(テーマ曲)今日の主役はロボット。
それもものづくりの現場で大活躍する…頑丈な鉄腕を驚くほどのスピードと正確さで操る働き者。
その性能は誕生から50年進化し続けています。
そしてついにニュータイプとも言うべき革新的なロボットが登場したのです。
それがまるで人間のように2本の腕を巧みに操るその名も双腕ロボット。
今ロボットメーカーが続々と開発に乗り出し大注目を集めています。
これまでのロボットにはできなかったあ〜んな事やこ〜んな事を次々と実現。
中には科学の世界に新たな大発見をもたらすかもしれないすんごいロボットまで。
しかし開発の道のりには思わぬ壁が立ちはだかっていました。
困難を乗り越えて未来をつかみ取れ。
双腕ロボット研究の最前線に迫ります。
(南沢)今日何か工場にいるみたいですね。
(竹内)何かこう産業用ロボットがせっせと「ZERO」って作ってますけどこんなにたくさん作ってどうするんですかね?私実は今回展示会に行って見てきたんですよ。
ホントに今いろんな種類のロボットがあってかなり驚かされました。
(中村)そのロボットなんですけれども分野別に分けてみました。
生活分野医療・福祉分野など大きく4つの分野に分ける事ができます。
すごい幅広いですねロボット…。
中でも主に製造業の工場などで活躍しているのが奈央さんも見てきた産業用ロボット。
なんとロボット全体の90%以上を産業用ロボットが占めているんです。
ほとんどですね。
ですね。
まずは急速に進化を遂げている産業用ロボットの最新技術をご覧下さい。
先月東京でロボット業界のビッグイベント国際ロボット展が開かれました。
会場には最先端の産業用ロボットがずらりと集結。
こちらはこれまでにないスピードを誇る最新鋭の自動車溶接ロボット。
これは超高速でお菓子を並べる食品工場用の最新ロボット。
重さ1tもの部品を軽々持ち上げる搬送用ロボットまで。
さまざまな産業用ロボットたちが今幅広い業界で活躍しています。
こちらの住宅メーカーの工場もその一つ。
製造しているのはこんな金属のフレーム。
一体何に使うものかというと…。
実は家の骨組みとなるとっても重要なパーツなんです。
100台以上のロボットが24時間フル稼働。
一日30軒分の建材を休みなく生産しています。
中でも重要な作業を担っているのが腕の先に溶接機を取り付けた…その驚くべき手際のよさを見てみましょう。
溶接するパーツが目の前に運ばれてくると…。
即座に腕の先についたセンサーを真上にかざし赤いレーザーを照射して溶接すべき場所を確認。
それから直ちに手首を回転させ溶接に取りかかります。
パーツが運ばれてから溶接が始まるまでたったの4秒。
これほど高速で精密な作業をこなせるのって決して当たり前の事じゃないんです。
その証拠をちょっとした実験でお見せしましょう。
用意したのは先ほどの溶接ロボットと同じタイプのロボットアームです。
腕の先には溶接機の代わりに水の入ったコップを持たせています。
ロボットの腕を動かしてみましょう。
あっコップの水が揺れてる〜!速く腕を動かすと重い金属の腕がどうしても振動してしまうんです。
これでは揺れが収まるまで精密な作業などできません。
ところがここでロボットにある指示を与えると…。
ほら!今度は水面がぴたりと止まって揺れなくなりました。
実はこれ産業用ロボットに欠かせない制振制御と呼ばれる仕掛けのおかげなんです。
超高速高精度を実現する魔法のような制振制御。
一体どんなものなの?制振制御?すごいですね。
効果が出てましたね。
ぴたっといきましたよね。
ねっ!そもそもなぜあのようにしてロボットの腕が振動してしまうのか。
その原因をお見せしましょう。
こちら。
えっ何ですか?これ。
これはですねロボットのアームの関節部分についていて…ちょっと持ってみて下さい。
あっ結構…重量ありますね。
実はこのモーターがですね高速で回転していて腕がグ〜ッといくと。
それでぴたっと止めようとするんだけども何せ急に止まる事ができない。
そこでガタガタと振動をしてしまうと。
あ〜。
…でさっきの制振制御っていうのがあるとぴたっと止まりましたよね。
止まりますよね。
その秘密がですねここにあるエンコーダーといわれるものなんですね。
これが実はここにこう入っている訳です。
こういう形で。
これは…この情報を基に揺れを消すような形でモーターを止める。
へえ〜。
それがこの制振制御の仕組みなんですね。
なるほど。
これだけ高度に進化してきた産業用ロボットなんですけれども今大きな転機を迎えているんです。
これまで産業用ロボットが活躍してきた工場というのはライン生産方式といいましてこのスタジオの工場のように1つのロボットは1つの作業しかしていませんよね。
そうか。
それぞれ自分の決まった仕事をするという形になっているんですね。
ところが最近増えてきているのがセル生産方式というもので一連の作業を全て1人でやるというものなんです。
1台のロボットがあれもこれもやらなくちゃいけないという事なんですね。
そこで今注目されているのがいろんな作業に柔軟に対応できるニュータイプの産業用ロボットなんです。
実は奈央さんその実物を見てきたんですよね?そうなんですよ。
これまでのイメージと全然違うすごい産業用ロボットを見つけてきました。
国際ロボット展を訪れた奈央ちゃん。
そこで見つけたのは…。
すごいですね。
今大注目の最新型産業用ロボット。
腕が2本ある事から双腕ロボットと呼ばれています。
今各ロボットメーカーが競って開発を進めているんです。
一体どんな事ができるんでしょうか?ここにもかっこいいロボットがあります。
こんにちは〜。
こんにちは。
SF映画に出てきそうなこのスリムな双腕ロボット。
デモンストレーションでこんな看板を作っていました。
まずは向きもバラバラのイラスト入りの板を右手でつかみ絵の向きを確認。
左手に持ち替えて正しい向きにはめ込んでいきます。
続いて右手にドライバーを持ち左手は取り付け金具をキャッチ。
器用にねじを締めていきます。
こうした5〜6種類ある一連の作業をこのロボット1台だけで全てこなせるのです。
すごい。
見せてる見せてる。
このロボット既に実際の工場で働き始めています。
ここはレジの自動釣り銭機を造る工場。
双腕ロボットがやっている作業を見ると…。
軟らかいゴム製ベルトを吸盤のついた両手で定められた形に整え優しく部分にはめたり…。
部品を裏返して両面テープの薄い保護シートを器用に剥がしたり…。
これまで人間にしかできなかったような……こなしているんです。
すごいぞ双腕ロボット!何かこう近未来SFみたいでかっこいいですね!かっこいいですよね。
細かい作業も正確にこなすし何かホントに人間を見てるようなそんな感覚になっちゃいましたね。
言われてみれば確かにそうですよね。
お二人がそうおっしゃるんじゃないかなと思ってこんなものをご用意しました。
ジャ〜ン!これをはめればあなたもたちまち産業用ロボット。
名付けて…お〜すご〜い!
(拍手)はめてみて下さい。
竹内さんと奈央さんの腕がそれぞれロボットアームになった状態です。
さあそれではお二人にこんな挑戦をして頂きます。
2つの箱が出てきました。
赤い箱にオレンジの箱をかぶせて下さい。
はあ〜。
これいけるんじゃないですか?まあ楽勝でしょうね。
あ〜楽勝…じゃあチャチャッとやっちゃって下さい。
じゃあいきましょうか。
いきましょう。
(2人)ウイ〜ンウイ〜ンギ〜ガチャッ。
おっ。
あれ?あ〜ちょっと待って…。
スピードがスピードが…。
あ〜いけますいけます…。
あっあっあ〜落ちる!上に上に…。
あっよし。
何とか…。
きたきた…はあ。
あっはま…はまった。
ああっ。
はあ。
これは…。
何?あれ何でだろう?意外とてこずってしまいました。
持ち上げるのも力の加減がよく分からなかった。
じゃあ今度は奈央さんお一人で2つはめて挑戦してみて下さい。
はい。
これで奈央さんは双腕ロボットになった状態ですね?はい。
同じ事を挑戦して頂きます。
はい。
いきます。
ウイ〜ン…よし!おっおっ…。
あっ。
アッハッハッ…。
いとも簡単に。
あれ〜?成功しちゃいました。
そっか〜やっぱり…さあじゃあねこの双腕ロボットの秘密は何なのか専門家に詳しく伺っていきましょう。
双腕ロボット技術を研究する東北大学教授の小菅一弘さんです。
1人でやったらうまくいくのにほかの人とやったらうまくいかないってそんな事あるんですね。
(小菅)それが双腕ロボットの大きな秘密なんですね。
1台のロボットってねものすごく性能が上がってるんですが…先ほどロボットアームを2つ足しても双腕ロボットにはならないという事に気付きましたよね?何となく実感させられた感じですよね。
実はそこにあるものを足さないと双腕ロボットにはならないんです。
それがこちら。
協調制御?そう。
この協調制御が今日のキーワードです。
一体何なのか。
小菅さんの研究室へ探りに行きました。
双腕ロボットの実現に欠かせない協調制御って一体何?そのからくりを双腕ロボットでこんなプリンターを持ち上げるシンプルな作業を例に見せてもらいます。
まずは協調制御していない場合2本の腕それぞれにプリンターを挟むよう指示します。
更にそのまま真上に持ち上げるように腕を動かします。
これでうまくいきそうに思えますが…。
あれれ?落としちゃいました。
一体何が起きたのでしょう。
実は腕が完璧にまっすぐには上がらないため2本の腕の間隔が僅かに広がってしまったんです。
そこで今度は手首につけた力センサーを使います。
センサー部分がどれだけの力で押されているか精密に測定できる仕組みです。
これを頼りにそれぞれの腕がプリンターを押さえる力が一定になるよう制御します。
すると…。
なんとか持ち上げる事ができました。
でもやっぱり不安定な感じ。
左右の手先をよく見ると小刻みに揺れています。
ほら。
問題は左右の腕が別々の頭脳で制御されている事にあります。
先ほどのように途中で腕の間隔が広がると左右の頭脳は「プリンターを押さえる力が弱まった」と感じそれぞれの腕に別々に「力を強めろ」と指示します。
ところが左右が勝手に力を強めるため逆に押す力が強くなり過ぎます。
すると慌てて別々に力を弱めるので今度は力が抜け過ぎてしまいます。
この繰り返しで腕が不安定に揺れてしまったのです。
ではどうすればプリンターをしっかり持ち上げられるのか。
ここで登場するのが協調制御です。
一見同じように腕を動かしているようですが…。
今度はしっかり持ち上がりました!実はこの時左右の腕に指示を出しているのは1つの頭脳。
これなら両方の腕の状況を理解できるので力が強すぎたり弱すぎたりしないよう程よく調節する事ができます。
2本の腕の連携プレー。
それが双腕ロボットに欠かせない協調制御なんです。
協調ってホントに息をぴったり合わせるって事だったんですね。
…という事はふだん我々が何かこうやってる時も無意識のうちに左右を協調させてるんですかね?先ほどお二人で1つの箱を運ぼうとした時の例なんですけれども…だから箱を動かしにくかったんですね。
こういうふうにですね…その共通のルールについてこんな双腕ロボットで例を見ていきましょう。
こちらは小菅さんが開発に携わっている最新の双腕ロボットです。
挑戦するのはこんな2つのパーツの組み立て作業。
凹凸を合わせたあと回転させるというちょっと複雑な作業です。
(小菅)出っ張りをはめる穴を探す時には押し合う力が一定になるように両方の腕を協調させてあげて位置を探ってあげるんですね。
そのあと左右の腕を同じ軸の周りに回してあげて相対位置をきちっと制御してあげる事でこういう組みつけができるんですね。
見事にきれいにはまりましたね。
…という事ですか?そういう事ですね。
小菅さんは更に双腕ロボットが人と同じような作業ができるように研究開発されているんですよね。
(小菅)はい。
例えば先ほどのですねプリンターを箱に入れようとしますと当然そのプリンターと箱との間に接触が生じるんですがその接触に対してプリンターが箱になぞるような制御をしてあげないと箱には入れる事ができないんですね。
それはプリンターに加わる外力外から加わる力に対してこちらが思ったようにプリンターが動くように双腕が協調してやんなきゃいけないんですね。
まあより人間の機能に近いような協調のハンドリングができるか。
それが今後の大きな問題だと思います。
こうやって双腕ロボットがどんどん進化してくるといろんな場所でいろんな事を任せられそうですよね。
実は既に双腕ロボットは従来はロボットが縁のなかったような新たな分野に進出し始めているんです。
ここは産業技術総合研究所にある新しい薬の開発に取り組む研究部門。
薬の材料となるさまざまな物質がどんな効き目を現すか実験で詳しく調べています。
実はこんな化学実験の現場でも今双腕ロボットが活躍しているんです。
それがこのまほろ。
実験に必要な50もの作業をたった一台でこなすスーパーロボットです。
中でも重要なのが分注と呼ばれる作業です。
実験用の試料をピペットに取り…単純そうに見えますが高い精度を必要とされる難しい作業なんです。
実はこの分注作業これまでは研究者自らが行ってきました。
しかし同じ量ずつ容器に注いだつもりでも大きなばらつきが出るという問題がありました。
例えばある実験で比較したところ最も熟練した研究者でさえ分注作業で生じるばらつきはおよそ10%以上。
一方双腕ロボットまほろが同じ作業を行った場合そのばらつきが4%まで抑えられたのです。
さすがロボット。
まほろを開発した研究センター長の夏目徹さんです。
この分注作業の自動化は研究にとってすご〜く重要な意味があるんですって。
これまで人間にしかできなかった分注作業をどうやって双腕ロボットに習得させるか。
夏目さんはまずそれぞれの研究者がどのように分注を行っているか詳しく調べました。
すると人によってそのやり方が異なる事が分かったんです。
多くの人が行っていたのが液を容器に入れる際まずピペットの先を容器の底に押し当てそのまま壁を伝って液を出しながら引き上げるという方法でした。
これだと手元が安定し動作がぶれません。
ところがロボットにこの動作をまねさせてみた結果は…。
96本の容器に同じ量だけ注いだはずがばらつきが出てしまいました。
原因を調べるとこの方法ではピペットの先にどうしても僅かに液体が残ってしまう事が判明したのです。
一方ある研究員のやり方をまねしたところグンッとばらつきが小さくなる事が分かりました。
そのやり方を行っていたのが足達さんです。
足達さんの方法を見てみると…。
そう。
足達さんは最初から最後までピペットの先を容器に触れさせません。
こうすると最後に液が残らないのです。
ところがこのやり方を人間が行うと容器に触れないよう細心の注意が必要なため数をこなしているうちにどうしても正確さが落ちてきます。
結果的に足達さんの分注はばらつきが大きくなりそれがいい方法だとは思われていませんでした。
しかし疲れ知らずのロボットにとっては足達さんの埋もれた技術こそ最善だったのです。
人間の技術に学んだ双腕ロボットまほろは今では人間の5倍の精度で分注作業をこなせるまでになりました。
これまでばらつきに埋もれて気付けなかったような新たな発見も期待できると夏目さんは言います。
…というふうに期待しています。
わ〜何か同じ研究室でロボットと人が研究してるって面白いですよね。
作業して。
しかもあの足達さん方式?埋もれた技術をロボットが利用するって何かすごく痛快ですね。
すごいな〜面白い。
ロボットというのは疲れを知りませんので理想的な状態を何回も何回も繰り返す事ができますのでこういう使い方というのはホントに一番ロボットに適した使い方。
でもやっぱり…そうですね。
ロボットってのは何も知りませんので我々が人がどういうふうにやっているかというのをちゃんと科学的に解明してあげる事によって初めてそれがロボットの技術として生かされるんですね。
まあそういうような面もあるんですよ。
だから人間は例えば目がここについてますけれどもロボットの場合は目はここについている必要はなくて手の所についているものもありますし見やすい方向からものを見てあげる事によって…全部ロボットがやってくれるようになると人間がやる事がなくなっちゃうと思うんですけど。
人間には人間のよさがありますので…目的に合わせてそれを得意とするロボットが出てきてホントにこれからいろんな場所で活躍しそうですよね。
世界で最初の産業用ロボットが登場したのは1961年といわれているんですけれどもまだまだ若い技術ですので今後ですねどんどんどんどん進むんじゃないかと思います。
僕は1960年生まれなんでまあ1年差ですよね。
こんなに進化しているんだってびっくりしましたね。
人間とロボットが補い合いながら生活する日も近いんじゃないかなと思って。
今後楽しみですね。
小菅さんどうもありがとうございました。
どうもありがとうございました。
それでは「サイエンスZERO」。
次回もお楽しみに。
2014/05/17(土) 12:30〜13:00
NHKEテレ1大阪
サイエンスZERO「双腕で未来をつかめ!産業用ロボット最前線」[字][再]
製造業などで大活躍する産業用ロボットが、人間のように2本腕を巧みに操るニュータイプへと進化を遂げている。「双腕ロボット」の開発舞台裏と驚異的な最新技術に迫る!
詳細情報
番組内容
世界で働くロボットの3分の1が稼働する“ロボット大国”日本。その9割以上は産業用ロボットだ。超高速・高精度に進化を続けるロボットだが、中でもいま注目されるのが、人間のような2本の腕を操る「双腕ロボット」。しかし、人間のように両手を巧みに協調させ、従来の1本腕には困難だった作業を可能にするまでには大変な苦労が。人間に学び、人間を超えようと挑む双腕ロボットの知られざる開発最前線とその可能性に迫る。
出演者
【ゲスト】東北大学教授…小菅一弘,【司会】南沢奈央,竹内薫,中村慶子,【語り】江藤泰彦
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
ドキュメンタリー/教養 – 宇宙・科学・医学
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
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