日本の話芸 落語「はてなの茶碗(わん)」 2014.05.17

そして明日は女性の不妊についてお伝えしていきます。
是非ご覧下さい。

(テーマ音楽)
(出囃子)
(拍手)
(拍手)
(柳家権太楼)もう一席だけおつきあいを願っておこうという訳でございます。
友達が家でテレビ見てたら画面に出てくるというのは非常にびっくりをするもんでございまして私の商売上のお友達だったらばそれはそういう映像に映るというのは「あ〜そうか」というふうに分かるんですけども全くの素人でございましてどういうふうな状況かといいますと民放のほうにございますあの「なんとか鑑定団」てぇのがありますよ。
お皿を値踏みをしたりそういうふうな陶器やなんかというふうな物とか屏風の絵だとか襖の絵だとかねそういうふうな掛け軸とかいうふうな番組がございます。
でその中でコーナーがあって出張するのがありますよね〜。
ラッシャー板前かなんかかな?松尾伴内かな?その辺が司会をやっている蝶ネクタイしている。
そういうふうな所でもって「次の人です」って出てきたのが新井さんという私の友達でございます。
「あら新井さんに似てるな」と思って「そんな趣味なかったはずなのに」と思ったら西洋の誰それというふうな画家の絵を持ってきて「15万するんだ」と言う。
で「買った15万でお願いします」と言ったらばその絵が80万する絵だというふうなんで「あ〜この人はこういう趣味があったのか」と思ってね久しぶりに会ったもんでございますんで「そういう趣味があったの?」と言ったらば実は大学を卒業してからそういう関係に入ってそのうちにこの絵にはまって日本国中で今「誰それの絵は新井さんに任せないと分からないよ」というふうなところまでいってるそうでございます。
「ハア〜失礼ですけどもそこまでいくのにどのぐらいかかったの?」つったら軽く「それほどでもないですけどこのぐらいです」っつわれたんで私このぐらいっつったら「1万かな?」と思った。
(笑い)1万のはずがない15万出してんだから。
だからちょっと少しね言わなきゃいけないって「1億?」っつったら「うん。
そんなもんですね」っつうんですね。
(笑い)1億ですよ。
「どうして?」っつたらそれあったらもう買いたくてしょうがないんだそうですね。
骨董だとかそういうふうなものはそういう凝り方をするんでございましょう。
京都の木屋町に茶屋金兵衛さんてぇ方がいらっしゃる。
この人は茶道具屋さんでございますけども大変な目利きでございましてねええ。
京都というふうな所は諸家の多い所でございますんでそういうふうなところを「茶金茶金」と呼ばれてかわいがられながらそういう物を見ている。
茶金さんが見てこうやって目を触れないってぇと「大した事はないんだろう」。
茶金さんが1つ器をフ〜ッと手に取っただけで「茶金さんが手に取ったぞあれ。
私たちが考えてるよりもちょいと高えんじゃないのかい?」なんてんで10両の値が上がるというんでございますね。
うん。
こういうふうな人はもうねちゃんとちゃんとカ〜ッと一生懸命勉強しております。
ですから本物か偽物かなんてのはすぐに分かるんでございましょう。
この茶金さんがフ〜ッと手に取って覗き込んで「ウ〜ン」て首をかしげると百両の値が上がるというんですね。
「ウ〜ンウ〜ン」ってぇと2百両ですよ。
(笑い)「ウ〜ンウ〜ンいい仕事してますね」つって…。
(笑い)3百両になるというぐらいでございましてね。
この人は清水寺に非常にご信仰が強い。
ええ。
それでもってそこから帰って参りまして音羽の滝がございます。
そこの所の掛け茶屋でもってそこにチョンと腰掛けてね京都の町を一日中こうやって見てるというのが何よりの楽しみという訳でございまして今日も今日とて音羽の滝の掛け茶屋で茶を啜っております。
何をどういうふうに思ったんだか知りませんけども飲んでいた湯呑み茶碗をスッと下に置きますってぇとお茶をツ〜ッと空けましてね覗き込みましてフッと首をひねりながら持っていた半紙でもってクルクルッと拭きますってぇとこれをまた天日にこうやって透かして見る。
ってこれにまたお茶をツ〜ッと注ぎます。
しばらくしてからス〜ッと持ち上げて覗き込んで見る。
またお茶を空けてまたそれで覗き込んで天日に透かして「ウ〜ンウ〜ン」と首をひねったままそこへ置くとス〜ッといなくなった。
それを見てたのが油屋でございまして油屋といってもこれは江戸の食い詰め者でございましてね方々に借金があって江戸にいられないからってんでとどのつまりが京都へ逃げてきたという訳で。
灯し油行灯の油ですね。
これを方々へ売り歩くというふうな事をやってて…。
「えれえもん見ちゃったなおい。
茶金さんだよあれは。
あの人がね器をこうやって手に取るってぇと10両の値が上がるって。
それでもって首を1回ひねるってぇと百両だっつって。
見てたよこっちはあれで6遍首ひねってたよ。
6百両する品物かよ〜。
あっええ?ああ〜お宝なんてなぁどこに落っこってるか分かりゃしねえやな。
ええ?6百両するのかよありゃ。
誰も見てねえんだ俺だけだよ。
ここの主だってなんだな奥へ引っ込んじゃってるだけだい。
エ〜イ6百両って訳にいかねえかもしれないけどな半値の3百両だってくりゃな江戸へ戻って借金返して楽に遊んで暮らせらぁな。
ええ?こういう…。
黙って持ってったら泥棒と間違えられちゃうからななんとかなんだあれ誤魔化してこっちにもらおうかな。
親父親父さん」。
「お〜油屋さんまだいらしゃったんですか?」。
「どうもごめんね。
いやいやいやいや寝ちゃったうたた寝してて。
ね〜。
油屋がこんな所で油売ってちゃしょうがねえんだい。
ええ?商売しなくちゃいけねえんでさ。
でまあね実はさ俺はまあねこちらへ京都へ来た頃にねどうも寺ばっかりでもってね辛気くさくてさええ?つまらねえなと思ってたんだ。
ところがね住めば都ってなぁ全くだな。
王城の地とはまさに言ったもんだええ?おっとりしていてさ人が優しいしねすっかり京都が気に入っちゃってよ〜。
永代住もうかと思ってさ」。
「お〜それは結構こってございますな」。
「ああ〜それでもってねちょいと町外れだけどさ一軒借りてねそこで男所帯じゃねえけどいろいろと所帯道具集めてたんだけどさ男ってぇないけねえな〜。
気が付かねえところたくさんあるんだ。
いやいやこの間よ〜友達が来てねで俺茶出そうとしてさ俺の湯呑みはあるんだよ。
客のが無えのに気が付いちゃってさ。
だらしがねえやな。
でまぁねこういう商売だしね表へ出てるしさ京都だしねうん瀬戸物はたくさんあるからね『そこで買えばいいや』と思ってるうちにねいざ仕事となるってぇとさかまけちゃってね忘れちゃうんだよ。
でねすまねえんだけどさ親父よちょいと茶碗1つね売ってくんねえかな?」。
「あ〜あ〜何を言ってんですか。
こういうふうな物でございましたらええ?欠け茶碗でございますんでね数茶碗はもうね売るなんて物じゃない。
まぁ差し上げるから持って下さいな」。
「エエ〜ッ?本当かよ。
悪いね。
じゃあねちょいとねなんだな〜じゃあこれだけもらっていくわ」。
「ア〜ア〜ッそりゃそりゃ駄目なんです。
それはちょいとそこへ置いて下さいね。
それは駄目なんでね」。
「何でもいいんだ俺は。
ええ?じゃあこれは手に取ったもんだからよ縁があるんだろうよじゃあこれをもらってく」。
「いえ。
そりゃそりゃいけないそれはいけない」。
「いいよ俺は何でもいいんだから」。
「何でもいいんならこっちにありますから」。
(笑い)「ね?それは置いて下さいよ」。
「何だよ変な言い方するね。
うん?じゃあいいよ〜こっちも江戸っ子だよ。
ね?ただって訳にいかねえからさええ?1分出そうじゃねえか。
1分出しゃこんな物はね数茶碗はさ何個だって買えらぁな。
だから俺これ1分で買うから」。
「いえいいや。
それ1分じゃ売れないんでございますよ」。
「何だよ〜。
こうなりゃこっちも意地だよ。
じゃあいいやな清水の舞台から飛び降りたつもりでもってさ1両出そう。
1両出しゃいいだろうに」。
「いや。
それね1両が10両でもね売れないんでございますよ。
いやいやいやいやあなたはね江戸の方で知らないかもしれないけどね今そこに座ってた人ねあの人茶屋金兵衛さんといって茶金さんつってましてね大変な目利きなんでございますわ。
茶道具のほうではねええ。
それはもう京大坂辺りじゃございませんわね。
江戸にまでね名が知れておりましてねうん。
その人がこうやって器を持っただけでもってですね10両の値段が上がるというんですよ。
それを持ってね首を1回ひねるとね百両の値がつくんですわ。
私ね奥で見てたんですよ」。
(笑い)「そうしたらね6回首をひねった。
それね6百両する品物なんですよだから売れない」。
「見てたの?」。
(笑い)「そう?いや俺も見てたんだよ。
ええ?いや実はよ〜本当の事言うわ。
俺ね江戸へ戻りてぇんだ。
だけど借金があって戻れねえんだよ。
すまねえけどよなんとかねこれ6百両っていかなくても半値の3百両でもね懐へ入れりゃ借金返せてさね?江戸でもってちょいとね楽に暮らしができるんでね。
だからさじゃあじゃあこうしようじゃねえか。
俺はね今ねこれっきりでもって腹の中にあるの。
3両にしな3両逆さに振っても鼻血も出ねえんだそれからねここにある油の道具これもお前さんにそっくり渡すからさちょいとこれ俺に売ってくんねえかな?譲ってくんねえかな?」。
「何を言ってあなた3両だ油の道具でもって…それね6百両する品物ですよ。
そりゃ無理だ」。
「そんな事言わなくったっていいじゃねえかよね?お前だって見てただけだろうによね?だって…俺欲しいんだよ。
これさ。
銭が欲しいからさね?これだって数茶碗でもってお前の前だけどよ3両でお前それに油の道具だぞお前。
考えろお前常識で考えろ」。
「あなたですよ」。
(笑い)「あなたが考えなさいよ。
普通の数茶碗じゃないんですよそれは。
ええ?6百両…」。
「じゃあじゃあ駄目かい?駄目かい?いいよもう。
ええ?こっちは儲からねえんだったらさ俺お前にだって儲けさせねえよ。
俺これ割っちゃう…」。
「おっ駄目駄目駄目だよあんたそんな乱暴な事をそんな事したら私ゃねお上に訴える」。
「お〜訴えろ訴えろ。
俺は油屋だぞお前。
ええ?『油で手が滑りました粗相致しました』ってさ誰でも分かりゃしねえじゃねえか。
ええ?それともなにか?それともなにか?お前俺は手に持ってんだからええ?お前3両と油の道具でさそれ売れ…。
じゃあじゃあ…」。
「あっやめなさいあなた。
やめろ乱暴…」。
「誰が乱暴だお前。
お前のほうが乱暴」。
「何言って。
あなた訳の分からない事言っちゃいけませんよ」。
無理やりこれをひったくるってぇと3両と油の道具を置くと…。
それから3日ばかり経ちましてねええ木屋町の茶金さんの店の前でございます。
唐桟の着物を着ておりまして紺の前掛けをしましてちょいと髷のほうも結い直ししておりまして風呂敷包みをこうやって持っておりますとこからみると茶道具屋の手代という感じは致しますけどもこれは油屋でございまして八五郎でございます。
ス〜ッと引き戸を開ける。
自分のほうから勝手にス〜ッと開いていくという誂えでございます。
中に入ると御影石がズ〜ッと敷き詰めてございまして右のほうには蹲踞があって水がチョロチョロ流れてるという。
京都の茶道具屋さんという感じが致しますけども。
「おうお願い〜っすごめんくださいまし」。
「はい。
いらっしゃいませ」。
「あの〜こちらは茶金さんのお宅で間違いねえっすね?」。
「はい。
茶金でございます」。
「はあ〜ちょいとねあの〜ご主人にね見てもらいたい品があるんでねちょいと茶金さんをお願いしたいんですけども」。
「今主は奥で手の離せない仕事をしておりますんでななんだったら私が見ましょうか?」。
「誰?お前さん」。
「番頭でございます」。
「駄目番頭じゃ駄目。
分からねえ。
茶金さんじゃなきゃ分からねえ価値だからね?お前さんじゃ無理だから」。
「私ももうここで茶金の所の番頭をして何十年でございます。
今ほとんど私が見てるんでございますんで私でもって分からないどうしてもという時は主に頼みますけども私で分かる」。
「そんな。
分からねえんだよこれは。
ね?そりゃねそれは無理だからね。
本当?どうしても?じゃあ見てもらってもいいけどさええ?もし分からなかったら茶金さんにお願いしていいのか?じゃあ頼むこれな。
ええ?こりゃね6百両する品物なんだけどさね〜。
今日はちょいとね用があってね銭が必要だから半値の3百両で売りてぇんでねちょいと見て下さいな」。
「ホオ〜高価な品物でございますな。
ウ〜ン6百両する。
ハア〜ッこの箱の中に入ってる?あ〜左様でございますか。
それでは拝見をさせて頂きましょう」。
「何を?」。
「何を?それなんだ。
その品物6百両するんだよ」。
「これはなんですよ清水焼数茶碗でございますな。
1ついくらという品物じゃございませんよ。
10個束ねていくらというふうな物。
ええ?分かりました。
はい手前どものほうでは扱いかねますんでどうぞ他所の…」。
「だだから分からねえつったの。
ね?茶金さんじゃなきゃ分からねえんだから本当に」。
「さぁあなたは道具屋さんではございませんでしょ?うん。
こういうふうな物を持ってきて『高価な物だ高い物だ』と言う。
手前どものほうで粗相をすると『どうしてくれるんだ?』とそういうふうにして値をつり上げようというゆすりたかりは手前どものほうでは許しませんよ」。
「おお〜この野郎」。
「おっあなた何をする」。
「何をするじゃねえ。
手前俺のことをゆすりたかりってぇやがって」。
「何だ?店でもって大きな声を出してるんでは…」。
「あ〜どうもすみません。
いやこちらのお客様が急に私を叩いたもんでございまして」。
「いけませんね茶金の店ではそういう事をされては困ります」。
「あ〜いやね茶金さんね私は別にねむやみやたらに人を叩いた訳じゃねえんだ。
叩かなきゃならねえような訳があるから叩いたんで。
いえいえいえいえええ?私はね6百両する品物を持ってきたんだ。
で『茶金さんに見てもらいてえ』てったらここの番頭がね『私で大丈夫だ』って。
『分からねえ』ってのに強情を張ってで人のことをねええ?ゆすりたかりみてえな事を言うからパカッと腹が立っていったんでさぁ。
それでも私が悪いですか?」。
「番頭さん。
あなたがいけない。
それでは私が見ましょう。
この箱の中に入ってる?左様でございますか」。
「何を?」。
(笑い)「何をってこれ茶碗これ6百両するの。
ええ?3百両でいいですよ。
6百両するの」。
「番頭がこれを見て笑った?私は番頭の気持ちがよく分かります。
今私も笑いたい。
ええ?これがどういうふうな訳で…」。
「あっそんなそんな見るだけじゃなくちょっと触って…。
でそうじゃねえんですよね?思い出してくれませんか?それで3日前3日前ええ?音羽の滝の掛け茶屋でさちょいとその時を思い出してくれませんかね。
それ見て下さいよ」。
「うん?3日前?音羽の滝の掛け茶屋で?」。
「お〜思い出しました」。
「思い出したでしょう?」。
「うん。
あの時あなたあそこの油屋さん」。
「いやそんな事思い出さなくていいんだ」。
(笑い)「そうじゃねえよその時の茶碗だ。
その時の茶碗でさぁええ?その時の茶碗だええ?それ見て下さいよ」。
「ア〜ア〜ア〜ア〜お〜この茶碗」。
「そうですよ。
ね?それ6百両する品物でござんしょう?」。
「この茶碗ね」。
「へえ」。
「漏るんです」。
(笑い)「何か言った?ええ?」。
(笑い)「漏る?冗談じゃねえなおう。
むやみやたらに首ひねんねえでもらいてえな。
ええ?私はあそこにいたんですよ。
見てた。
ええ?そうしたら旦那がこうやってこうやってこうやってこうやって6遍首ひねったからさね〜?6百両する品物だと思ってさそれでもってね私は黙ってもらったら泥棒と思われるからさ親父が分からねえで誤魔化してもらっちまおうと思った。
そうしたらあの親父も見ててさしょうがねえからってんでこっちはまあねなけなしの3両と油の道具そっくり渡してさそれで持ってきたんだよ。
漏るの?」。
(笑い)「ならさひと言『漏るよ』っつってくれりゃいいだろう。
黙って行くからさ。
どうするんだよ?」。
「ウフッこれは面白い」。
「面白くないよ」。
(笑い)「人死にが出るよ。
こっちが今死にてえよ。
私はね江戸の者だようん?ちょいとね借金があってねなんとかして江戸に戻れると思ってね3百両ぐらいでもってまぁええ?何とかできねえかと思ってそうしたのにさ〜。
漏るの。
どうすんの?」。
「番頭さん。
ちょいと10両貸しなさい。
はいはいはいはい。
これはねこの茶碗の代金ではございませんうん?あなたに貸しましょう。
返してくれるのはあなたの都合でよろしゅうございます。
こういうふうな物でもってええ?一獲千金を狙う。
千両をもらうそれは無理でございますわ。
うん?一生懸命額に汗してそこでもってお宝というものは大切なものになるんでございますよ。
こういうふうなんでもってなんとかしようというこれは素人では手を出してはいけません。
よろしゅうございますか?あんたは油屋ですから油を売ってそれでもって糧をするという事が必要な事でございますんでね。
ええ?いいからこれちょいと持って行きなさい」。
「どうもすみません。
ね〜?こんなになってねで出てきてね10両貸してもらうなんてね身分じゃねえのも知ってますけどねこれが無かったらね生きていけねえんでねじゃあちょいと必ずお返し致しますからどうもすみませんお借り致しますんでね」。
「お〜この茶碗は?」。
「捨ててくれこりゃ」。
(笑い)「冗談じゃねえや」ってんでもって。
「番頭さん。
いやいやいやこの茶碗はね不思議な茶碗でねええ。
お茶を入れるお湯を入れるとねポタッポタッとしばらくするとどこからかなく漏ってくるんだよ。
空けて天日に透かしてええ?半紙でもってまぁ磨いてみて覗いても毛ほどの穴も開いてないんだ。
またお茶を入れるとポ〜ッと垂れてくるな。
実に不思議なものでね。
ええ。
ちょっとその箱書きに私が短冊に」というんでございまして茶金さんが「清水の音羽の滝のおとしずく茶碗のひびももりの下露」と書きました。
さぁしばらくするってぇと近衛殿下のお茶会に呼ばれた茶金さんが「何か面白い話はないか」というんでもって「これこれこういう話がありますよ」と言うと近衛殿下が「その茶碗余も見たいぞ」と言って近衛殿下の前へ行く。
茶碗は茶碗でございますからポタ〜ッポタ〜ッと雫が落ちる。
「はてな」と首をひねりながら「音もなくしたたり落ちる清水のはてなも高き茶碗なりけり」というお歌を書いてくれた。
またしばらくしまして今度は近衛殿下が高貴な方宮中に呼ばれまして時の帝に御拝謁を致しまして「何か面白い話はないか」というんでこの話をする。
さぁそうなるってぇと護衛の者がつきましてその茶碗が宮中まで運び込まれます。
どんな人の所でも茶碗は茶碗でございますからポタッポタッと垂らすというふうな訳で。
天皇陛下が万葉仮名で「はてな」と書きまして御印を押してくれました。
箱書きに値段がつきますから茶金さんの所行って「その茶碗なんとか5百両で」。
「いえ。
売れません」。
6百両7百両8百両千両という値がつく。
千両でとうとう売ってしまいましたよ。
「番頭さん。
あの茶碗が千両という事になりましたがな私はそのままもらう訳にいかんのでな元はといえばあの油屋さんだ。
捜してもらいたい」。
油屋は油屋でもってね手前がまぁ借金があるからってんで茶金さんの前は抜け道抜け道をしてる。
ところがある時ねボ〜ッとしてるところでもって茶金さんの目の前を通るってぇと小僧が…。
「アア〜ッ油屋さん油屋さん油屋さん油屋さん」。
「お〜ワ〜ッ茶金ところの小僧。
いや分かった分かった。
待ってろ行くから待ってろ分かった逃げやしねえから。
どうも旦那すみませんもうこれで…。
申し訳ございません」。
「いやいやいや実はあなたを捜して…」。
「だ…もうまだあれからね目と出ねえんだいや勘弁…」。
「いやそうじゃないんですよ。
あの茶碗ね千両で売れました」。
(笑い)「汚い」。
(笑い)「汚え商売のしかたしやがる」。
(笑い)「私の前でもってただ『漏るだけだ』つっといて千両」。
「いやいや。
そうではございません。
実はこれこれこういう訳で箱書きに値がつきましてな。
まぁ私がそっくりもらう訳にいきません。
そこで7百両は京都でも貧しい人がいますのでそこのほうに納めさせて頂き残った3百両ここにございます。
元はといったらあなたのものでございましょう。
3百両ありゃ江戸に戻る事ができるでしょう。
これあなたに差し上げますんで」。
「冗談じゃねえやそんな。
そりゃね茶金さんのね人柄でございますわ。
それでもって3百両こっちにも…。
ありがとうございます」。
(笑い)「では…。
番頭さん。
この間は叩いちゃってすみませんね。
膏薬代をねこの中から…」。
「いいいい。
そのような事はいい」。
「いいいいですよ」なんてんでそれから10日ほど経ちまして番頭さんと茶金さんでもって「あの慌て者の江戸っ子も江戸のほうにはもう戻ったでしょう」と話をしてるところでもってワ〜ッという茶金さんの前が大騒ぎでございまして。
出てみるってぇと揃いの法被を着ておりましてお御輿でございましてワッショイワッショイワッショイワッショイ。
先頭にいるのが八五郎でございまして。
「あなた江戸へ戻ったんじゃないんですか?」。
「旦那。
今度はね10万両のねえれえ金儲けの道具持ってきましたからね」。
「何ですか?その10万両ってなぁ?」。
フッと見るってぇと大きな水甕をお御輿で担いでる。
「何です?この水甕」。
「旦那。
これね漏るんですよ」。
(笑い)
(拍手)
(打ち出し太鼓)2014/05/17(土) 04:30〜05:00
NHK総合1・神戸
日本の話芸 落語「はてなの茶碗(わん)」[解][字][再]

落語「はてなの茶碗(わん)」▽柳家権太楼▽第656回東京落語会

詳細情報
番組内容
落語「はてなの茶碗(わん)」▽柳家権太楼▽第656回東京落語会
出演者
【出演】柳家権太楼,金近こう,斎須祥子,古今亭半輔,瀧川鯉○,三遊亭遊松

ジャンル :
劇場/公演 – 落語・演芸

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
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