美の壺・選「私の富士山」 2014.05.18

(テーマ音楽)
(あくび)うわ〜今日はまた一段ときれいですねぇ。
(天の声)草刈さん何が見えるんですか?いやいやこれですよ。
朝ここから富士山を眺めると目覚めがいいんですよ。
この景色はね僕にとって宝物です。
さあ今日も一日頑張るぞ〜!お宅から富士山が見えるなんてうらやましい!でもその幸せをこんな所から味わった人もいるんですよ。
「アメイジング!マウントフジイズゼア!」。
スペースシャトルに乗った毛利衛さん。
宇宙から見た富士山に大興奮でした。
「日本人の心のふるさと」とも言われる富士山。
(歓声)憧れや信仰の対象として人々に親しまれてきました。
その姿はあらゆる芸術や工芸のモチーフともなっています。
2013年富士山はユネスコの世界文化遺産に登録されました。
(シャッター音)もうこれでおしまいとか本当にゴールなんて絶対にない一生撮り尽くしても撮り尽くせないものだと思います。
やはりこれは日本人の象徴であり心を見るような山であると思いますね。
今日は私たち一人一人が心に思い描く富士山の美を見つめます。
うっ…ふぅ。
どうしたんですか?いやね実はもうここから富士山を見てるだけでは飽き足らなくなっちゃいましてね。
今度奥さんとね富士山に登ってみようと思うんですよ。
だから体力つけてないと。
途中でへばっちゃったりすると奥さんの手前恥ずかしいし。
…ふぅ。
あ〜喉渇いた。
うん!おいしい。
これ富士山のお水。
フフッ。
草刈さん。
富士山と水は切っても切れない深いつながりがあるのをご存じでしたか?へえ。
悠然と広がる美しい稜線。
そして山頂に白く輝く雪。
これぞ富士山ですね。
この日本一の山には四方を取り囲む気流の影響で多くの雨が降り注ぎます。
その水が周辺にさまざまな美しい風景を生み出しているのです。
絶壁から幾筋もの絹糸をかけたように流れる…富士の湧き水が作り出す清流…幻想的な逆さ富士を映す富士五湖。
そう水は富士山の絶景には欠かせないものなのです。
水と共に富士山をめでるという日本人の美意識は意外なところに表れています。
庶民文化を研究する町田忍さんがやって来たのは…。
そう銭湯です。
銭湯といえば…これですね!町田さんは銭湯に富士山が描かれるのには深い訳があると言います。
(町田)基本的にはその中に必ず水がなければなりません。
富士から流れる神聖な水につかり我が身を清める。
そんな気持ちで見上げれば富士山はより美しく映えることでしょう。
今日一つ目の壺は…富士山と水の関係は芸術の世界にも色濃く表れています。
葛飾北斎の「富嶽三十六景」。
歌川広重の「富士三十六景」。
富士山をモチーフとした作品の多くが水と共に表現されているのです。
山中湖畔を拠点に活動する…冨塚さんは27年前この地に移り住み富士山の絶景をカメラに収めてきました。
(冨塚)最初は「こんな簡単な被写体」と思って。
まあ誰でも撮りやすい被写体なわけですよ。
ても撮っていくうちに…撮りやすいがゆえに似通ってしまうのが富士山写真の難しさだといいます。
冨塚さんはあえて富士山を脇役に据えさまざまな自然現象の中にあるものとして描いていくようになりました。
(冨塚)富士山の表情っていうのはそのものもあるんですけど周りの景色でねガラッと変わってきますからどちらかといったら富士山は脇役になることもしばしありますね。
この日冨塚さんが写真を撮りに出かけたのは午前4時。
夜明け前のこの時刻にしか撮れない写真を狙っています。
(シャッター音)写し出されたのは富士山と月だけではありませんでした。
月光に照らされ帯状に光り輝く湖面。
水が生み出した絶景です。
(冨塚)水は本当に写真の被写体にとって欠かせないという。
僕らにとっては絶対必需品というかね。
続いて冨塚さんは水をうまく使って更に違った表情の富士山を撮ろうとしていました。
いや今日はホントきれいです。
このね風によって波がね引き寄せられてる。
光の当たり方がすごくいいんですね。
ここは山中湖を知り尽くした冨塚さんとっておきの撮影スポット。
ここで何を狙うのでしょうか。
なかなかこういう波って湖というのは立たないものですからすごい感動です。
今日波がすごくいいわ。
(シャッター音)湖に立ったさざ波そして富士山。
富士の手前に広がるさざ波が風の中に毅然とそびえる様を際立たせます。
撮ってる時にっていうのはそんなに意識してないんですがよくよく考えてみると全て本当に…水は富士の姿をがらりと変える重要な舞台なのです。
どうぞどうぞ〜。
どうぞ〜。
これから頂上アタック開始します。
オーケー。
いいじゃないか。
フフッ。
よし!草刈さん。
うん?目覚まし時計はさすがに要らないんじゃないですか?いやいや日の出を拝むため頂上付近で1泊しようと思ってるんですよ。
もし寝坊してご来光が拝めなかったら悔やんでも悔やみきれないでしょ。
ね?え〜それでね僕ねこの枕がないとね眠れないんですよ。
あれ?あれ?困ったなこれ。
入らない。
あ〜どうしても入りきらない!この光何だと思います?実は…夜明け前に富士山頂を目指す大勢の登山客です。
(歓声)お目当ては日本一の霊峰から拝むご来光。
富士山は古くから日本人の信仰の対象となってきました。
これは豊臣秀吉の陣羽織。
背中に大胆に描かれた富士山の山頂には噴煙が立ち上っています。
噴火は「御神火」とも呼ばれ神のなせる業だと畏れられてきました。
戦国武将たちは「富士」を「不死」と読みかえ死と隣り合わせの戦国の世を生き残る験担ぎとしたのです。
こちら江戸時代に描かれた富士山。
この絵の中で富士山は生命をつかさどる太陽と月の中心に神々しく描かれています。
人々の富士山への信仰が表現されています。
そこにはある特徴が見られます。
山頂が三つの峰に分かれています。
なぜ山頂が三つの峰に描かれるのか。
それは富士山への信仰によるものだというのです。
今日二つ目の壺は…日本人が思い描く富士山の形。
街で富士山のイメージに一番近いものを選んでもらいました。
こっちだ。
きれいなのがね。
このぐらいが富士山らしい感じじゃないかなと思うんだけど。
これじゃね?これ。
100人中半数以上の方が三峰を選ぶという結果に。
しかし…。
景勝地として知られる…ここからの富士山は三峰ではなさそうです。
おなじみのアングルも…違いますね。
なかなか三峰の富士は見当たりません。
もしかして三峰の山頂は存在しないのでしょうか。
それがちゃんとあるというのです。
富士山南西側の山麓…ここから見える山頂が三峰だと言われています。
この富士宮から見た富士山がちょうど…でもなぜ実際にはあまり見ることができない三峰が日本人の富士山のイメージとなったのでしょうか。
そのヒントが偶然にもここ富士宮市の富士山本宮浅間大社にありました。
室町時代に描かれた…山頂を目指す人々の姿を克明に描いたこの絵は富士山信仰の曼陀羅様式を確立した最重要作品と言われています。
三峰の山頂には仏の三尊様式にのっとって薬師如来阿弥陀如来大日如来の姿が。
そこで人は極楽浄土へと迎え入れられるのです。
山裾から頂上へかけて庶民が祈りを込めてだんだん修行を高めていく。
そういう絵柄になっています。
ずっと後まで日本人にとって大事な形式だと思います。
三峰の形は山頂に仏の姿が描かれない時にも富士を神格化して捉えた画家たちによって踏襲されていきました。
三峰の富士に込められた特別な思い。
今でも山頂に三つの峰を思い浮かべる私たちにも受け継がれているのかもしれません。
あ〜やっぱりなぁ。
草刈さん。
今度は何をしているんですか?いやこんな急な山登れるかしらって心配になっちゃってね。
こちらの等高線だと本当はもっとなだらかなはずなんだけどなぁ。
北斎の富士山ってどうしてこんなに急傾斜なんだろう?草刈さん。
うん?それは北斎なりの遊び心ですよ。
遊び心?これは富士山をかたどった平鉢。
随分面白い形の富士山です。
山頂は三峰形。
お皿の下の部分の波状の曲線は雲を表しているとされています。
日中合作のユニークな形。
でもちゃんと富士山だって分かるから不思議です。
こちらは江戸時代茶人に人気を博した…丸みを帯びた通常の釜とは違い富士形釜は内側に反った優美な末広がりの形をしています。
ひと言で富士形と言ってもいろいろなバリエーションがあります。
今だと…既に江戸時代には富士山は人気のモチーフでした。
人々は遊び心をもってさまざまな富士山を描きました。
今日最後の壺は…現代にも富士山デザインに取りつかれた人がいます。
グラフィックデザイン界の大御所…仲條さんは70歳を前にして富士山のグラフィックデザイン制作に挑みました。
題して「仲條のフジのヤマイ」。
富士山はベテランデザイナーをして悪戦苦闘を強いる奥の深いモチーフでした。
どうもだいぶ…困ってきて。
動かしがたい台形の壁。
それを解決してくれたのが葛飾北斎の「富嶽三十六景」でした。
色や形大きさや絵の中の配置。
見る者を飽きさせないアイデアに大いに刺激を受けたと言います。
例えば北斎の「富士三十六景」見たってたるをのぞいたり波と一緒だったり富士山そのものだったり…仲條さんは台形の富士山とさまざまな意匠とを組み合わせ見事今まで見たことがない富士山の姿を生み出しました。
更に富士山のデザインにこれまでとは違ったアプローチで挑んでいる若手デザイナーがいます。
富士山のお膝元静岡県生まれの…池ケ谷さんは今富士山をモチーフにした日用品を多く発表し注目を集めています。
そのデザインの発想は一風変わった所から来ています。
作品のアイデアを得に訪れたのはなんと動物園。
しかも「富士山を探しに来た」と言います。
どういうことなんでしょうか。
割とこうあるんです。
いろんな所にそういうまあ富士山のような何かが隠されていて。
早速何かを見つけたようです。
こういうのとかも…ちょうどこう奥のコンクリートが白いんで。
台形があってその向こうに白いのが見えたりすると。
更に富士山探しは続きます。
あいつの切り方によっては…上が白で。
その後もさまざまな富士山が発見されました。
池ケ谷さんは誰もがそのイメージを共有できることが富士山の魅力だと言います。
富士山といえば知らない人はいないというぐらい既に…すごく人をつなぐものより人をつなぐものになるだろうなっていう感覚はありますけどね。
富士山の形の共通認識それは雪のかかり方にも表れると言います。
中心に白いギザギザの塊が描かれた折り紙。
4か所だけギザギザが長くなっています。
鶴を折ると背中に富士山が現れます。
ギザギザの長い部分がちょうど稜線にかかる雪となりました。
更に池ケ谷さんのデザインには特徴があります。
めくると…。
それは何か動きを加えることで富士山が現れるというもの。
基本的に富士山をモチーフにしたものっていうのはそこに富士山をどう描くかというところでいろんな富士山が描かれていると思うんですけどそうではなくてそれを隠しておくことで突然そこに見慣れた富士山が登場するっていう面白さを人に伝える時にやっぱり…富士山のデザインは人と人とをつなぐツールともなりうるのです。
日本人の心にそびえる富士山。
皆さんも改めてその姿を眺めてみませんか?あ〜いい天気だ!絶好の山登り日和だ。
うん。
さあそろそろ出発の時間だよ。
行きますよ〜!・あなた荷物持って下さる?もちろんだよ。
そのためにトレーニングしてきたんだから。
何なら君をおぶって登ってもいいよ。
フフッかわいいねぇ。
僕を頼ってるんだから。
枕…?・どうしたの?先に行くわよ。
(ドアが閉まる音)あちょっと待って下さいよ!ちょっと枕はやめましょうよ。
はぁ…。
2014/05/18(日) 23:00〜23:30
NHKEテレ1大阪
美の壺・選「私の富士山」[字]

身近なテーマを中心に、美術鑑賞を3つのツボでわかりやすく指南する新感覚美術番組。今回は「私の富士山」。案内役:草刈正雄

詳細情報
番組内容
世界文化遺産登録が確実とされ、注目される富士山。「信仰の対象」「芸術の源泉」として日本人の心に息づいてきた。富士山の絶景に欠かせない「水」との深いつながりとは? 日本人の多くが富士山と言えば「三峰」の山頂を思い描くのはなぜなのか? 江戸から現代に至るまで、多くのクリエーターにデザインされ、暮らしの中で愛されてきた富士山。「水」「信仰」「意匠」という切り口から、その奥深い美を堪能する!
出演者
【出演】草刈正雄,【語り】礒野佑子

ジャンル :
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

OriginalNetworkID:32721(0x7FD1)
TransportStreamID:32721(0x7FD1)
ServiceID:2056(0×0808)
EventID:6335(0x18BF)