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KADOKAWAと経営統合 ドワンゴの社員から巻き起こった拍手と川上会長の野望

出版や映画事業を傘下に抱えるKADOKAWAと、ニコニコ動画を運営するドワンゴは10月1日に経営統合する。漫画やゲーム、映画など日本のコンテンツを「ニコ動」というプラットフォームで発信・輸出し、クールジャパンのビジネスで勝ち残りを目指す計画だ。ただ、世界への道を開くには、もう一段、グローバル企業との統合が必要だとの指摘もある。その行方は――。

3年前から口説いていた角川歴彦会長

KADOKAWAはサブカルチャー分野に強みを持つ
 両社は5月14日に東京都中央区のホテルで記者会見を開いた。統合新会社の社名は「KADOKAWA・DWANGO」。ドワンゴの川上量生(のぶお)会長が新会社で代表権のある会長になり、KADOKAWAの佐藤辰男相談役が代表権のある社長に就任する。KADOKAWAの角川歴彦会長は取締役相談役に退く。
 
 KADOKAWAとドワンゴの2社は従来から、濃密な関係を持っていた。2011年に資本提携しており、現在KADOKAWAはドワンゴの第2位株主で株式を12.2%保有する。
 
 一方、ドワンゴもKADOKAWA株を2.7%保有持つ。人的にも、川上会長と佐藤社長は相互に相手側の取締役であり、「佐藤さんは創業の頃から付き合いで、ドワンゴの取締役としては僕の次に長い」(川上会長)という深い仲だ。
 
 「3年前から、いっしょにやろうと口説いていた。ようやく、川上君という若い経営者を手にした」。角川会長はKADOKAWAの明るい前途を確信しているようだった。

社風も近く、共通点はサブカルチャー

「ニコニコ超会議」にもKADOKAWAはブースを出展

 両社は「社風も近い。共通点はサブカルチャーだ」(角川会長)という。確かに、今のKADOKAWAを支えているのはゲーム雑誌などだ。ドワンゴの「ニコニコ超会議」などの事業もコンテンツとして取り上げている。

 「ザテレビジョン」や「東京ウォーカー」などの雑誌部門を育てた角川氏からすると、川上会長の経営の方向性は極めて腑に落ちるのだろう。

 川上会長も「『KADOKAWAのコンテンツをドワンゴのプラットフォームで世界に発信する』という見方の報道があったが違うと思う。両社ともコンテンツを作り、プラットフォームを運営している。だからこそ統合はうまく行くと思う」と両社の共通性を説明した。
 
 実際、この日の会見前に、ドワンゴ社内で開かれた社員総会では拍手がわき起こったという。

海外メジャーとのさらなる統合が不可欠

新会社の社長に就任予定のKADOKAWA・佐藤辰夫取締役相談役(左)と川上会長
 記者会見では集まった記者も含めて、ある種の興奮に包まれていた。大手経済新聞の記者が、川上会長と“かけあい漫才”のようなやりとりを演じたり、一般紙の記者が経済産業省でクールジャパンに関わった官僚である川上氏の妻のことを引き合いに出し、川上会長も笑顔で応じたりしていた。
 
 その後の記事にも、「グーグル傘下のYouTubeに挑む」「クールジャパンが世界へ」「角川会長が『天才』と呼ぶ川上氏」などという内容の“ご祝儀記事”も踊った。株価も両社とも値上がりした。
 
 しかし、両社の統合だけでは、海外で成功するには役不足だろう。両社とも実績はそれほどない。海外メジャーとのさらなる統合が不可欠だ。存外、その時期は早いかもしれない。

“ジジ殺し”川上会長、ジブリとの関係が語る未来

 今回、角川会長が川上会長を高く評価していることからも分かるように、現在46歳の川上会長は大物から可愛がられる“ジジ殺し”で知られる。
 
 最も有名なのはスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーだろう。川上会長は見習いとして鈴木氏に弟子入りしており、実質的な仲人でもある。そしてそのジブリはウォルト・ディズニー・カンパニーと昵懇(じっこん)の関係にある。
 
 川上会長をよく知るある経営者は「川上氏は以前から会社の業績や個人の金銭的なメリットより、社会への影響力や名誉への欲求が大きい」と指摘する。
 
 ディズニーとの統合は会社の格として申し分ないうえ、同社の大株主と言えば、スティーブ・ジョブズ氏(現在は資産管理団体)がいる。「数年後、川上氏が選ぶ道はもう見えている」(関係者)。
 
【写真上】写真撮影に臨む新会社の経営陣、左からKADOKAWA社長の松原眞樹氏、KADOKAWA会長の角川氏、KADOKAWA取締役相談役の佐藤氏、ドワンゴの川上会長、ドワンゴの荒木隆司社長
 
フリーライター

2008年から東京IT新聞に携わっているベテラン記者。