声?
(相馬)声紋を調べたら5歳から7歳くらいの女の子でした。
多分内容もわからないまま無理やり読まされた的な感じ。
お金の受け渡しの指示に子供の声を使ってたんですね。
だけど当時そんな事報道されなかったはずだけど。
(相馬)当時の捜査本部が発表を控えたんでしょう。
だって犯人に繋がる決定的な証拠なわけだし。
主犯とされた崎本善彦には娘がいたわ。
アジトの民家が爆発したあと離れた納屋の近くで救出された。
(日野)崎本菜津美当時6歳。
だとすると崎本って犯人は金の受け渡し方法を自分の娘に言わせた可能性が高いって事になるな。
なんだってそんなひどい事するんですか!?私がやらせたんじゃないからね。
はい…。
泰乃さんどうかした?私この声に聞き覚えがあるんです。
どういう事ですか?小さい時隣に住んでた幼なじみにそっくりで…。
「能勢の道の駅でプレゼントを持って車を降りろ」間違いありません。
これその子の声です。
その子って?茅野瑞子ちゃん。
昨日爆発があった時十何年かぶりに会おうってあの店で待ち合わせたんですけど来なかったんです。
え?
(チャイム)はーい。
ああすいません。
茅野瑞子さんにお届け物です。
こちらに…。
あっはい。
どうも。
はいどうも。
ご苦労さまでした。
「涙の数だけ強くなろうよ風に揺れている花のように」「自分をそのまま信じて…」これがさっき言ってた幼なじみ?すみません仕事中なのに。
でもどうしても気になっちゃって…。
SNS…。
(泰乃)はい。
卒業生とか探すのに便利だっていうから始めてみたら彼女も今京都の大学に通ってるってわかって。
メールで連絡を取って会う約束をしたんですけど…。
茅野瑞子さん。
子供の時に隣に住んでたって言ってたけど泰乃さんの出身は確か…。
奈良です。
隣の家が瑞子ちゃんちで私より7歳年下ですけど歌が好きで私によく歌を聞かせてくれて。
私もなんだか本当の妹みたいに思えて。
そうだったの。
なのに突然何も言わずに引っ越していなくなっちゃって…。
それっていつ頃の事?えっと…私が小学校を卒業する前だったから16年前です。
あの事件の1年前…。
ねえ爆発があったあと彼女に連絡は?何度もメールを送ったんですけど返信とか全然なくて。
住所はわかる?いえ…。
あでもあのコーヒーショップで前にバイトしてたってメールにあったから店に問い合わせれば教えてもらえるかも。
じゃあお願い。
すみません付き合ってもらっちゃって。
ううん。
可能性が少しでもあるのなら決して無駄じゃないわ。
あっこのマンションです。
(チャイム)いませんね…。
(ドアの開く音)
(ノック)あれ?開いてますね。
瑞子ちゃん?
(泰乃)瑞子ちゃん!?血痕…。
(泰乃)え?もしもし土門さん。
鑑識班をお願い。
場所は右京区嵯峨寺前町…。
(権藤)この部屋の住人は茅野瑞子。
英京大学の文学部3回生です。
彼女の幼なじみなの。
15年前の事件に関して確かめたい事があって訪ねたんだけど…。
まさか誘拐されたんでしょうか?それはまだ…。
でも床にO型の血痕が残ってた。
SNSにあった血液型もOです。
やっぱり瑞子ちゃんの身に何かあったはずです!わかった事がある。
茅野瑞子の父親は市内で食料品の輸入会社を経営している。
爆発のあったコーヒーショップはその子会社だ。
え?
(茅野孝英)瑞子が…。
(権藤)部屋から血痕が見つかっています。
お嬢さんの行方も今のところわかっていません。
なんらかのトラブルに巻き込まれた可能性も考えられます。
いやまさか瑞子が…。
お嬢さんは昨日爆発があったコーヒーショップでアルバイトをされていましたね。
(茅野)はい。
ひょっとすると爆発事件とお嬢さんが行方不明になった事の間にはなんらかの関連があるかもしれません。
いやそう言われましても私には…。
茅野さん。
16年前までは奈良にお住まいでしたね。
はい。
ところが突然その家を引き払われたと聞いていますが。
お恥ずかしい話当時事業に失敗しまして女房にも逃げられて瑞子と2人で夜逃げ同然で奈良から引っ越したんです。
そのあとはどちらにいらしたんですか?そのあとはあちこち転々と…。
(ノック)社長大変です!今来客中だ。
ロビーに爆弾が!すみません!
(権藤)京都府警です!とにかく下がって!皆さんも!土門だ。
カヤノフードコーポレーションのロビーに爆弾らしきものを発見した。
警備部に爆発物処理班の出動を要請してくれ。
土門さん。
解体処理中だ。
何!?爆発はしない?はい。
バッテリーと信管を繋ぐコードが切断されていました。
ですからタイマーが起動しても通電しないため爆発の恐れはありません。
切断されていた…。
爆薬は取り除きましたのであとはそちらにお任せします。
ありがとうございます。
みんなお願い。
(相馬)はい。
(銃声)間違いないですよ。
この前爆発したやつと同じ作りです。
唯一違うのはコードを切断している点ね。
一回完成させてから切ったみたいですね。
でもどうして…。
防犯カメラの映像を確認したんですけどこの辺りは死角になっていて不審な人物も映っていませんでした。
あとどれぐらいかかる?証拠採取は終わったからそろそろ科捜研に戻るわ。
その前に寄り道だ。
ついさっき斉明橋で男性の不審死体が発見された。
胸部に銃創。
弾は貫通。
かなり出血しているから死因は失血死の可能性が高いわね。
薬莢も見つかっています。
拳銃はオートマチックですかね。
マリコさん!拳銃の弾ありました。
火薬残渣…。
至近距離から撃たれてる。
(権藤)被害者の身元がわかるものは何も見つかってません。
犯人が持ち去ったのかも…。
(泰乃)マリコさんこの人…。
どうした?最初の爆弾を仕掛けた男と背格好が似てませんか?確かに同じぐらいだとは思うけど…。
まさか爆発事件の犯人って事ですか?まだ断定は出来ないわ。
とにかく解剖に回して。
(風丘早月)はい。
はい戻します。
はい。
銃創以外に体表に目立った外傷はなし。
開きます。
はい。
心臓には命中してないけど肺静脈がやられてる。
かなり出血した事は間違いない。
先生。
気管のこのあたり…。
気管や気管支が炎症を起こしてる。
死因とは関係ないと思うけど。
念のため粘膜を採取してもらえますか?了解。
ゲソ痕の中に1件目のものと同じものが見つかった。
26センチのスニーカー。
メーカーも磨耗具合も同じだったよ。
やはり1件目と2件目は同一犯だったんですね?ただ今回は何度か行きつ戻りつしたみたいでやたら数多く残ってたけどね。
(相馬)あっ時限装置の部品も全て一緒でしたよ。
同一犯なのは僕が保証します。
爆薬の成分も一致したし私も同一犯だと思いますが問題は信管からのコードが切断されていた点ですね。
(日野)うーん…。
最初から爆発させる気はないけれどもその気になればいつだって爆発出来るというメッセージだったとかね。
でも1件目は爆発してますよ。
あっそう。
それにタイマーは動いていたのよね。
爆発させる気がなかったのならどうして…。
とりあえずその件は保留にして河原の射殺体の方にいこうか。
拳銃に関して何かわかった?銃弾は7.62ミリのトカレフ弾でした。
線条痕を照合しましたけど過去の事件で使われた形跡はありませんでした。
回収された薬莢から見て中国製の密輸トカレフですね。
裏サイトでの取引価格は最安値がえ〜…。
値段まで調べろとは言ってないよ。
結構苦労したのに…。
みんな苦労してるんだ。
はい続けて。
着衣に付着していた火薬残渣の状態から拳銃との距離は50センチから1メーター。
至近距離から撃たれたのは間違いありません。
犯人が被害者と面識があった可能性も考えられるわね。
(泰乃)それとズボンの裾からこんなものが出ました。
砂?現場の土と比較してみたんですけど全然違いました。
だったら私が詳しく調べます。
(泰乃)お願いします。
私の方はこれが。
被害者の気管に内出血の跡があったので粘膜を調べたところ菌が検出されました。
(日野)百日咳菌…。
被害者は百日咳にかかっていたんです。
じゃあ咳が止まらないはずですね。
(咳)もしかして…。
これ最初の爆発現場…。
(泰乃)ここ!なるほど…咳をする動きだったんだ。
やっぱり拳銃で撃たれたのはこの男ですね。
もしもし土門さん。
拳銃で撃たれた被害者は百日咳にかかっていたわ。
それともう一つその人最初の爆破事件で防犯カメラに映っていた男と同一人物の可能性がある。
土門さんガイシャの受診記録が見つかりました。
担当医に写真で確認してもらいました。
(権藤)名前は堀江誠一26歳。
京南大学の理学部を中退して現在は無職です。
爆薬を作る知識や技術はあったようね。
念のため15年前の事件との関わりも調べた。
当時は家族で埼玉に住んでいて両親もあの事件とは無関係だった。
そう。
(相馬)これレンタカーの領収書です。
ひと月以内だな…。
調べろ。
はい。
靴のサイズはゲソ痕と同じ26センチ。
でも現場にあったゲソ痕と同じ靴はありません。
恐らく射殺した犯人が殺害現場から着衣と一緒に持ち去ったのね。
身元を隠すためなら随分用心深い犯人だな。
爆弾を仕掛けた被害者の姿が防犯カメラに映る事も足跡が現場に残る事も予測していたのね。
だが…どうして殺す必要があったんだ。
(日野)2件目の現場の足跡の詳細分析やっと出来たよ。
ありがとうございます。
採取出来なかったところを推測で補足した結果死んだ堀江って男はいったん爆弾を置いたあともう一度戻ってきた事がわかったよ。
爆弾の近くにかかと部分のない足跡がありますけど。
屈み込んだんだろうな。
こう…爆弾に向かって…。
やっぱり…。
どういう事です?被害者はいったん爆弾を仕掛けたけど引き返してきてコードを切断したの。
なんのために?理由はわからないけどその結果爆弾は爆発しなかった。
まさか仲間を裏切ったから殺された…。
被害者に付着していた砂から微量ですが爆薬の原料の成分が検出されました。
(泰乃)やはり堀江誠一が爆弾を作っていた。
それと海水の成分も含まれていました。
って事は…爆弾を作るアジトが海の近くにある!勝ち誇ったように言うけどね京都から行ける海なんていくらだってあるよ。
被害者はレンタカーを借りてたわよね。
ええ。
このひと月かなり頻繁に。
そっか。
権藤刑事に連絡して車両番号を送ってもらいます。
アジトがあるとしたらそこに姿を消した泰乃君の幼なじみも…。
ええ。
犯人はなぜ茅野瑞子さんを連れ去ったのかしら。
(泰乃)はい。
よろしくお願いします。
吉崎研究員に荷物が届いています。
はい。
ご苦労様です。
あったんだ…。
泰乃さんそれ…?実家から送ってもらったんです。
(泰乃)子供の頃の誕生会のビデオテープ。
この中に瑞子ちゃんの声が入ってるはずです。
ひょっとして15年前の脅迫事件の証拠と比べるため?
(相馬)すごい執念…。
アイタッ。
「泰乃お姉ちゃんお誕生日おめでとう!」「プレゼントです!」ありました。
ちょっとデータ送ってもらっていいですか?
(泰乃)送ります。
(相馬)はい。
「泰乃お姉ちゃんお誕生日おめでとう!」「プレゼントです!」
(女の子の声)「国道173号線を綾部方面に向かえ」「能勢の道の駅でプレゼントを持って車を降りろ」一致した…。
やっぱり瑞子ちゃんの声だったんだ…。
事件に使われたのは主犯の崎本善彦の娘の声じゃなかったんですね。
この結果を土門さんに報告するわ。
こちらです。
科学捜査研究所の榊と申します。
娘は…瑞子は見つかったんですか?お嬢さんの居場所を一刻も早く見つけるためにもご協力願います。
こちらへどうぞ。
上は16年前5歳の瑞子さんの声。
下は15年前の連続金融機関脅迫事件で犯人グループが金の受け渡しに使った女の子の声。
結果は同じ人物の声でした。
茅野さん…15年前どこで何をなさっていたのか教えて頂けませんか?あなたの会社に爆弾が仕掛けられた事お嬢さんが行方不明になった事…全て15年前の事件に関係があるんじゃないんですか?いやぁ…なんの事か私にはさっぱり…。
あなたひょっとして15年前の連続金融機関脅迫事件の…。
もうよろしいですか!わけわかんないっすねえ。
自分の娘がいなくなったのに何も話そうとしないなんて。
とにかく今は犯人がどこで爆弾を作っていたのか…。
それを調べるしかないな。
はい。
泰乃さんどう?殺された堀江誠一が借りたレンタカーの車両番号をNシステムで調べてみたんですけど…。
(泰乃)借りていた時間内に記録されたのはこれが全部です。
日本海へ向かう国道にはないね。
(泰乃)高速道路を使った形跡もありません。
通過したのはこの東山だけです。
山科方面へは何度も行ってるのか。
でもここのNシステムは通過してないんです。
うーん…どっか途中で曲がったのかな。
この辺は山ん中っすね。
でも海水の成分を含んだ砂…。
出ました。
(宇佐見)ここを見てください。
ヨウ素の割合が通常の海水より高い。
日本周辺の海水のデータと照らし合わせても一致するところはありませんでした。
しかも天然のヨウ素より純度の高いヨウ素が検出されているって事は…。
ええ。
可能性があるとすれば…。
水族館?海水で魚や海藻を飼育する際雑菌を殺菌するために紫外線などの殺菌灯を使う他に海水に直接ヨウ素を入れる方法があるの。
恐らくこの砂は魚を大量に飼う施設で人為的に殺菌を施した水槽の砂の可能性が高いです。
そうか…それなら海のそばでなくてもいいんだ。
じゃあ…犯人のアジトは水族館とかペットショップ!海水魚のいる水族館は…。
ダメです。
海の近くばかりで京都からはかなり離れてます。
うーん…ペットショップで海水魚を取り扱ってる店を絞り込んで…。
(泰乃)堀江の車が向かった先にはありませんね。
アジトに使うんならもうやってない店とかじゃないかな。
そうか。
えーっと…。
(相馬)あった!
(泰乃)海水魚も取り扱ってるしおととし閉店してます。
もしもし土門さん?犯人のアジトと思われる場所がわかったわ。
東山の京洛熱帯魚センター。
(無線)「府警本部から各移動へ出動要請」「マル被の所在が判明」「東山京洛熱帯魚センターへ急行せよ」「マル被は拳銃を所持している可能性あり」「銃器対策班にも緊急出動を要請」私も現場に行きます。
いや犯人は拳銃も持ってるし爆弾だってあるかもしれないんだ。
危険だから土門さんたちに任せた方が…。
茅野瑞子さんが人質になっている場合はこれが必ず役に立つはずですから。
待ってください。
私も行きます!わかったわ。
相馬君。
はい。
急行中の全車両に告ぐ。
犯人グループは爆弾を所持している可能性が高くなおかつ女性を人質としているケースも考えられる。
車両はサイレンを切り現場には近づかないように。
(隊員)各班準備完了です。
(山村)よし。
赤外線サーモグラフィー付きカメラです。
お願いします。
了解しました。
おい。
こちらモニターの用意をします。
お願いします。
(山村)よし。
前へ。
サーモグラフィーに切り替えて。
はい。
ゆっくり右から左に。
(相馬)まさかもう逃げたあとだとか?
(権藤)いました!止めろ。
感度を上げて拡大して。
はい。
人間の体温のようです。
倒れているのか?ええ…。
動かないけどこれだけの熱を感知している以上生きているのは確か。
他に誰かいないか慎重に確認しろ。
誰もいないわ。
隊長。
ではお願いします。
了解。
全班突入!人質と思しき若い女性を発見!
(隊員)「脈はありますが呼びかけには応えません」「救急搬送を要請!」
(泰乃)瑞子ちゃん…。
探索終了。
爆薬並びにその他の危険物は発見出来ませんでした。
そうですか…。
了解しました。
現場検証に入ります。
おい。
鑑識呼んでくれ。
はい。
行けるか?ええ。
瑞子さんに付き添ってあげて。
えっ…でも…。
相馬君もいるしこっちは大丈夫。
そばにいてあげて。
ありがとうございます。
(サイレン)あの彼女の容体は…。
命に別条はありません。
目立った外傷も見られませんから恐らく気を失ってるだけかと…。
そうですか。
よかった…。
瑞子ちゃんじゃない…。
あなた誰?うっ!どうだ?ここで爆薬が生成されたのは間違いなさそうね。
そっちはどう?
(相馬)かなりの数のゲソ痕です。
鑑識が到着したらすぐに採取してもらわないと。
(権藤)犯人グループはかなりの人数がいたようですね。
一体どういう連中なんだ…。
(携帯電話)土門だ。
どうした?何!?緊急配備を…!こっちもすぐ向かう!何かあったの?ここで保護した女性が救急隊員を襲って逃げた。
えっ。
泰乃さんが一緒のはずじゃ…。
彼女も襲われた…。
2014/05/16(金) 13:05〜14:56
ABCテレビ1
京都地検の女8 #7+科捜研の女11 #15[再][字]
京都地検の女8 #7「娘から母への脅迫状 移動した死体の謎!!」
科捜研の女11 #15「マリコ最後の事件へVS過去から来た爆弾魔 海から遠い海水成分」
詳細情報
◇出演者1
【京都地検の女8 #7】
名取裕子、寺島進、大杉漣、蟹江敬三
◇出演者2
【科捜研の女11 #15】
沢口靖子、内藤剛志ほか
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
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