東京湾を出て南へ100km余り。
およそ8,000人が暮らす伊豆大島です。
3月末真っ白な花が咲き誇っていました。
この島に春の訪れを告げる…いつもは喜びと共に迎えたこの春が今年は違っていました。
この島を襲った災害。
台風26号が1時間に120mmを超える大雨を降らせました。
分かるよ…。
分かります?夜が明けると町の風景は一変していました。
大規模な土砂崩れが家を次々となぎ倒し36人が死亡3人が行方不明になりました。
あれから半年。
現場はほとんど手付かずのままです。
大雨が降れば再び土砂崩れが起きるおそれがあります。
一度は島を離れるなどして避難した人々。
しかし土砂災害の起こるおそれがある場所で再び暮らしています。
島を襲った土砂災害から半年。
なぜ人々はおびえて暮らさなければならないのか。
伊豆大島の今を見つめました。
伊豆大島の中央にある…去年10月台風26号による大雨はその斜面を大きく剥ぎ取りました。
流れ出した土砂は家や畑を次々と押し流し多くの人々が住む麓の町にまで達しました。
被害が出た家は150軒余り。
半年がたつ今も壊れたまま放置された家が少なくありません。
そのうちの一軒に住んでいた成瀬田鶴夫さんと妻の純子さんです。
壊れた自宅が町によって解体される順番を待っています。
あの日午前2時。
2人は1階の居間でテレビを見ていました。
すると強い雨音に混じり木が折れるような音が聞こえてきました。
その直後壁を突き破って大量の土砂が流れ込んできたのです。
慌てて2階へ駆け上がった2人。
間一髪でした。
いや〜ホントに絶望的な感じでしたね。
その直後の町の様子です。
土砂は成瀬さんが住む地区の家々をのみ込んでいました。
土砂やがれきの下敷きになるなどして39人が犠牲になりました。
災害のあと大島町は土砂が流れた場所の周辺を今後も警戒を要する地域に指定しました。
今この警戒地域にはおよそ400世帯が生活しています。
島の外や島内のほかの場所に避難していた人たちも再びここに戻ってきているのです。
成瀬さんが被災したあとに住んでいるのもこの地域です。
成瀬さんが祖父の代から受け継いできた書店です。
この書店の裏かつて両親が住んでいた家に2人は移り住みました。
ちょっとしょっぱかった。
自分で作ったのに…。
どれ?これ?うん。
うんうまい。
高校を卒業したあと島を離れた成瀬さん。
18年前家業を継ぐために純子さんを説得して島に戻ってきました。
その2年後2人は家を建てました。
成瀬さん夫婦には子どもがいません。
力を合わせて生きていこうと心に決めて建てた家でした。
成瀬さんが警戒地域に戻ったのには理由があります。
被災した直後は島の外で働く事も考えましたが50歳を超えて新たな仕事を見つける事はできませんでした。
すみません。
今日「Newton」だけ?地元の人たちも足しげく通ってくれています。
ありがとう。
お世話かけました。
はいどうも。
警戒地域に指定されていてもここで暮らさざるをえない。
成瀬さん夫婦はそう考えています。
土砂災害のおそれがありながらなぜ復旧工事は進んでいないのか。
東京都は斜面が崩れないようにする対策案を先月まとめました。
その理由として…今行っているのは砂防ダムのかさ上げ。
雨で再び土砂が流れた時にせき止めようというのです。
これはあくまで応急的な対策です。
大島町は土砂崩れのおそれがある事を認識しながらも東京都が行う工事を待つしかないと考えています。
地元の人から観光客から何だか分かんないけどいろいろついてるし…。
じゃあまた。
必ず遊びに来るんで。
ありがとうございました。
じゃあね。
バイバイ!バイバイ!はいはい!また帰ってくる!3月下旬成瀬さん夫婦は大きな区切りとなる日を迎えました。
家の取り壊しが決まったのです。
2人一緒に島で生きていこうと誓って建てた家。
壁紙の一枚にまでこだわって決めました。
純子さんが家の掃除を始めました。
大切にしてきた家との別れ。
でもそれを受け止めて前を向かなければ。
2人はそう話していました。
取り壊しが始まりました。
突然奪われた暮らし。
再び被災する事への不安も消えません。
それでも2人はここで生きていかなければいけません。
最後まで取り壊しを見つめていた成瀬さん。
これなら…持っていけそうだな。
がれきの中に家を建てた時の思い出を見つけました。
(泣き声)厳しい現実の中で必死に前を向こうとしていました。
暮らしをもう一度立て直そうと願う人たち。
再び雨の怖さを思い知る事になりました。
4月初め暖かく湿った空気が流れ込み伊豆大島に季節外れの大雨を降らせました。
斜面からは土砂が流れ出していました。
そっちの配置は総務課長に任しておく。
室長とやって人の配置。
いいね?気象庁と東京都は伊豆大島に土砂災害警戒情報を発表しました。
去年の災害以来初めての事です。
成瀬さん夫婦です。
午後7時半。
大島町は島の一部に避難指示と避難勧告を出しました。
成瀬さんの住む地域には避難の呼びかけはありませんでしたがいつでも逃げられる準備をしていました。
午前0時過ぎ。
雨が強くなります。
あの日の夜土砂は突然家に流れ込みました。
外の雨音が気になります。
純子さん耳を塞ぎます。
ようやく一息つけたのは午前1時。
この日島に被害は出ませんでした。
しかし雨の季節を前にした大雨が2人を不安にさせていました。
(ため息)大雨にどう対応していけばいいのか。
町は復旧工事が進まない中で避難を呼びかける以外に手だてがないといいます。
土砂災害の警戒地域で書店を続ける成瀬さん夫婦です。
この日やって来たのはいつも本を買いに来る4歳の女の子です。
これも200円200円200円…。
じゃあ明日行こうね。
明日行こうね。
電話するね。
うん。
ありがとうバイバ〜イ。
明日電話してね〜。
またね〜。
明日電話してよ約束ね〜。
約束ね〜。
女の子が贈ってくれたのは2人の似顔絵です。
こうしたつながりがこの島で生きていく2人にとってささやかな救いとなっています。
土砂災害から半年がたち今なお復旧が進んでいない伊豆大島。
安心して暮らせる島に早く戻ってほしい。
ここで生きる人たちの切実な願いです。
うわ〜っ!やっぱり霜降り肉最高!2014/05/18(日) 08:00〜08:25
NHK総合1・神戸
目撃!日本列島「崩れた山肌の下で〜伊豆大島 土砂災害から半年〜」[字]
去年10月、土砂災害で多くの人が犠牲になった伊豆大島。半年たった今も安全対策は始まったばかりで、大雨のたびに住民は不安を募らせる。人々が直面する現実を見つめた。
詳細情報
番組内容
去年10月、土砂災害で多くの人が犠牲になった伊豆大島。半年たった今も、崩れた山の斜面はほとんど手つかずのままで、数年がかりの安全対策が始まったばかりだ。土砂災害の警戒が必要とされる地域には多くの人が暮らし、大雨のたびに不安を募らせている。安全対策はどう進められようとしているのか。なぜ住民は不安を感じながらとどまるのか。災害から半年たった4月、再び大雨に見舞われた島で、人々が直面する現実を見つめた。
出演者
【語り】一柳亜矢子
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
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音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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