ららら♪クラシック「怖いよ!お父さん〜シューベルトの“魔王”〜」 2014.05.19

あのクラシックの名曲をあなたのものに。
「ららら♪クラシック」。
人生を豊かにしてくれる一曲を一緒に見つけませんか?学校の音楽室でこんな声聞きませんでしたか?「お父さんお父さん魔王がそこに…」。
中学校?一回聴くと…
(「魔王」)そう皆さんも記憶にありませんか?嵐の夜に魔王が子供を襲うと〜っても怖い曲です。
詩を書いたあの偉大な人物はこの曲嫌い!?文豪も恐れをなすほどの怖さ。
でも作曲したシューベルトは怖さとは無縁の…それがなぜこんなにも怖い曲が書けたのか。
「魔王」に潜むゾクゾクッの正体にゲストのつるの剛士さんも…。
あああ…お父さ〜ん!「魔王」の怖さの秘密。
知ってしまったあなた今夜は眠れませんよ。
「ららら♪クラシック」今日はシューベルトの「魔王」です。
本当にね怖くて印象深い記憶に残る一曲でしたよね。
もう一度聴くと忘れられないですよね。
今日のゲストはおなじみつるの剛士さんです。
(一同)よろしくお願いいたします。
つるのさん音楽の授業でこの曲お聴きになりました?聴きましたね。
中学生の時だったと思うんですけど聴いた時ほんと怖くて。
今これ聴いて曲もそうなんですけど音楽の先生もっと怖かったんですよ。
それを思い出しました。
この時そうだったなと思って。
でも考えたらすごくないですか?中学の時に僕も一度聴いただけなんですよ。
でもダラララララダッダッダっていうの忘れられないですもんね。
インパクトがありますよねやっぱり。
全国的に多くの中学校の授業で取り上げられていて渋谷区の中学校に聞いてみたところ今でも生徒たちが一番興味を示す人気の曲。
じゃあ今でも授業の中で…。
そうみたいですね。
それではなぜ「魔王」はあんなに怖いのか。
今日はそこのところとことん解明していきましょう。
意外!本当は怖くない「魔王」?暗い森。
馬を走らせるのは息子を抱えた父親。
おびえる子供を魔王が甘い声で誘う。
そして家にたどりつくと子供は息絶えていた。
そんな恐ろしい情景を描いたシューベルトの傑作「魔王」。
歌われているのはドイツ最大の詩人ゲーテの詩です。
この詩はもともとある劇作品の一部分でした。
川辺の漁村を舞台にした…その冒頭で娘が漁師の帰りを待ちながら口ずさむのが「魔王」です。
「魔王」はストーリーの流れとは直接関係ない素朴な民謡として登場し特に怖いものではなかったのです。
そんな「魔王」の詩に多くの作曲家が魅せられ曲を作りました。
その数150とも言われます。
例えばゲーテと親しかった作曲家ツェルターの「魔王」は…。
アハハ全然違うんですね。
全く曲調が違うし…。
当時はこんな「魔王」がほとんどでした。
「魔王」ってもともと怖くなかったんですね。
シューベルトも「魔王」の詩に魅せられた一人です。
当時18歳。
曲が生まれた瞬間を友人が伝えています。
ある日彼の家を訪ねると興奮した面持ちのシューベルトが大声でゲーテの詩を読みながら部屋を歩き回っていました。
そして突然椅子に座ったかと思うとあっという間に曲を書き上げてしまったんです。
彼が生み出したのはそれまでの「魔王」とは全く違うものでした。

(「魔王」)ピアノが表現する不気味な風のうねり。
何かに追い立てられるかのような馬のひづめの音。
そしてクライマックス。
恐ろしい魔王がついに子供を捕らえます。
子供の悲痛な叫び。
そうシューベルトの「魔王」はリアルに情景が目に浮かぶ世にも怖〜い「魔王」でした。
ゲーテの詩の中にある恐怖をあぶり出し劇的に表現したシューベルト。
こうして「魔王」は恐ろしい本当の姿を現したのです。
いかがでしたか?ゲーテが書いた歌詞に150もの皆さんの曲があってこの曲がやっぱり今も後世に僕らに伝わってるわけですもんね。
ゲーテ自体はどういうふうな本意だったのか…。
是非ねゲーテにもこの曲を認めてもらいたいという事でシューベルトの友人がゲーテに彼の楽譜を送ったんです。
ところがゲーテは…こんなの嫌だと。
なかなか厳しいですねゲーテおじさんは。
このころはもう大家ですから。
詩は怖いですけど穏やかなツェルターの作品みたいなものがメインだったはずですからね。
そこに18歳のシューベルトがいきなり殴り込みをかけてきたっていう感じだったんじゃないかな。
斬新だったんでしょうしね当時は。
悲劇的な世界観が描かれた。
だからシューベルトの音楽的な才能が…それでやっぱりゲーテ的には逆に…「何を言ってるんだ。
分かったようなふりをしてこんな曲作りやがって!」みたいな事もあったんじゃないですかね。
ちなみにゲーテの名誉のためにご紹介するとシューベルトの死後改めてこの曲を聴いて……と褒めたそうです。
何となく手のひら返し感が…。
ちょっとどうなんですかねゲーテさんもね。
天才と天才が出会ったって事でいいですか?そういう事です。
音楽の都…この町で生まれた…600もの歌曲を残し歌曲王として人々に愛されています。
しかし若い頃はなかなか作曲家としての道が開けず親が経営する学校で教員を務めながら曲作りをしていました。
音楽の世界ではほとんど無名の人物だったのです。
そんなシューベルトの性格はひと言で言うと…うそや嫉妬とは無縁の誠実な人柄で万事控えめ。
人前に出て目立つ事が苦手な青年でした。
好きな女性がいても煮えきらず思いがかなえられない…シューベルトってドラマチックじゃない青春を送っていたんですね。
それなのに情熱を注いだのはドラマチックな世界。
オペラなどの劇音楽です。
しかし彼の作品が劇場で大きな成功を収める事はありませんでした。
登場人物が多く上演時間も長い劇音楽では全体をうまく設計できずメリハリに欠ける作品になりがちだったのです。
それに対して自分の才能を十分に発揮できたのが歌とピアノだけの小さな歌曲の世界でした。
その核となるのが詩。
シューベルトは繰り返し詩を朗読し言葉に凝縮されたイメージを劇的な音楽へと昇華させていったのです。
例えばゲーテの詩を基に書いたこの曲。
恋人を失った若い女性が絶望を胸に糸を紡いでいる様子を描いた作品です。
ピアノ伴奏は糸車が回る音を描写しながら主人公の心理を写し取っていきます。
そして忘れ得ぬ人へ高まる思い。
複雑な感情の動きが繊細かつドラマチックに表現されています。
(村田)その結果歌曲自体は小さなものではありますがオペラにも負けないような緻密なドラマ劇的な世界をつくり上げる事に成功したとそう言えると思います。
言うなれば…控えめで物静かな青年が紡ぎ出したドラマチックな音楽。
それは歌曲という小さな世界でこそ輝くものだったのです。
へぇ〜!面白い。
やっぱり向き不向きってあるんですね人にはね。
グレートヒェンだったりさっきの「魔王」だったりを聴くとその詩の雰囲気をパッとつかんで誰にでも忘れられないような形でサッと表現するのがやっぱりシューベルトはすごくうまいですよね。
でもね非常に恋愛下手であったりちょっと控えめなという彼のキャラクターはいかがです?目立つの大好き人より先に何かやりたくてしょうがなくなるし…でもそういうつるのさんの周りにもああいうシューベルトみたいな人いません?控えめで割と地味なんだけどある一つの才能がすばらしい。
います。
憧れちゃいますでも逆にそういう人。
一つの事にたけててでもすごく地味なんだけど。
シューベルトについて少し補足すると見た目は背が低く小太り。
そして服装には無頓着で眼鏡は寝る時も外さなかった。
あっそうなんですか!そういう人いますよね。
異性にはもてないけど同性からは熱い支持がある。
どっちがいいかなぁう〜ん。
まあ難しいですよね。
でもねシューベルトの友人がこう言ってるんです。
「彼が感激に浸り興奮に燃えて仕事をしている時には…」。
かっこいいんです。
だからギャップね。
gapの人ですよ。
多分友達もいいやつなんだね。
なるほど。
友達が仕事をしている顔を見て崇高だって言えるのは質のいい友達なんですよ。
そういう友達を持ちたいもんですね。
今日取り上げている曲…1作目!?「魔王」が?うん。
作品自体はもっと他にもあったんでしょうけど出版をされたというのがこの曲。
でも作られてから6年後。
やっぱり友達が一生懸命苦労して出版社を探したりいろいろしてくれたそうなんです。
でもすごい人望があったからそういうふうに周りの方がバックアップして「これはいける!」ってね。
クラシックにまつわる素朴な疑問にお答えしま〜す!この質問には楽譜の事ならおまかせ!音楽学者野本由紀夫さんにお答え頂きましょう。
5本の線からなる楽譜というのは15〜16世紀ぐらいにヨーロッパで一般的になったと考えられているんです。
もともと楽譜というのは歌から始まりました。
歌ですので音の上がり下がりだけ分かればよかったので初めは線そのものが全くなかったんですね。
それがやがて1本だけは線書きましょう。
そして更に2本書きましょうというふうになってどんどん増えていって4本ですとか6本というのも結構長い間使われたんですね。
多い時にはなんと8本も引かれる事さえあったんです。
でもさすがに少なすぎても多すぎても読みにくい。
5本ぐらいがちょうどいいという事で現在のような5本に落ち着いたと考えられています。
楽譜の線は初めから5本だったわけじゃないんですね。
番組ではクラシックにまつわるあなたの疑問・質問をお待ちしていま〜す!
(「魔王」)今日の名曲は…それはゲーテの詩から本当の怖さをあぶり出した劇的な音楽でした。
物静かで地味な青年だったシューベルト。
しかし彼は詩と徹底的に向き合う事で小さくともドラマチックな音楽を生み出す事ができたのです。
ここからは作曲家の美濃さんが「魔王」に潜む怖さの正体を解き明かします。
まずはピアノの前奏部分ですね。
非常に印象的な部分なんですが先ほどVTRでもご覧頂いたんですけれども馬のひづめの音をピアノの右手で表現しています。
それがこちらです。
さて今2小節弾いたんですけれども一体何個ぐらい音をたたいたと思います?123123123123だから3×4…12!すばらしい!3連音符を感じてますね。
タタタタタタタタタ…。
3連音符の連打だったんですが2小節で…こうピアノを打っているわけですね。
すごい速さですよね。
これがピアニスト泣かせというかもう腱鞘炎になるピアニストが続出するぐらいに難しいと言われている。
弾いてる方が魔王みたいな顔になるって事ですね。
確かにそうなんですよ。
痛い痛い!みたいな感じになってくるんですけども。
さあ今度は左手。
左手では嵐とか風のうねりみたいなものを表現しています。
このタタタタタタタッタッタ…。
何か恐ろしいものに後ろから追いかけられているようなヒューン…!みたいな。
いきなりイントロこれですもんね。
世界がやっぱり…つかみすごいですよね。
このイントロは。
これが冒頭だけではなくて曲の間に繰り返し出てくるので曲全体のイメージをも決定づける部分でもあるわけなんですね。
では今度は歌の部分に隠された怖さの秘密を見ていきましょう。
この曲は実は登場人物が4人。
ではこれから弾くメロディーは一体誰の歌の部分なのか想像しながらメロディーを聴いて頂きたいと思います。
随分曲調変わりました。
そうですね。
優しいメロディーですよね。
これがナレーションじゃないですか?では日本語の歌詞をつけてもう一度聴いて下さい。
ええ〜まさか!?これ魔王のセリフなんですか!そうなんです。
正解!このギャップがまた怖さを増しますね。
恐怖感を…。
実はね今の部分もそうなんですけれども怖いはずの魔王はずっと長調といって…。
明るい調で出てくるんです。
そして甘い声で子供を誘って「こっちへおいで」という。
魔王の表現を長調というね…。
…というのがこの辺りの部分なんですがところがね魔王は最後の最後に恐ろしい顔を本性を出して子供を恐怖のどん底に突き落とすという部分なんですけれどもその部分がこちらですね。
あああ…お父さ〜ん!すばらしい!これは怖いですね。
まさに今子供の心になりましたね。
急に本性現してきて。
実はねここ出だしは割と優しい長調で…。
きれいな響きなんですね。
でもこの辺から…。
・「じたばたしても」変わってくるんですね。
そうなんです。
・「さらってくぞ」…ってなるわけです。
おお〜!よく出来てますね。
よく出来てるな〜!このあとまさに先ほどの…。
・「お父さん」…というところが出てくるので。
子供の叫び声が。
もう調性とか…こういうの知って聴いてたらやっぱ中学校の時面白かっただろうなぁ。
今の部分がこの曲のクライマックスなので魔王が仮面をはいで怖さが全面にきて子供が恐怖に陥るという部分是非注目して聴いて頂きたいと思います。
勉強になりました。
今回「魔王」を歌うのは…歌曲の分野で高く評価されているボストリッジがスタジオに登場します。
よろしくお願いします。
「魔王」はボストリッジさんにとっても大切な曲だという事なんですが…。
僕子供が4人いるんですけどお子さんいらっしゃると思うんですけどこの曲ってやっぱり父親からしてみて子供に聴かせたらすごく怖いんじゃないかなというイメージもあるんですけどその辺は父親としてどうでしょう?それではボストリッジさんの歌でシューベルトの「魔王」をどうぞ。

(拍手)つるのさんいかがでした?先ほどのいろんなお話を踏まえてまた改めてこうやって「魔王」を聴くと怖さの中にまた深い怖さというか恐怖感があって。
ボストリッジさんが端正で優しい顔だちだから「さらっていくぞ」になったあとの変化がまた怖いですよね。
表情の変わりようもそうですけど表現がまた更に怖かったですね。
魔王が優しい顔で近づいてくるところもすばらしかったですよね。
これは18歳で自分の子供がいないから書けた曲っていうのもありますね。
本当にいたら…。
つるのさんも僕もこういう曲は書けないですよね怖くて。
確かに。
なんかやっぱ子供できちゃったらこういう曲って書きづらいだろうし。
ゲーテの大人の詩とシューベルトの18歳の感性がガチッとぶつかってスパークして生まれた名曲っていう気がしますね。
いやぁそうか。
「魔王」ってこういう曲だったんだ。
また生で聴けたのでね今日は一段と…。
ほんとに勉強になりましたね。
音楽の授業で習った怖〜い「魔王」。
ますます怖くなったんじゃありませんか?2014/05/19(月) 10:25〜10:55
NHKEテレ1大阪
ららら♪クラシック「怖いよ!お父さん〜シューベルトの“魔王”〜」[字][再]

嵐の夜、おびえる子どもを誘惑する魔王…。音楽の授業で聴いた怖い曲といえば、シューベルトの歌曲「魔王」。なぜそれほど怖いのか、「魔王」に隠された秘密に迫る。

詳細情報
番組内容
嵐の夜、おびえる子どもを誘惑する魔王。家にたどり着いてみると子どもは…。学校の音楽の授業で聴いた怖い曲といえば、シューベルトの歌曲「魔王」。なぜこの曲はこんなに怖いのか、歌曲王シューベルトの素顔を紹介しながら、「魔王」に隠された怖さの秘密に迫る。世界的テノール、ボストリッジ登場! 【曲目】魔王(シューベルト作曲) 【演奏】イアン・ボストリッジ(テノール)ほか 【ゲスト】つるの剛士
出演者
【ゲスト】つるの剛士,【出演】歌手…イアン・ボストリッジ,ピアニスト…ジュリアス・ドレイク,【司会】石田衣良,加羽沢美濃,【語り】服部伴蔵門

ジャンル :
音楽 – クラシック・オペラ
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
劇場/公演 – ダンス・バレエ

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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