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アジア女性指導者の苦境は「ガラスの崖」現象か? - 東猴 史紘

(1)ガラスの天井を突き破った2人

アジアの女性政治指導者が苦境に立たされている。韓国のパククネ大統領とタイのインラック元首相である。パククネ大統領は、先月起こったフェリー沈没事故への対応の不手際で支持率が急降下し6月に行われる地方統一選挙では与党惨敗が予想されている。また、インラック元首相は政府高官人事で職権乱用をしたとして憲法違反の判決が出され失職した。

女性の社会進出に関してよく使われる言葉に「ガラスの天井」がある。いくら才能があり努力をしても管理職・指導的地位などの上級職につけない天井があることを表している。パククネ、インラック両氏はそんなガラスの天井を突き破り、それぞれの国で歴史上初の女性トップに上り詰めたのだ。しかし、パククネ大統領は2013年2月に就任して僅か1年半で苦境に立たされ、インラック首相は2011年に就任して3年で職を失ってしまった。

(2)ガラスの崖現象

民間企業分野ではあるが女性はガラスの天井を突き破って指導的地位に就いても、次は「ガラスの崖」が待っているとされる。人事労務用語辞典によると、ガラスの崖とは業績が低迷し、危機的な状況にある企業では男性よりも女性がリーダー的な役職や幹部に起用される傾向にあり、そうした女性が占める立場は見た目以上に危うく、マネジメントに失敗するリスクに晒されている現象を言う。これは英国の大学教授であるミッシェル・ライアン氏とアレックス・ハスラム氏が唱えた論である。

具体的な例としては、ニューズウィーク日本版の5月20日号の『女性CEOと「ガラスの崖」』で取り上げられていた、米大手自動車会社ゼネラル・モーターズ(GM)で初の女性トップに就任したメアリー・バーラCEOが女性の崖っぷちに立たされている様子が分かりやすい。以下、同紙のガラスの崖についての説明を一部抜粋する。

『特に先が見えない時期には、女性がリーダーに昇進する傾向が強いことは証拠が示すとおり。そして運が下向くと、彼女がその地位に就くのを手助けした男性たちは逃げ出し、女性リーダが貧乏くじを引く。』

もちろん、ガラスの天井を突き破った女性指導者全てがガラスの崖現象に陥るわけではないだろう。日本において横浜市初の女性トップとなった林文子横浜市長は苦境に立つどころか、見事なリーダーシップを発揮されている。

とはいえ、パククネ大統領やインラック元首相の悲壮感漂う様子を見ているとガラスの崖論は信憑性が増してくるのである。米国でも次期大統領候補にヒラリー・クリントン氏があげられているが、米国初の女性大統領にもガラスの崖は待ち受けているのだろうか。

東猴 史紘
元国会議員秘書
http://ameblo.jp/toukou-fm

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