ふるさと再生 日本の昔ばなし 2014.05.18

昔むかしある村に作兵衛という鉄砲撃ちがおりました。
作兵衛は誰よりも早く鉄砲に弾を込められることが自慢でした。
(鳥の鳴き声)ハハハハ!ハハハ!今夜はキジ鍋じゃ。
うんうんうまいうまい。
さてと明日は何がとれるかな?イノシシか…鹿もいいなぁ!作兵衛は山へ狩りにいくと自分の腕試しで生き物を殺していました。
その日は早くから家を出たもののなぜか獲物が見つかりませんでした。
はぁ朝からネズミ1匹見かけんのう。
どうしたことじゃ。
山から獲物が消えてしまったようじゃ。
あぁなんか眠くなってきたわい。
(いびき)う〜ん…。
(物音)ん?なんだミミズか。
どこへ行くのか知らんが早く土ん中潜らんと干からびてしまうぞ。
あっ言わんこっちゃない。
カエルめ!たった今まで生きておったのに。
はぁ…おっ!カエルのやつヘビににらまれているぞ。
あっなんということじゃ!はかないものじゃ。
(物音)イ…イノシシ!な…なんと今度はヘビが!よく肥えたやつめ。
どれ銃で仕留めてやる。
そこにおれよ。
逃がすか!だ…誰じゃ!?おらの獲物を横取りしようというのか!あっおらの獲物が!いったい何者じゃ!?これはおらじゃ!おらがもう1人いる!いったいどういうことじゃ!?やまんば!ああっ!危ない逃げろ!うわ〜っ!なんだ夢か。
恐ろしい夢じゃ。
ミミズがカエルに食われカエルがヘビに食われそのヘビがイノシシに食われてしまった。
そしてこのおらが…。
生き物は食うか食われるか。
そうやってすべては鎖でつながってるということか。
ふぅ…ん!?ななんだこの生あたたかい風は。
誰かがおらを見ているような。
さぁ出てこい!
(物音)おらは食われたりせんぞ!ハァッハァッハァッ…。
ぐわ〜っ!うわ〜っ!
(うなり声)《恐ろしい恐ろしい殺気だ。
まともに来られたら助からない。
まだ間に合う》《来るな来るな…おらにはこの銃がある》ぐわ〜っ!《どうした?襲ってこねえだか》ハァッハァッ…。
はぁ〜助かった。
(物音)うわ〜っ!何びっくらこいてんだかまったく。
その日を境に作兵衛は腕試しだけで生き物を殺すことをきっぱりやめたということです。
昔アイヌの村にトンクルという幼い男の子がいました。
トンクルが暮らす村は山むこうの村と争いを起こしていました。
トンクルの父親は村長です。
争い事を止めようとしています。
しかし争いは一向におさまりません。
トンクルを育てたのはおばあさんでした。
トンクルは赤ん坊の頃に母親を亡くしていました。
2人はいつも一緒でした。
森の神様今日もおじゃまします。
森の中でおばあさんは森や川の神様のことをトンクルに話して聞かせました。
森や川は人に必要なものを分けてくださる。
困ったときは神様は助けてくださるんだよ。
おばあさんはたくさんの神様を大切にするようにトンクルに教えました。
おおかかれ!ある日トンクルの村は山むこうの部族と戦になりました。
そしてトンクルの父親は殺されてしまったのです。
息子がいるはずだ!それ村長の息子を捕まえろ!危険を感じたおばあさんはトンクルと森へ逃げました。
森の神様…。
シッ!黙って!草の根をわけても見つけるんだ!
(みんな)おお!さあトンクルこっちへおいで。
敵の足音に追われるように小川を渡り藪を逃げ隠れしてどれほど経ったか…。
気がつくと握っていたトンクルの手がありません。
トンクルとはぐれてしまったのです。
どこ?トンクル!!木の洞や獣の巣穴川岸の草むらにもトンクルはいませんでした。
夜が明けたのか日が沈んだのか?どのくらいの日が過ぎたのかもわかりません。
おばあさんはいつしか湖のほとりに来ていました。
もう体はくたくたです。
湖の神様トンクルを捜しています。
このあたりで見ませんでしたか?すっかりくたびれてしまいました。
岸のどこかに寝床をお借りできませんか?けれども湖は何もこたえません。
おばあさんはまた歩きだしました。
おばあさんは森に囲まれた湖のほとりに来ました。
湖は霧に包まれています。
そしてそのかたわらには山の神カムイヌプリが住む山が見えました。
カムイヌプリ様もう一歩も歩けません。
どうかここで休ませてください。
休むがよいその草の寝床でゆっくりおやすみ。
ああありがとうございます。
草の寝床でおばあさんが手足を伸ばしたとき霧が晴れてきました。
空には月が輝き星が瞬いています。
それはいつもトンクルと見上げた空。
いつもと同じ夜空でした。
トンクルトンクル今どこにいるんだい?トンクル無事でいるのかい?そのとき波の音がしました。
ここでお待ちなさい。
トンクルをお待ちなさい。
山の神カムイヌプリ様私をこの湖に置いてください。
トンクルが来るまでこの湖で待たせてください。
おばあさんは山の神カムイヌプリに祈りました。
夜が明けると湖の真ん中に小さな島ができていました。
カムイヌプリがおばあさんの願いを叶えたのでした。
何年か経ったある日のことひとりの若者が小舟を漕いで島を目指していました。
それは成長したトンクルでした。
おばあさんとはぐれたトンクルは見知らぬ里人に救われたのでした。
トンクルはおばあさんが教えてくれた森や山の神様の話を忘れませんでした。
そして幼い頃の記憶をたどり神々に導かれるようにおばあさんの島へやってきたのです。
ただいま帰ってきました。
そのとき小さな島はやわらかな草を一斉になびかせて喜びの声をあげました。
おかえりトンクル。
やっと会えたね。
摩周湖に浮かぶその小さな島は神になったおばあさんの島と呼ばれています。
昔むかしある山里にやよいという娘がおりました。
やよいは毎日山ひとつ越えた隣村の庄屋さんの屋敷まで働きに通っていました。
おはようさん。
今朝は朝焼けがあんなにきれいじゃ!そんじゃ今日も働いてくるよ。
やよいは杉の木に声をかけてまた走って庄屋さんの屋敷へ行くのでした。
ふぁ〜!早いなやよい。
お前がよけりゃ他の奉公人と一緒に住み込みで働いてもかまわんのじゃぞ。
ありがとうございます。
でもおらおっかあを一人にしておくのは気がかりで。
そうかよい心がけじゃ。
やよいはぞうきんがけ薪割り炊事洗濯と汗とほこりにまみれてよく働きました。
一生懸命働いて腹を空かせたやよいは夕飯の時間が楽しみでした。
けれどもやよいはどんなに腹を空かせていても2杯目のご飯を食べようとはしませんでした。
今日も働いてきたよ。
やよいは2杯目のご飯を毎日病気のおっかさんのために持ち帰っていたのです。
いつもすまんのう。
毎日山を越えて一日中働いて。
しっかり食べなきゃならないのはお前のほうなんだよ。
おらおっかあに腹いっぱい食べてもらいたいんじゃ。
そうしたら病気も治るじゃろう。
こうしてやよいは毎日庄屋さんの屋敷で一生懸命働いていました。
そして仕事も終わったある日の夕暮れ時でした。
やよいひと雨きそうだぞミノ持っていけ。
大丈夫です走って帰ります。
それではまた明日。
ちょっと雨宿りさせてもらうよ。
あっああ…。
あっ!やよい。
おっかさんの晩飯濡らすなよ。
杉の木どん話ができるのかい?驚くことはないやよいも毎日話しかけているじゃないか。
そっか。
お前はいつも病気のおっかさんのことを気にかけて感心な娘じゃ。
おらおっかさんに早く元気になってもらいたいんだ。
杉の木どんまた話を聞いてくれろ。
やよい実はもうすぐわしは切り倒されて船の材料になるのだ。
えっ!?船の材料?そうだ船は人々の役に立つ。
そっか杉の木どんなら立派な船になるじゃろう。
でも寂しくなるのう。
わしは船になっても誰も海へおろせる者はない。
お前はそこで船の艫に立ちや〜よいどっこいせ!と声をかけるのじゃ。
倒れるぞ!それから3月経って峠の杉の木を使った船はできあがりました。
ところが完成した船を海へおろそうとしても船は動きません。
う〜む…。
困った船主は船を海までおろした者には望みどおりの褒美を取らせると広く呼びかけました。
船主の呼びかけを聞いて力自慢の男たちが集まってきましたが船は動きませんでした。
この娘が船を動かすそうじゃ。
(みんな)えぇ〜!?皆の衆にも手伝ってもらいたいのだそうじゃ。
もし船が動いたら褒美は山分けでどうじゃ?みんなおらが声をかけたら船を引っぱっておくれ。
(みんな)オーッ!や〜よいどっこいせ!
(みんな)どっこいせ!や〜よいどっこいせ!
(歓声)やよいはたくさんの褒美をもらい暮らし向きもよくなりおっかさんも元気になっていきました。
おはようさん!やよいが声をかけたのは新しく芽をふいた小さな杉の木どんでした。
や〜よいどっこいせ!や〜よいどっこいせ!2014/05/18(日) 09:00〜09:30
テレビ大阪1
ふるさと再生 日本の昔ばなし[字][デ]

「順ぐり食い」
「神となった老婆」
「やよいの船」
の3本です。お楽しみに!!

詳細情報
番組内容
私たちの現在ある生活・文化は、昔から代々人々が築き上げてきたものの進化の上にあります。日本・ふるさと再生へ私たちが一歩を踏みだそうというこの時にこそ、日本を築いた原点に一度立ち返ってみることは、日本再生への新たなヒントになるのではないでしょうか。
この番組は、日本各地に伝わる民話、祭事の由来や、神話・伝説など、庶民の文化を底辺で支えてきたお話を楽しく伝えます。
語り手
 柄本明
 松金よね子
テーマ曲
『一人のキミが生まれたとさ』
 作詞・作曲:大倉智之(INSPi)
 編曲:吉田圭介(INSPi)、貞国公洋
 歌:中川翔子
 コーラス:INSPi(Sony Music Records)
監督・演出
【企画】沼田かずみ
【監修】中田実紀雄
【監督】湯浅康生
制作
【アニメーション制作】トマソン
ホームページ

http://ani.tv/mukashibanashi

ジャンル :
アニメ/特撮 – 国内アニメ

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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